頭のトレーニングルーム テーマ1

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同じように見えて、実は異なるものを見抜く力を身につけよう!



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第1回「に」「で」について
第2回「です」について
第3回「〜は〜だ」の文型
第4回 いわゆる形式名詞の「こと」
第5回 いわゆる形式名詞の「の」
第6回 アスペクト「〜ている」
第7回「〜タ」について

講座第1回 「に」「で」について 6/15/2000

検定試験の筆記1の問題1では文法を中心にした選択問題が出されます。
その中に「〜の種類」という点で他と異なるものを一つ選ぶものがあります。

下の問題をやってみましょう。問題3は応用問題です。

問題1 「で」の種類   (第5回出題)

  (1)B君は真面目よく働く。
  (2)外国は・・・が流行っている。
  (3)車会社へ行く。
  (4)万年筆原稿を書く。
  (5)論文・・・に疑問を投げかける。

問題2 「に」の種類   (第10回出題)

  (1)お世話なる
  (2)9時なる
  (3)病気なる
  (4)元気なる
  (5)ごちそうなる

問題3 「じゃ」の種類  (第10回出題)

  (1)山田君じゃない?
  (2)休んじゃだめだよ。
  (3)日本人じゃありません
  (4)行きたくないわけじゃないんだけど・・・
  (5)こんなに高いんじゃ、売れないよ。


解説1&2

「で」「に」を見て、<格助詞>の用法だけを考えていると答えが出ないことになります。

*求められる知識

 (ア)名詞文の<コピュラ:繋辞>とその活用
 (イ)形容動詞の活用
 (ウ)格助詞の「で」「に」
 (エ)名詞と形容動詞の区別

(ア)名詞はコピュラと呼ばれる「ダ」といっしょになって述語を構成する。
   コピュラも活用する。「〜ダ」は活用の<終止形>である。
             <連用形>は「〜デ」など、
             <連体形>は「〜ナ」「〜ノ」の二つがある
   例)本 → (これは)本だ
   コピュラには文体によって「ダ/デス/デアル」がある

(イ)形容動詞は単独で述語になる。「〜ダ」は活用の<終止形>である
   例)有名 → (これは)有名だ
   終止形は文体によって「ダ/デス/デアル」がある
   形容動詞は活用する。<連用形>は「〜ニ」「〜デ」など、
             <連体形>は「〜ナ」
(ウ)格助詞は名詞などの体言を受けて述部の補語成分を構成する。
   例)で → 学校で(勉強する)
     に → 先生に(なる)
(エ)意味は形容詞のようでも、<品詞>としては<名詞>になるものに注意
   『〜な』の形にできるかを確かめれば分かる。
   例)病気、本当、嘘 → ×病気な、本当な、嘘な

*ポイント

 コピュラと形容動詞の活用は<連体形>を除けば非常に似ています
 それが、形容動詞と名詞を区別するべきかどうかという議論の根拠ともなっているのですが、
 試験での出題を見るかぎり、区別するための知識は必要ということになります。

*答え

問題1では(1)だけが<形容動詞>の活用語尾の「デ」、それ以外は<格助詞>の「デ」

問題2では(4)だけが<形容動詞>の活用語尾の「ニ」、それ以外は<格助詞>の「ニ」



      
解説3

口語体は元の形に戻すことで基本の形が見えてきます。

  (1)山田君ではない?
  (2)休んではだめだよ。
  (3)日本人ではありません
  (4)行きたくないわけではないんだけど・・・
  (5)こんなに高いのでは、売れないよ。

*求められる知識

 (オ)動詞の<テ形>には「〜で」の形もある
 (カ)形式名詞「はず」「わけ」「の」などは名詞と同じように述部を構成する

*ポイント

  選択肢のダミーとしてよく「〜の」を入れた文が出されます。
  形容詞があっても「〜のだ/です」であれば、それは名詞文と同じになります。
  例)高いです  →<形容詞文>
    高いのです →<名詞文:コピュラ文>

*答え

  (2)が動詞の<テ形>+「は」が『じゃ』になったもので、
  それ以外は<コピュラの活用形「デ」>+「は」が『じゃ』になたもの



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講座 第2回 「です」について 6/15/2000

検定試験の筆記1の問題1では文法を中心にした選択問題が出されます。
その中に「〜の用法」という点で他と異なるものを一つ選ぶものがあります。
下の問題をやってみましょう。

注)問題文は答えを出す上で支障がない程度に省略、又は語句の差し替えをしてあります。


問題 「です」の用法   (第8回出題)

  (1)お金がないんです
  (2)いつも来ないんですって。
  (3)とても美人ですね。
  (4)きれいですね。
  (5)きれいじゃないです



解説

 第1回で見た<コピュラ文><形容動詞文>の知識では解けない問題。復習
 今回は<種類>ではなく<用法>である。
 (1)〜(3)は名詞文でコピュラ、(4)(5)は形容動詞文で、答えが出ない?

*求められる知識

 (ア)名詞文の<コピュラ>の「ダ」と「デス」の関係
 (イ)形容動詞の終止形「ダ」と「デス」の関係
 (ウ)形容詞文の「デス」
 (エ)「ない」の品詞

(ア)コピュラの「ダ」は<断定判断>を表わす。
   そして「デス」はそのような用法に<丁寧さ>を添える。
   つまり、「デス」にはこの二つの用法がある。

(イ)形容動詞の終止形の「〜ダ」も<断定判断>を表わす。
   そして「デス」はそのような用法に<丁寧さ>を添える。
   つまり、「デス」にはこの二つの用法がある。

(ウ)形容詞は単独で述部になる。
   例)高い → (この本は)高い。
   形容詞文の「デス」は<丁寧さ>を表わすだけの用法
   注)この「です」は<丁寧>を表わす「助動詞」である。

(エ)動詞文の「〜ない」は<否定>の「助動詞」
   名詞文、形容詞文、形容動詞文の「〜ない」は「形容詞」

   注)『ある』の反対語の『ない』を「本形容詞」
     否定文に現われる『〜ない』を「補助形容詞」と呼ばれる
   注)「助動詞」と「形容詞」の「ない」は間に助詞が挿入できるかどうかという違いがある。

   例)行く → 行かない / ×行かはない、 ×行かもない <助動詞>
     本だ → 本でない / ◯本ではない、 ◯本でもない <形容詞>
     高い → 高くない / ◯高くはない、 ◯高くもない <形容詞>
     暇だ → 暇でない / ◯暇ではない、 ◯暇でもない <形容詞>

*ポイント

 実際の授業では使われることはない文法用語とその概念も知識としては必要となる。

*答え

 (5)の「デス」だけが<(補助)形容詞>のあとに来ているので、<丁寧さ>を表わす
  用法しかないが、それ以外の「デス」は<断定判断>と<丁寧さ>の用法をもつ。


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講座 第3回 「〜は〜だ」の文型 7/02/2000

検定試験の筆記1の問題1では文法を中心にした選択問題が出されます。
その中に「文型」という点で他と異なるものを一つ選ぶものがあります。
下の問題をやってみましょう。

注)問題文は答えを出す上で支障がない程度に省略、又は語句の差し替えをしてあります。



問題1 「〜は〜です」の文型(第7回出題) 問題2 「〜は〜です」の用法(第9回出題)

  (1)由美子さん研究室です      (1)トイレどこです
  (2)地球太陽系の惑星です      (2)私の祖国ブラジルです
  (3)相撲日本のスポーツです     (3)校長先生今、会議室です
  (4)私の会社家電のメーカーです   (4)ホテルのフロント4階です
  (5)花子さんかわいい女の子です   (5)社長の御自宅東京の郊外です

問題3 「〜は〜だ」構文の意味(第12回出題)

  (1)悪いの
  (2)責任者田中さん
  (3)来なかったのあの人
  (4)鈴木さん学生
  (5)試験範囲5課から



解説

*必要とされる知識

 A 名詞文の2つの種類、<措定文><指定文>
 B <うなぎ文>という特殊な文
 C <存在文>と<所在文>
 D 「〜」と「〜」のつながり

[AとD] 

 名詞文は「X」の文型をとるが、見かけは同じでも異なる2種類の構造をもつ。
 1)<措定文>「鈴木さんは社長だ」:XはYという属性をもっている、Xは何だ?の答え
 2)<指定文>「社長は鈴木さんだ」:Xの属性をもつのはYだ、Xはどれだ?の答え

 この<指定文>を『倒置』させると
 3「鈴木さん社長ができる
   逆に言えば、倒置させて「Y」と言えるものが<指定文>である。
   1)はこれができない。×「社長が鈴木さんだ」

 つまり、1)と3は語順は同じでも、「〜は」と「〜が」の点で異なり、意味も異なるが、
     2)と3)は語順は反対でも同じことを意味していると言える。

[C]

 4)<存在文>「あそこに鈴木さんがいる」:「〜にXがいる」情況をまるごと描写する文型
 5)<所在文>「鈴木さんはあそこにいる」:「Xは〜にいる」Xについてその所在を示す文型

[B]

 6)<うなぎ文>「鈴木さんはカレーだ」:場面から推測できる場合に述部を「〜だ」で代用する
          →「鈴木さんはカレーを注文した/食べる」

 5)の<所在文>も<うなぎ文>のように「〜だ」で代用することができる場合がある

 7)5)→「鈴木さんはあそこだ」

 しかし、8)のように場所を表わす名詞や語句がない場合はできない

 8)×「鈴木さんはドアだ」 注)これは<措定文>で「鈴木さん=ドア」になってしまう

[まとめ]

 このように「XはYだ」の名詞文の文型には大きく3つの種類がある。
 <措定文><指定文><うなぎ文>
 そして、<所在文>も<うなぎ文>にすることができる。



[答え]

 問題1 (1)だけが<うなぎ文=所在文>で、あとは<措定文>

 問題2 (2)だけが<措定文>で、あとは<うなぎ文=所在文>
       注)(2)は「私の祖国はブラジルにある」とは考えられないので<措定文>である

 問題3 (4)だけが<措定文>で、あとは<指定文>
     つまり、『倒置』させると「YがXだ」となる



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講座第4回いわゆる形式名詞の「こと」 7/11/2000

今回はちょっとやっかいな形式名詞の「こと」をとりあげます。そして「の」と関連がある問題もとりあげました。問題の形式はこれまでと同じです。
それでは、さっそく下の問題をやってみましょう。


問題1「連体修飾+こと」の種類(第6回出題)

(1)社長の病気が重いことは公然の秘密だ。
(2)僕がこれを君に伝えたこと、だれにも言っちゃだめだよ。
(3)おとうさんやおかあさんの言うことをよく聞くのですよ。
(4)彼女がわれわれに協力してくれることは確かなんだろうね。
(5)いけない。今夜は返りが遅くなることを女房に言うのを忘れていた。

問題2「ことには」の用法(第10回出題)

(1)突然公演が中止されたことにはみんな驚いた。
(2)あの人を招待しないことにはだれも反対しなかった。
(3)ここにいる全員が協力しないことには何も始まらないだろう。
(4)選考は、経験があるかどうかということにはかかわらず行われた。
(5)社長がいつまでもやめないことには、なんの批判もないようだ。

問題3「こと・・・述語」構文のタイプ(第12回出題)

(1)子供は外で遊ぶことが大好きだ。
(2)店長は品物が盗まれたことに気づいた。
(3)隊長は部下に町を攻撃することを命令した。
(4)学生たちはその論文を読むことをあきらめた。
(5)私はあの二人がつきあっていることを知らなかった。


解説

[必要とされる知識]

1 名詞が意味する対象の段階性

  <実質的意味> 〜 <形式的意味> 〜 <機能語的用法>

2 句や節を体言化する「こと」と「の」

[1について]

本来名詞はその<記号>が意味する<対象>を具体的に指示することができる。
例えば、『犬』という名詞は具体的な<動物>を指示している。
このような場合に名詞は<実質的な意味>をもつと言われる。
それに対して「こと」の振る舞いは特異である。

A「ことの起こりはこうだ」
B「ちょっとしたことで喧嘩になった」→×「ことで喧嘩になった」:「こと」が示す<対象がある>
C-1「これが偽物であることを話すなよ」→×「ことを話すなよ」  :「こと」が示す<対象がない>
 -2「知りたいなら教えないことはない」→×「ことはない」    :「こと」が示す<対象がない>
2003年9月30日 C-1の記述を修正:「こと」を示す<対象がある>→「こと」を示す<対象がない>

Aの「こと」は単独で主語になり、それが示す<対象>をイメージできる。そのイメージは『犬』のそれとは違ってかなり広い概念であるが、聞き手はそれを「なんらかの事象」としてイメージできる。その意味では<実質的な意味>をもつと言える。

Bの「こと」は×の文が示すとおり、単独では<対象>を示すことができない。必ずなんらかの修飾を受けることでその<対象>が具体的に定まる。このような場合に名詞は<形式的な意味>をもつと言われる。

Cの「こと」はBのよに修飾を受けるという特徴はもってはいるが、指示される<対象>をもたない。つまり<形式的な意味>さえもたない。この段階で「こと」という名詞は完全に形式化されて、文法的な<機能>のみもつようになっている

C-1は前の<句や節を名詞化する>機能を、C-2は「〜ないことはない」で可能性<可能性>を意味する機能をもつようになっている。

C-1,2を比べると、2のほうが、「こと」が他の語句といっしょになり、それが<成句>としてひとまとまりとして働くことで、より機能化が進んでいると見られる。

注:松下大三郎が「こと」を一般の名詞と区別して<形式名詞>と呼んで以来、
  この用語は定着しているが、それがどのようなものを指すかは学者によってまちまちである。
  上の例で言えば、概ねBとCがいわゆる<形式名詞>と呼ばれる範囲に相当する。

  過去の試験での出題を見る限り、「こと」の意味・用法・機能の区分では、
  BとCの区別、そしてC-1とC-2の区別が重要と思われる

[1のまとめ]

 「こと」の分類

      [特 徴]             [名詞らしさ]   [構文の特徴]

  A 実質的な意味をもつ名詞         強 い    単独で用いられる

  B 形式的な意味をもつ名詞          ・     被修飾名詞として

  C 形式化した名詞              ・     被修飾名詞として
    1 名詞化する機能をもつ         ・
    2 さまざまな機能語の成分となる    弱 い      (成句の一部)

[2について]

「大きいことはいいことだ」という文において、「おおきいことは」の『こと』と「いいことだ」の『こと』は意味・用法が異なる。
それはいいことだ」という文と比較してわかるように、「おおきいこと」は「それ」という名詞に相当する働きをしている。これが、<句、節を名詞化する>という「こと」の用法である。つまり意味がないのであるから、これは上のCの段階にあたる。<句・節を名詞化する>という文法的な<機能語>となっている。
それに対して、「いいことだ」の「こと」は『いい』という修飾を受けて、世の中の事象のなかでそれを示す<対象>をイメージさせる。つまり、<形式的な意味>をもつBのに相当する。

注:上の文の「こと」は意味が異なることについては『基礎日本語辞典』(角川書店)による

<名詞化>という機能は「こと」だけでなく、「の」にもある。

ある出来事を「の」によって名詞化するのか、「こと」によって名詞化するのかは、述部の動詞や形容詞の種類によって決まる(傾向が認められる)。ある動詞(形容詞)は「こと」しかとれず、またある動詞(形容詞)は「の」しかとれない。そして、その中間にどちらもとれるものが存在する。
この二つの違いは<勉強部屋>の#14の整理を参照のこと。


解答

問題1
 (3)のみがBの用法「こと」が示す<対象・内容>があるが、
  それ以外はC-1の<名詞化>の用法

問題2
 (3)のみがC-2で『〜ないことには』という機能語の成分となっているが、
  それ以外はC-1の<名詞化>の用法

問題3
 (3)のみが「こと」によってしか<名詞化>できない。
  それ以外は「の」でも「こと」でも<名詞化>できる。



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講座第5回いわゆる形式名詞の「の」 7/12/2000

今回は前回の「こと」に引き続き、形式名詞の「の」をとりあげます。そして「の」と関連がある問題もとりあげました。問題の形式はこれまでと同じです。
それでは、さっそく下の問題をやってみましょう。


問題1 「の」の用法 (第6回出題)

(1)君はこれだよ。
(2)もっときれいなはないのかい。
(3)このあいだ買ったを着ていこう。
(4)なるべくよさそうなを探してきなさい。
(5)すみません、その赤いを見せてください。

問題2 「の」の用法 (第7回出題)

(1)2段目の棚に置いてあるを取ってください。
(2)そういうときにはまず謝るが礼儀じゃないかね。
(3)雨が降るがわかっていたら、傘を持ってきたんだが。
(4)社員が全員退社したを見届けてkら、施錠してください。
(5)酒癖が悪いを承知で結婚したんだそうだが・・・

問題3 「の」の用法 (第9回出題)

(1)犯人が非常口から出てきたを捕まえた。
(2)作文の中では、あなたが書いたを優秀賞に選んだ。
(3)友達はみんな、私が結婚するをまだ知らなかった。
(4)赤ちゃんが立ち上がろうとするをビデオに記録した。
(5)テレビは、だれかが捨ててあったを拾ってきて使っている。



解説

[必要とされる知識]

1 <格助詞>に対して<準体助詞>と呼ばれる用法

   (ア)<下略>
   (イ)<準代名詞>
   (ウ)<名詞化>

   問題1、2はこの知識があれば簡単に解けるが、問題3は迷うかもしれない。
   次の知識も持っていれば確実に解答できる。

2 連体修飾節の構文の2つの種類と特異な構文

  <内の関係><外の関係> 

  <内の関係> 1)基本的な構文
         2)特殊な構文・・・<主題内在型>構文

[1について]

名称について
「の」には体言と体言を結んでその関係を示す<格助詞>の用法がある。
そこで「の」は助詞であるという視点から、『体言に相当する働き』をしている「の」を<準体助詞>と呼ぶことがある。これは橋本文法での命名である。
しかし、その一方で松下文法では、「の」の名詞としての職能の視点から「の」は形式名詞として扱われている。ここでは命名自体は重要ではなく、その分類の内容が重要であると考えるので、これまでの解説との整合性も考慮して名称は形式名詞とする。

     注:<格助詞>の「の」についてはテーマ2第2回講座の解説を参照のこと

形式名詞については第4回の「こと」で解説したように、「の」にもBとCの段階がある。

     ※詳しくは第4回「こと」の解説を参照のこと(A〜Cの分類はそれにしたがう)

  B<形式的意味>を示す用法:修飾を受けることによって具体的に示す対象が定まる
    (ア)<下略の「の」>:「の」以下の名詞が省略されていると考えられる
        「それは田中さんのです」
        「私のはこれです」
        「この時計はスイスのです」
    (イ)<準代名詞の「の」>:「の」が具体的なモノの代わりをしている
        「もっと大きいのがありますか」
        「きのう買ったのを出してください」
    
  C<機能語>として文法的な機能を担う用法
    (ウ)<句や節を名詞化する>
       「私がきのうこの本を買ったのを知っていますか」
       「私は車を運転するのが好きです」

     ※<勉強部屋>の#14「の」「こと」の整理も参照のこと

     注:「の」にはA<実質的な意味>を示す用法はない
     また「の」や「こと」の<名詞化>する用法は、
     それが名詞相当として文の補語(補足語)になることから<補足節>(補文節)とも呼ばれる

[2について]

  「の」について連体修飾節の視点から一般の名詞と比較してみると

  1)これはきのう私が買った本です。
  2)これはきのう私が買ったの(=本)です。
  3)きのう私が見た夢はこわかった。
  4)きのう私は試験に合格する夢を見た。
  5)きのう私がこの本を買ったのを知っていますか。
  
 1)では被修飾語の『本』を「私が『本』を買った」のように修飾節「私が買った」の中に
   戻すことができる。
   →これを<内の関係>という

 2)は「の」のBの用法であるが、「の」は具体的に何かを示しているわけだから
   1)と同様に修飾節に中に戻すことができる。→<内の関係>

 3)も被修飾語の『夢』を「私は『夢』を見た」と戻すことができる。→<内の関係>

 4)では3)のように『夢』を戻すことができない。
   つまり、修飾節「私が試験に合格する」ことが『夢』の内容になっているからである。
   →これを<外の関係>という

 5)は「の」のCの用法であるが、4)と同じ様に考えることができる。
   <名詞化>するということは<その内容をそっくりそのまま受けている>と考えられる。
   →<外の関係>

つまり、連体修飾節の構文からみると、
BとCの違いは<内の関係>と<外の関係>の違いと捉えることができる。
  B→<内の関係>
  C→<外の関係>

ところが、連体修飾節の構文には<主題内在型>と呼ばれるちょっと特異な形式をもつ文がある。

 6)母が作ってくれたお弁当を食べた。
 7)お弁当は、母が作ってくれたを食べた。
 8)母がお弁当を作ってくれたを感謝しながら食べた。

6)は通常の<内の関係>の連体修飾構文でる。
7)では「の」=『お弁当』であるから、<内の関係>として理解できる。
しかし、8)はどうだろうか。
食べたモノは『お弁当』であるが、その単語がもうすでに修飾節の中に存在するのである。
確かに「の」=『お弁当』だから<内の関係>であるが、
それが修飾節に現われているところから<主題内在型>と呼ばれる。
見方を変えれば、8)=母が作ってくれたお弁当を感謝しながら食べた、と
同じ内容を表わしているのである。その意味で<内の関係>の拡張と考えることができる。

<主題内在型>の例文
 ・部長は山田が部屋から出ていこうとしたを呼び止めた。
 ・警察は暴漢が遅い襲いかかってきたを組み伏せた。
 ・がこみ上げて来そうになるをなんとかご飯と一緒に飲み込んだ。
 ・太郎は、妻がウナギを注文しておいてくれを夕飯に食べた。


以上の例文は『日本語学』(明治書院1999年1月号)の「モノとコトから見た文法」坪本篤朗 からの引用である。


 
解答

問題1 (1)だけが<下略の「の」>でそれ以外は全て<準代名詞> 

◯(1)君のはこれだよ。
 (2)もっときれいなのはないのかい。
 (3)このあいだ買ったのを着ていこう。
 (4)なるべくよさそうなのを探してきなさい。
 (5)すみません、その赤いのを見せてください。

問題2 (1)だけが<準代名詞>でそれ以外は<名詞化>の用法 

◯(1)2段目の棚に置いてあるのを取ってください。
 (2)そういうときにはまず謝るのが礼儀じゃないかね。
 (3)雨が降るのがわかっていたら、傘を持ってきたんだが。
 (4)社員が全員退社したのを見届けてkら、施錠してください。
 (5)酒癖が悪いのを承知で結婚したんだそうだが・・・

問題3 (3)だけがCの<名詞化>の用法で<外の関係> この場合は「こと」も使える
     それ以外は全て<内の関係>

 (1)犯人が非常口から出てきたの(=犯人)を捕まえた。<主題内在型>
 (2)作文の中では、あなたが書いたの(=作文)を優秀賞に選んだ。
◯(3)友達はみんな、私が結婚するのをまだ知らなかった。
 (4)赤ちゃんが立ち上がろうとするの(=赤ちゃん)をビデオに記録した。<主題内在型>
 (5)テレビは、だれかが捨ててあったの(=テレビ)を拾ってきて使っている。



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講座第6回  アスペクト「〜ている」 8/05/2000

前置き

日本語教育においてアスペクトといえばまず「〜ている」が挙げられるほどこの文型の存在は大きいです。そして、金田一春彦先生の『国語動詞の一分類』という論文による<動詞の四分類>は日本語の文法を勉強する人が必ず目にすることになります。
「〜ている」がつくかつかないか、つけたときに意味がどうなるかによって動詞を分類したものです。

それでは、検定試験のレベルの日本語の知識はそれで十分なのでしょうか。
アルクの雑誌の検定試験分析号で以前吉川武時先生が書かれていましたが、大学入試があるから高校ではここまで勉強しなければならないという基準が決まるが、日本語教育にはそのようなものがいままでなかったのでどの程度まで勉強すればいいのかという具体的な基準が定まっていないということ。大学などで日々新しい研究がなされている中でどれを<定説>として出題するかという問題にぶち当たるわけです。

しかし、最近の検定試験の文章問題を見ると、あきらかに思考力(読解力)を見る問題が増える傾向にあります。つまり、基本的な知識(つまり<定説>のようなもの)はしっかりおさえておいて、あとは文章に書かれたことに従って類推したりして解答を出す、というスタイルです。

これは健全な方向だと思います。それは見方を変えれば、教師はただ基本的な知識を鵜呑みにして覚えるだけではだめだとも言えます。
ということで、前置きが長くなりましたが、実際の試験問題にチャレンジしてみましょう。


問題1は元々文章問題で、検定試験のレベルを明示したともいえる重要な問題です。前書きにもあったように、基本的知識プラスの部分を文章問題にして考えさせるスタイルになっています。できれば元の試験問題の全文を見ることをお勧めします。
問題2以下はいわゆる5択の問題です。他とことなるものを選んでください。基本的な知識をみる問題です。



問題1 (第10回出題/文章問題から抜粋、ゴシックは今回の抜粋のためにしたもの))
     注:前半の金田一氏の動詞の四分類に関する問題は省略しました

 瞬間動詞とは、テイル形がその動作・作用が終わってその結果が残存していることを表わす動詞である。「(電灯が)つく・消える」「出発する・到着する」「失う」「忘れる」などがあり、これらの動詞が表わす動作・作用は瞬間的に終わってしまうものであることから、瞬間動詞と名づけられた。
ただし、その後の研究で、この瞬間動詞という名前は改められることが多くなった。というのも、(A)変化が瞬間的でなくてもテイル形が結果の残存状態を表わす 場合があるからであり、逆に、(B)瞬間的な動作・作用であっても、結果の残存状態を表わさない 場合もあるからである。
 このような点から、動作が瞬間的かどうかということよりも、その動作が何らかの変化を引き起こすものであるかどうかという点がこれらの動詞の特徴であると考えられるようになった。
そのためこれらの動詞は(ア)動詞、あるいは(イ)動詞などと呼ばれることが多くなっている。
なお、テイル形の表わす意味は、「進行中」および「結果の残存状態」という二つだけではない。(ウ)のように、反復する動作を表わす場合もあり、また(エ)のように過去の一回の出来事を表わす用法もある。

 問1 (ア)(イ)に入る最も適当なものを一つ選べ。

 (1)運動 (2)完了 (3)継続 (4)結果 (5)持続 
 (6)終結 (7)状態 (8)進行 (9)動作 (10)変化

 問2 (A)の例として最も適当な動詞を一つ選べ。

 (1)植える (2)始まる (3)破れる (4)切る (5)太る

 問3 (B)の例として最も適当な動詞を一つ選べ。

 (1)たたく (2)忘れる (3)ころぶ (4)笑う (5)もがく

 問4 (ウ)に入る文として最も適当な動詞を一つ選べ。

 (1)学生たちは今、図書室で日本語の勉強をしています。
 (2)アフリカでは今も、多くの子供たちが死んでいる。
 (3)犯人は移動する際、地下鉄を使っている。
 (4)リーさん、机の下に何か落ちていますよ。
 (5)あなたの意見は間違っています。

 問5 (エ)に入る文として最も適当な動詞を一つ選べ。

 (1)学生たちは毎日、図書室で日本語の勉強をしています。
 (2)お宅のお子さんたち、お父さんによく似ていますね。
 (3)作者は自分の感情を正直にこの詞に書いています。
 (4)田中さんは隣の部屋で着物を着ています。
 (5)緊張で胸がどきどきしています。

問題2 「ている」の用法(第7回出題)

 (1)2階で物音がしている。だれかいるのかな。
 (2)変わった形をしているけど、何という車ですか。
 (3)嫌な予感がしているんだが、大丈夫だろうかね。
 (4)さっきから、何だか目がちかちかしているんだよ。
 (5)歯がぐらぐらしているので、歯医者に行こうと思うんだ。

問題3 「ている」の意味(第11回出題)

 (1)この世に神は存在している
 (2)アメリカとカナダは隣接している
 (3)水とアルコールの沸点は異なっている
 (4)その服、あなたにとてもよく似合っている
 (5)オコナー博士は現在、日本に滞在している



解説

*必要とされる知識

  1 金田一先生の「動詞の四分類」その広がり
  2 金田一先生の「動詞の四分類」以外の動詞
    →「ている」がついてもつかなくても意味に差がないもの

*1について

  金田一先生の「動詞の四分類

継続動詞 ある時間の幅をもって行われる動作を表わす動詞


通常(文脈によらなければ)「テイル」が<進行>を表わす


食べる、話す、歩く、など
瞬間動詞 その動作・現象が時間的な幅をもたず、瞬時にして始まり、そして終わる動詞


通常(文脈によらなければ)「テイル」が<完了・結果残存>を表わす


死ぬ、起きる、落ちる、など
状態動詞 状態を表わす動詞


「テイル」の形で使われれない


ある、いる、できる、可能動詞、など
第4種の動詞 状態・性質を帯びる動詞


いつも「テイル」の形で使われる


優れる、そびえる、ばかげる、ずばぬける、ありふれる、おもだつ、
(〜形を)する →おもしろい形をする、
(身体的特徴〜を)する → 大きな目をする、など
       

この四分類で注意する点は

 1)「瞬間動詞」という命名の不具合 → もっとふさわしい名称

 2)「継続動詞」と「瞬間動詞」のどちらとも言えない動詞がある

 3)「テイル」が<進行>や<完了・結果残存>を表わすというのは
    通常の場合(=文脈によらなければ)の基本的用法 → 文脈による意味(用法)の変化

1)動詞を分類する際に状態動詞と第4種の動詞は別として、継続動詞と瞬間動詞という分類では、
  その定義と「テイル」の意味とがうまくあわない動詞が出てくる。
  例えば、『結婚する』は『結婚している』で<完了・結果残存>を表わすが、
  その行為は「瞬間」に行われるものなのか? 『行く』はどうか? 
  さらに『太る』となると、その現象はかなりの時間をかけて進むものである。
  しかし、『太っている』は<完了・結果残存>を表わすから「瞬間動詞」ということに
  なってしまう。
  逆に、『たたく』はその動作自体は瞬間に終わってしまうのに、
  『たたいている』は<進行>の意味である。

  そこで、「テイル」が<完了・結果残存>の意味なる動詞をよく観察すると、
  それはすべて主体のなんらかの<変化>(状態や位置の変化)やその<結果>を示すもの
  であることが指摘され、その後、「瞬間動詞」という名称よりも「結果/変化動詞」という
  名称が好まれるようになった。

<主体変化><対象変化>の区別と自動詞・他動詞
「あく」は自動詞で<主体変化>を表わすので「結果/変化動詞」である。
 →ドアがあく:ドアがあいている

それに対応する「あける」は他動詞で<主体変化>ではなく<対象変化>を表わす。つまり「あける」は<主体運動>を表わすので「継続動詞」である。
 →山田さんがドアをあける:山田さんがドアをあけている

※詳しくは<勉強部屋>#1を参照

2)動詞によっては、「継続動詞」とも「瞬間動詞」とも区別がつけにくいものがある。
  つまり、「テイル」をつけると、どちらの意味にもなる場合がある。
  例えば、『着る』(他に身につけることに関する動詞)や『覚える』は次のような文では
  どちらの意味にもとれる。

  ・山田さんはいまセーターを着ている」(着ている最中/着ている状態)
  ・山田さんは歴代のアメリカ大統領の名前を覚えている
                     (暗記している最中/覚えている状態)

3)文脈(文中の修飾成分も含む)によって用法が変わる場合

 A 通常と反対の用法になる
   「瞬間動詞」が「テイル」で<進行>を表わす  ※副詞などで時間に幅をもたせる
   「継続動詞」が「テイル」で<結果残存>を表わす※結果が目に見える形で残っている
   
  ・シャッターはいま閉まっている。 →シャッターがゆっくり閉まっている。
  ・木の葉が道に落ちている。    →木の葉がひらりひらりと落ちている。
  ・今はさっきと温度が変わっている。→温度がどんどん変わっている。

  ・今薬を飲んでいる。 →(胃の検査で)かなり多量の薬を飲んでいますね。
  ・今使っているから貸せない。 →(彫刻を見て)これはいいノミを使っていますね。
  ・今公園の中を歩いている。 →(擦りへった靴を見て)かなり歩いていますね。

 B 基本的用法から派生的用法へ
   
   <進行>の基本的用法(=動作の連続による進行)から派生用法(=反復による継続)

   (1)個人(習慣): 私は毎日魚を食べている
   (2)個人(職業): 山田さんは高校で英語を教えている
   (3)複数主語:アフリカでは毎日大勢の人が飢えで死んでいる。
           山田さんのお宅には毎日大勢のお客さんが来ている。

   <完了・結果残存>の基本用法から派生用法<回想>(=過去の事実の意義を考える心理)
    ※過去や回数を示す成分によって

  ・今部屋で小説を書いている。 →彼は10年前にこの部屋で小説を書いている。
  ・今友達が来ている。 →彼は一週間前にもここに来ている。
  ・彼は結婚している。 →彼はこれまで2回結婚している。

*2について

金田一先生の動詞の四分類以外で「テイル」がついてもつかなくても意味に差が出ないものとして次の動詞が参考書に挙がられている。

  存在する、実存する、関与する、違う、異なる、適する、

  (以上の動詞は『日本語教育能力検定試験 傾向と対策Vol.1より)

  これ以外にも問題3にある「隣接する」「似合う」もこれに含まれると考えられる。


解答

問題1 問1 解説にあるように(4)結果(10)変化、が正解
    問2 解説にあるように(5)太る、が正解
    問3 解説にあるように(1)たたく、が正解
    問4 (2)
    問5 (3)だけが明らかに<回想>の用法の意味で解釈できる

問題2 

(2)だけが「第4種の動詞」で<状態>を表わしているが、それ以外は<進行>を表わしている。

問題3 

(5)だけが「瞬間動詞」で<結果残存>を表わしている、つまり「テイル」のあるなしで意味の対立があるが、それ以外は「テイル」のあるなしで意味の対立はない。



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講座第7回  「〜タ」について 8/06/2000

前置き

前回は「テイル」が動詞の種類や文脈によって用法がいろいろあることを見ましたが、日本語において「〜タ」の形が意味するものは、日本語教師になってみて「そんなに複雑怪奇なものだったの?」と感じる文法の一つでしょう。普段何気なく使っている「〜タ」の形を拾い出して見ると、

(1)きのう先生に会った
(2)もう先生にあいさつした
(3)そういえば、今日は会議だった

などがありますが、この「〜タ」がそれぞれどんな意味かなどと考えなくても問題なくコミュニケーションができています。
しかし、日本語教育では(1)はテンス、(2)はアスペクト、(3)はモダリティの「タ」というように区別することが必要になります。
ここで簡単に用語を解説しておくと、
テンス 基準時(例えば発話時)に対してその出来事が前(=過去)なのか後(=未来)なのか、同時(=現在)なのかという概念
アスペクト 出来事が時間軸上で幅のあるものと見て、それがこれから起こる(=未完了)のか、いま起きている(=進行中)のか、 起きてしまった(=完了)のかという概念
モダリティ 出来事それ自体(=これを命題、コト、などと呼ぶ)を話者がどのような心的態度で聞き手に伝えるかという概念

このようになります。そして、なんと「〜た」という形式はこの三つを表わすことができるようになっているのです。
さらに文が複文となり、従属節のなかの述部を考えるとさらに難しくなります。
日本人が英語を勉強したときに文法規則として覚えた「時制の一致」が日本語にもあるのか?

(4)あのめがねをかけた人にこれを渡してください。
(5)銀座に行った帰りにちょっと友達の家に寄ってみよう。

(4)や(5)の「〜タ」はいったい何だろう、などと普通の日本人は考えることはないのですが、日本語教師はそれが何かを知っておく必要があります。
ということで、前置きがまたまた長くなってしまいましたが、実際の問題にチャレンジしてみましょう。


問題2は単文(主節)のにおける「〜た」の用法についての文章問題からの抜粋です。テンスとアスペクトに関する、基本的な問題です。
問題1、3〜6は他と異なるものを選ぶ5択問題です。1はテンスの基本的な知識を復習するために。3〜6は従属節(連体修飾節)における「タ」の問題です。6はちょっと難しいかもしれません。
問題7も従属節における「タ」の問題ですが、文章問題からの抜粋です。連体修飾節の被修飾名詞についての知識が要求されます。



問題1 「現在形」の用法 (第6回出題)

(1)リー君は、今度の便で 到着する
(2)鶏は、夜が明けるころ泣き出す
(3)私の家では、みな毎朝6時に起きる
(4)僕は、酒を飲むと頭がくらくらする
(5)金があれば、どんな問題だって解決する

問題2 (第5回出題)

 助動詞「た」の用法について、次の対話文(1)(2)を読み、下の問いに答えよ。

 (1)A:4年前のソウルオリンピック、見に行ったかい。
    B:いや、行かなかった。
 (2)A:今上映中のあの話題の映画、もう見に行ったかい。
    B:いや、まだ行ってない。

 次の1〜5は、上の(1)(2)の対話文について説明した文である。
 1〜5のうちで誤った内容のものを一つ選べ。

 1 (1)の場合は、これから動作が行われる可能性はないが、
   (2)の場合は、これから行われる可能性がある。
 2 (1)の場合は、過去のある時点においてその動作が行われたか否かを問題にしている。
   (2)の場合には、発話時までにその動作がすでに行われたか否か、
   つまり動作の完了を問題にしている。
 3 (1)(2)の場合、行程の答えはどちらも「〜た」の形になる。
 4 「た」が(1)のように過去を表わすか、(2)のように完了を表わすかは、
   話題となっている事柄が話し手、聞き手とも知っている事柄かそうでないかによる。
 5 (1)(2)の答えの違いは、常体を敬語体に変えても違いが保たれる。

問題3 連体修飾節の「た」の意味 (第9回出題)

(1)あのめがねをかけ人はだれですか。
(2)酒を飲んで暴れるとは、困っ人だ。
(3)月の出た晩に、強盗事件が3件も起きた。
(4)満開に咲い桜の下に、多くの人々が集まった。
(5)曲がりくねっ道をのぼっていくと、展望台に着く。

問題4 連体修飾節の「た」の意味 (第10回出題)

(1)焼い
(2)破れ帽子
(3)ゆでじゃがいも
(4)裏表紙に書い名前
(5)二つにたたん手紙

問題5 「た」の用法 (第6回出題)

(1)「さっきここへ来若い女の子は、君の知り合いかい。」「いいえ。」
(2)「あの先生が最近書い本、よく売れているらしいね。」「うん。」
(3)「この道でいいんだろうか。」「ちょっと心配だね。今度会っ人に道を聞いてみよう。」
(4)「じゃんけんに負け人が全額払う、っていうのはどうだろう。」
   「そりゃ、あんまりだよ。」
(5)「4歳ぐらいになる赤いセーターを着坊やがおかあさんを探しています。
    お心当たりの方は受け付けまでどうぞ。」

問題6 「〜た〜た。」文の意味 (第11回出題)
 
(1)手を挙げ人が指名され
(2)薬を飲ん患者は間もなく回復し
(3)めがねをなくし人が車にはねられ
(4)亡くなった山本さんは東京で生まれた。
(5)その本を書い佐藤さんは二日前に渡米し

問題7 (第5回出題)

次の二つの文は表面的にはよく似た形をしているが、文の構造はかなり違う。
 A 先月ヤンさんたちと海へ行く計画を立てた。
 B 来月ヤンさんたちと海へ行く計画を立てた。

Aの「先月」は(ア)に係っていくが、Bの「来月」は(イ)に係っていく。このような違いが出てくるのは、どうしてだろうか。AとBの違いは「先月」と「来月」だけである。「先月」と「来月」の違いを考えてみると、「先月」はタ形(過去形)と共起するが、ル形(非過去形、現在形、現在・未来形)とは共起せず、「来月」はその逆だということがある。そのために、「先月」と「来月」の係り先に違いが出てくるのである。(中略)
ところで、Aの文で「行く」を「行った」に変えれば、「先月」が「行った」に係るようになるだろうか。Aの「行く」を「行った」に変えてみると、意味の通らない文になってしまう。これは「計画」という名詞に原因がある。「計画」の亡いようを表わすために「計画」の前に置かれる連体修飾節の中では、タ形が使えないのである。(ウ)なども、「計画」と同じ性質をもっている。

問1 (ア)(イ)に入れるのに最も適当なものをそれぞれ一つずつ選べ。

(1)「ヤンさんたちと」 (2)「海へ」 (3)「行く」
(4)「計画を」     (5)「立てた」

問2 (ウ)に入れるのに最も適当なものを一つ選べ。

(1)「未来」や「将来」
(2)「旅行」や「行為」
(3)「意志」や「予定」
(4)「原因」や「理由」
(5)「原因」や「結果」

問3 文章中に、「来月」はタ形と共起しない、とあるが、忘れていたことを思い出したなど、特殊な場合には共起することがある。その例文として挙げるのに最も適当なものを一つ選べ。

(1)もし来月も赤字だったら、困ったことになるぞ。
(2)来月総会があるのをすっかり忘れていた。
(3)来月は総会が開かれた。
(4)そうだ。来月、ロードショーで見逃したこの映画を名画館で見よう。
(5)そうか。来月は、28日までだった。



解説

問題1、2

必要とされる知識
1)現在形とは<現在>の事柄を表わす時に使われる形という意味であるが、
  現在形だからと言って、常に<現在>を表わすわけではない
   注:名称とそれが意味することの区別は重要である。
     命令形が常に命令を意味するわけではない、
     というのも同じことである。
     →「早く歩け」(命令) 「早く咲け」(願望)


2)タ形はテンスとして<過去>を、アスペクトとして<完了>を表わす

  
1)テンスとしての「ル形」と「タ形」の整理

タ形
ル形
動作動詞
過去
未来      (※超時)
状態性述語 状態性の動詞
      形容詞
      名詞
過去
現在 (未来) (※超時)
過去を表わす
非過去を表わす

 ポイント1:タ形は過去を表わすが、ル形は『述語の種類』によって表わすテンスが異なる
        注)このテンスに限らず、<動作>なのか<状態>なのかは重要な区別になる

 ポイント2:ル形はこのように『未来』『現在』『超時』の三つを表わすので、まとめて
       『非過去』と呼ばれることがある。

 ポイント3:『超時』とは過去〜現在〜未来にわたる普遍的真理や習慣や属性を
       意味する文のテンスのことである。

2)テンスとアスペクトの「ル形」と「タ形」の整理 (※発話時を基準として/動作動詞)
タ形 ル形
テンス 過去 非過去(=未来)
アスペクト 完了 未完了

 ポイント1:解釈の問題『副詞成分によって』

     テンスは出来事を『点』ととらえてそれがどの時点で成立した/するかを示す概念だから
     <時を指定する副詞>が用いられると、ル形、タ形は<テンス>の解釈を受ける。

     アスペクトは基準時(発話時など)において出来事がどの段階にあるかを示す概念だから
     <完了を示す副詞>が用いられると、ル形、タ形は<アスペクト>の解釈を受ける。

         → 30分前に食事をした。 <テンス>  (過去)
           もう食事をした。    <アスペクト>(完了)
         → 来月部長に昇進する。  <テンス>  (非過去=未来)
           もうすぐ部長に昇進する。<アスペクト>(未完了) 

注)「解釈を受ける」というのは、文にはテンスとアスペクトのどちらか一方しか 出現しないわけではないということである。どの文もテンスとアスペクトを表示する機能をもっているが、それが文意によってどちらの解釈が優先されるかという問題である。したがって、どちらの解釈もできる場合もあるし、そのため二つが「重なっている」という解釈もされることがある。
     

 ポイント2:解釈の問題『疑問文「〜た?』の答え方によって』

    「〜タ」の解釈がどちらになるかが、はっきり出るのは、疑問文「〜タ?」に対して
    否定文で答える場合である。問題2はこの点を問う問題になっている。

アスペクトの解釈 完了


食べ
未完了


いいえ、(まだ)食べテイナイ
テンスの解釈 過去


食べ
過去


いいえ、食べナカッタ

                

問題3、4

必要とされる知識
前回、単文では文末の「テイル」はアスペクトを表わし、動詞の種類によって<進行>の意味になったり、<結果残存>の意味になることを見たが、連体修飾節では<結果残存>の「テイル」は「タ」になることが可能である。

 <継続動詞>   あの人はいま走っている。 <進行>  → × 走った人  
 
 <変化/結果動詞>あの人は眼鏡をかけている。<結果残存>→ ◯ 眼鏡をかけ

 注:連体修飾節で「テイル」が「タ」に変わるというのは義務的ではない。
   「めがねをかけテイル人」ということもできる。
   しかし、前回勉強した金田一氏の動詞の四分類で「第4種の動詞」と呼ばれるものは
   連体修飾節では「タ」の形で使われるのが普通である。
   その理由はアスペクト(=動作の結果が残存している)の解釈よりも
   <性状規定>つまり、形容詞のように使われるからと考えられる。
   その意味では「第4種の動詞」以外でも、形容詞のように使われる場合には
   「テイル」より「タ」のほうが自然になる。
   ・あの道はくねくね曲がっている → くねくね曲がった道(をドライブする)
   ・今日はとてもよく晴れている  → とてもよく晴れた日(に散歩する)

問題5、6

必要とされる知識
連体修飾節のテンスは英語のような<時制の一致>ではなく、通常<相対テンス>になる

1)<相対テンス>とは何か?

  AとBの二つの文を連体修飾を使って一つの文にするとCの文ができる。
   A その人は大使館へ行った。
   B 私はその人に会った。
   C 私は大使館に行った人に会った。

  これだけからは通常の<テンス>の考え方で何も問題がないように思われるが、
  Dやの文の意味はCと何が違うだろうか?

   D 私は大使館に行く人に会った

  この文の意味を通常の<テンス>の考え方からすると、発話時(いま)から見て、
  「行く」はこれから「行く」で「会った」は過去に「会った」と考えてもいいかもしれない。

  しかし、そうではない解釈も可能である。
  Dでは『この人は大使館に行った』、という過去の解釈も可能である。
  つまり、「私は(あした)大使館に行く人に(きのう)会った」ともとれるし
      「私は(きのう)大使館に行く人に会った」ともとれるのである。

  それでは、なぜ過去のことなのに「行った」ではなくて「行く」を使うのか?

  それを解決するのが<相対テンス>という考え方である。

  つまり、単文の時には発話時を基準にテンスを考えれば良かったが、連体修飾節では
  主節のテンスを基準に『それよりも前=既に起こったこと=完了』の場合には「タ形」を使い、
  『それと同時、またはそれよりも後=これから起こる=未完了』の場合には「ル形」を使う、
  という<相対的>なテンスになっているのである。
  だから、Dの文の解釈がどちらであっても、『私がその人に会う』ことと
  『その人が大使館に行く』ことの順番は変わりがない。

  言い方を変えれば、連体修飾節のル形やタ形は発話時を基準にしたテンスとは関係ない
  未完了か完了かを示すアスペクトであると言える。
  それが主節のテンスとの関係で<相対テンス>と呼ばれるのである。

  そうすると、Eの文が(発話時を基準にして)過去でもないのにタ形が使われていいることも
  納得できる。
   E あした一番にここに来た人にこれをあげましょう

       「来る」とうことがあって、その後に「あげる」がおこる

  さらに、次のような「〜時」の文の意味の違いも理解できる。

   F 食べる時に 「いただきます」と言う (ル形 =主節の動詞より後/未完了)
   G 食べる時に 箸を使う        (ル形 =主節の動詞と同時)
   H 食べた時に 「ごちそうさま」と言う (タ形 =主節の動詞より前/完了)

   I 日本に来る時に、空港まで友達が見送りに来た (:自分の国の空港)
   J 日本に来た時に、空港まで友達が迎えに来た  (:日本の空港)

2)連体修飾節のル形とタ形は<相対テンス>の解釈を受けるのが普通だが、何事にも例外がある。

  (ア)問題3、4の解説にあるように、「〜テイル」ガ「〜タ」となって<性状規定>を
     表わすものは相対テンスの概念からははずれている
     (つまり、アスペクトから開放されている)
     つまり、形容詞と同じように働いていると考えられる。
     その段階性を示すと次のようになる。

   ・あのおもしろい人にこれをあげる。      (=形容詞)
   ・あのちょっと変わった人にこれをあげる。   (=性状規定 「テイル」→「タ」)
   ・あの赤いセーターを着た人にこれをあげる。  (=性状規定 「テイル」→「タ」)
   ・きのう面白い作文を書いた人にこれをあげる。 (=相対テンス/アスペクト<完了>)
                            ※通常のテンスでも解釈可能
   ・これから面白い作文を書いた人にこれをあげる。(=相対テンス/アスペクト<完了>)
                            ※通常のテンスでは解釈不能

  (イ)文意(文脈)によって<相対テンス>の解釈ができない場合

    (1)動詞の語彙的な条件によって

        .亡くなった山本さんは東京で生まれた

         「亡くなる」と「生まれる」という単語の意味から<相対テンス>の解釈
         つまり、「生まれる」前に「亡くなる」が完了している解釈は成り立たない。

    (2)時を指定する副詞成分によって

        ・手を挙げた人が指名された

          この文の通常の解釈は<相対テンス>によって「手を挙げる」ことが
          <完了>して「指名される」が続くというものである。

        ・さっき手を挙げた人が先月の総会で委員長に指名されたんです。

          このように時の指定を受けると<相対テンス>の解釈は成り立たない。

*これまでのまとめ

 文脈による例外はあるものの、連体修飾節における<相対テンス>という概念は重要なものである。それは英語などの<時制の一致>とはことなる文法概念だからである。しかも、次に見るように連体修飾節のあるタイプのものと深い関係があることも重要となる

 以上、連体修飾では動作動詞に限って見たが、状態性の述語(形容詞など)はまた別の振る舞いをすることも重要であるが、ここでは触れない。

問題7 問2

必要とされる知識
連体修飾節において「ル形」と「タ形」の選択がどちらか一方に決まる場合がある

  上の解説で連体修飾節ではル形とタ形は<相対テンス>になることを見たが、
  <相対>だからといっていつもル形とタ形のどちらもが使えるというわけではない。

1)文の意味からどちらか一方に決まる場合

  ・学生が書いた(×書く)作文を読んだ。
  ・買って来た(×来る)ものを冷蔵庫に入れておいてください。
  ・一度契約した(×する)ものは返品できない。

  ・借りる(×借りた)人は、前もって登録してください。
  ・夏休みに行く(×行った)避暑地をまだ決めていない。

  このように文の意味から一方がもう一方に必ず先行する場合にはル形かタ形かどちらかに決まる。

2)被修飾名詞の種類によってどちらか一方に決まる場合

  連体修飾節の<相対テンス>という考え方は、言葉を変えれば、主節が起こることよりも
  『前』なのか『同時』なのか『後』なのかということである。
  このことから連体修飾節の被修飾名詞(「底」と呼ばれる」)によっては
  (ア)必ずル形でなければならないもの
  (イ)必ずタ形でなければならないもの
  の二つがある。

  具体的に見ていく前に、連体修飾節には二種類あることを復習しておきたい。
  (1)「ウチ」の関係 と(2)「ソト」の関係がある
  (1)は底の名詞を修飾節に戻すことができる
  (2)はそれができない。さらに(2)は二つのタイプがある。

  (ア)(イ)になるのは(2)の場合である

  (2)-1 <内容節=同格節
  (2)-2<相対性名詞の補充節

   (2)-1 どんな内容かを説明する節

      A いっしょに食事する(という)約束をした:「という」があってもなくてもいい
      B いっしょにしようという電話が来た   :「という」が必要
      C いっしょに食事している写真を見る   :「という」がつなかい

   (2)-2 被修飾名詞自体が相対性があり、修飾されることで具体的に意味が定まる

      D あの人が歩いているを地下鉄が走っている :位置関係
      E 日本に着いた翌日に横浜へ行った      :時間関係
      F 新宿へ行った帰りにスーパーに寄る。    :時間関係(行動の順番)
        新宿へ行く途中でスーパーに寄る。
      G 皆で食べた残りをとっておく。       :因果関係
        火事が発生した原因を調べる。       :因果関係

  まず、<相対性名詞>の例から見ていく。
  この名詞の特徴は、例えばEの「翌日」のように『何かが起こった後の次の日』という
  意味を持っていることである。つまり、必ずなんらかの<完了>した事態を受けなければ
  ならないとう制約がある。「残り」も同様に、『何かした後』でなければ成立しない
  ものである。結局、「翌日」や「残り」は連体修飾では必ずタ形になるわけである。
  このような制約は上の<時間関係><因果関係>の場合に起こる。

  また、Fの「途中」という名詞は何かしていることと同時になされる(:前でも後でもない)
  ことを前提とする。だから、<同時>を表わすために連体修飾節はル形になるわけである。

  次に、Cの「という」がつなかい場合の例を見てみる。
  上の例文では「写真」を挙げたが他には「におい」「音」「感触」「味」「姿」「絵」などが
  ある。これらの名詞は何かが起こったときに<同時>に感じられるもの、捉えられるもの
  であるから、ル形をとることが普通である。

  最後に、Aのグループの例を見てみる。
  ここにはいろいろな名詞が分類されるが、中にはその意味特徴からどちらか一方が必須のものが
  ある。
  例文の「約束」は『これからすることについて述べる』ものであるから当然ル形を要求する
  わけである。
  一方「経験」は『もうしたことについて述べる』ものであるから当然タ形を要求するわけ
  である。

*これまでのまとめ

このように『未完了/これからする』と『同時』の意味を要求する名詞はル形によって修飾され、『完了/もうした』の意味を要求する名詞はタ形によって修飾されるのである。

(ア)必ずル形がくる場合

   〜スル 前、計画、予定、約束、など    ←<未完了>

       途中、におい、音、声、姿、など  ←<同時>
       
(イ)必ずタ形が来る場合

   〜シタ 後、翌日、帰り、残り、余り
       経験、疑い、覚え、など

問題7 問3

必要とされる知識
タ形にはモダリティを表わす用法もある

タ形がモダリティを表わすとされる用法には以下のものがある。

  1)ぞんざいな、差し迫った命令
     ・じゃまだから、あっちへ行っ行っ

  2)想起:以前に見聞きしたことを思い出す(そして確認する)
        注)名詞文になっていることが必要である。(「〜のだった」も含む)
     ・しまった、あしたは試験だった
     ・しまった、あしたは試験があるんだった

  3)期待していたことが実現したことを表わす。
     ・「バスなかなか来ないね」
      「あ、来、来
     ・「僕のめがねどこにいったかな。あ、あっ、あっ

  4)反実仮想
     ・普通の人間なら即死していよ。

  5)主観的な感情の表出
     ・それは、よかったですね。
     ・ああ疲れた
     ・困ったぞ。

  注)以上の分類と用例は『日本語教育能力検定試験 傾向と対策Vol.1』より



解答

問題1 (1)だけル形が<未来>を表わし、それ以外は<超時>を表わす。

問題2 4が間違い(既知や未知は関係ない)
    それ以外の内容は<テンス>と<アスペクト>のタ形の説明として重要である。

問題3 (2)以外はすべて「テイル」が「タ」になったものと考えられる。
    つまり、アスペクトから<性状規定>の用法になったもの。
    (2)は「困っている人」の意味にはなっていない。
    今回の解説では問題7でモダリティとして挙げられている(5)の例で、
    話し手(たち)の主観的な感情を表出したもので、
    その人が困っているのではなくて、話し手が困っているという意味である。

問題4 (2)だけが「テイル」に言い換えができる。つまり、<性状規定>になっている。
    それ以外は通常の「た」(完了/過去)の用法である。

問題5 (5)だけが「テイル」に言い換えができる。つまり、<性状規定>になっている。
    それ以外は(広い意味で)<相対テンス>になっている。
     注)(1)(2)は通常のテンスでの解釈も可能だが、
       (3)(4)も含めて広い意味で相対テンスとしてくくることができるが、
       (5)だけがあきらかに異なる。

問題6 (4)は<相対テンス>の解釈が不可能であるが、
    それ以外は<相対テンス>の解釈が可能である。
     注)(3)(5)はこの文だけでは<相対テンス>ではない解釈も可能だが、
       <相対テンス>の解釈が不可能である(4)だけが明らかに異なることになる。

問題7 問1 (ア)は(5)の「立てた」
       (イ)は(3)の「行く」

    問2 解説にあるように(3)が必ずル形をとる名詞である。

    問3 設問に意味の説明があるので答えを見つけるのは難しくなかったでしょう。
       解説の例では2)にあたる<想起>の意味になっている文を選ぶので、
       解答は(5)の「そうか、来月は、28日までだった」になる。
       文の意味にひっかかって(2)を選ばないように。



参考文献
 *『日本語教育能力検定試験 傾向と対策Vol.1』(バベルプレス)
 『日本語例文・問題シリーズ15テンス・アスペクト・ムード』(荒竹出版)
 『日本語のシンタクスと意味II』寺村秀夫(くろしお出版)

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