#23 自他動詞の対応分類表(保存版)


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01/19/2007 この分類表の改訂版がアップされました。文法考察ファイルの#47をご覧下さい

修正履歴
12/17/2000 その他のグループより「越す/越える」を削除(現代語ではどちらも自動詞扱いなので)


前置き

この分類は自他動詞を形態上の対立によって分類することによって、『送り仮名の付け方』の<通則1>に従わないグループを見るために作成したものである。
分類にあたっては通常の分類を参考にしたが、サブグループ(’表示のあるもの)の帰属と最後のその他については私個人の見解による。
日本語教育において、自他動詞の対立は個別に覚えるように指導されることが多いが、表記(送り仮名)も視野に入れた分類表の作成は意義があるものと考える。



『送り仮名の付け方』について

[通則1]

<本則>活用語尾を送る

つまり、五段動詞「うごく」なら「動」となる。

[通則2]

<本則>活用語尾以外の部分に他の語を含む語は、含まれている語の仮名の付け方によって送る

つまり、五段動詞「うごかす」は<本則1>に従えば、「動す」になるところだが、「うごかす」には自動詞の「うごく」が含まれていると考えるので「動」→「動かす」と「〜かす」が送り仮名となる。

このように自他動詞の対立によって送り仮名が本則1に従わないグループが何かを見ることがこの分類表の目的である。



表中の記号について

印の単語が<通則1>に従わないもの
←の単語が<通則2>の『元になっている単語」と考えられるもの
★自他動詞の対応が不規則なもの/他の品詞の単語の影響を受けているもの
☆自他動詞が意味上(一部)対立しないもの
表中の< >の語は古典文法の活用による終止形である



分類表
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ1
・す ・る
渡す 渡る
下す 下る
移す 移る
写す 写る
帰す 帰る
返す 返る
直す 直る
残す 残る
通す 通る
回す 回る
※起こす ※起こる ←★起きる
グループ1’(注1)
・su ・ru −i・ru
足す <足る> 足りる
注1)「足りる」は古典文法においては<四段活用>だったので広くこのグループに含める
 
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ2
・す ・れる
流す 流れる
離す 離れる
隠す 隠れる
崩す 崩れる
汚す(よごす) 汚れる
汚す(けがす) 汚れる
倒す 倒れる
壊す 壊れる
現す (注2) 現れる (注2)
表す 表れる
注2)通則1の<許容>によって次のように送ることもできる
   現わす、表わす/現れる、表われる
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ3(注3)
−u −e・る
焼く 焼ける
抜く 抜ける
砕く 砕ける
欠く 欠ける
解く 解ける
ほどく(解く) ほどける(解ける)
脱ぐ 脱げる
もぐ もげる
切る 切れる
折る 折れる
織る 織れる
売る 売れる
割る 割れる
取る 取れる
注3)このグループは他動詞の<可能態>が自動詞に相当するという形態上の特徴がある
   そのため自動詞は<自発態>と呼ばれることがある
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ4
−u −e・る
揃う 揃える
開く(あく) 開ける
付く 付ける
続く 続ける
傾く 傾ける
届く 届ける
落ち着く 落ち着ける
※近づく ※近づける ←(★近い)
立つ 立てる
建つ 建てる
育つ 育てる
並ぶ 並べる
(★浮く)→ ※浮かぶ ※浮かべる
進む 進める
止む 止める
入る(いる)(注4) 入れる
注4)「入る」(はいる)は『這入る』の変化したもの
 
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ5(注5)
−a・す −u
※動かす ←動く
※沸かす ←沸く
※乾かす ←乾く
※減らす ←減る
※照らす ←照る
グループ5’(注6)
−a・su −u −i・ru
※生かす ←<生く> 生きる
※延ばす、伸ばす ←<延ぶ、伸ぶ> 延びる、伸びる
注5)このグループの他動詞は自動詞の<使役態>とつながりがある
   「驚く」の<使役態>は「驚かせる」だが、「驚かす」の形も存在する
   「脱ぐ」→「脱がせる/脱がす」、「滑る」→「滑らせる/滑らす」などもそうである
   一般に「〜せる」→「〜す」の変化は多く、それらはこのグループには入れていない。
   このグループには通常の<使役態>が使われず「〜す」が他動詞として定着したもののみ扱う
注6)古典文法において自動詞は<上二段活用>であったが、現代では<上一段動詞>になったもの
   これらも広くこのグループに含める
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ6
−a・す −e・る
※溶かす ←溶ける
※負かす ←負ける
※逃がす ←逃げる
※覚ます ←覚める
※冷ます ←冷める
※増やす ←増える
※燃やす ←燃える
※冷やす ←冷える
※慣らす ←慣れる
※枯らす ←枯れる
※揺らす ←揺れる
※濡らす ←濡れる
※遅らす(注7) ←遅れる
※暮らす☆ ←暮れる☆
※晴らす☆ ←晴れる☆
出す(だす)(注8) 出る(でる)
注7)「遅れる」は他動詞「遅らす」と平行して「遅らせる」という「〜せる」「〜す」の両形をもつ
注8)「出る」は語幹と活用語尾が重なるため、
   対応する自動詞がこのグループにおいて唯一※にならない
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ7
−a・る −e・る
※見つかる ←見つける (←★「見る」)
※受かる ←受ける
※掛かる ←掛ける
※助かる ←助ける
※儲かる ←儲ける
※上がる ←上げる
※挙がる ←挙げる
※下がる ←下げる
※曲がる ←曲げる
※混ざる ←混ぜる
※当たる ←当てる
※重なる ←重ねる
※連なる ←連ねる
※決まる ←決める
※止まる ←止める
※集まる ←集める
※休まる ←休める
※閉まる ←閉める
※温まる ←温める
※始まる ←始める
※固まる ←固める
※染まる ←染める
※定まる ←定める
※詰まる ←詰める
※薄まる ←薄める
※教わる ←教える
※変わる ←変える
※終わる ←終える
※伝わる ←伝える
※備わる ←備える
※加わる ←加える
※植わる ←植える
※負かる☆ ←負ける☆
※分かる☆ ←分ける☆ ※分かれる★
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ8(注9)
−o・す (−u) −i・る
※起こす ←<起く> 起きる
※過ごす ←<過ぐ> 過ぎる
※落とす ←<落つ> 落ちる
※降ろす、下ろす ←<降る> 降りる、下りる
※滅ぼす ←<滅ぶ>(注10) 滅びる
グループ8’(注11 )
−o・す −u
※及ぼす ←及ぶ
注9)古典文法において自動詞は<上二段活用>であったが、現代では<上一段動詞>になったもの
   グループ5が「-asu」で他動詞化したのに対して、このグループは「-osu」で他動詞化された
注10)「滅ぶ」は現代でも「滅びる」と平行して使われる。
注11)「及ぶ」は古典文法において<四段活用>で、活用という点では上の例とは異なるが、
   自他動詞の形態上の対応が同じなので広くこのグループに含める
 
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
グループ9
−u −a・る
塞ぐ→ ※塞がる
繋ぐ→ ※繋がる
グループ9’
−u −a・る −a・える
つかむ☆ つかまる☆ つかまえる☆
(×捕む)→ ※捕まる ※捕まえる
掴む→ ※掴まる (×掴まえる)
五段動詞 一段動詞
他動詞 自動詞 他動詞 自動詞
その他個別に対応
−u −oる
積む☆→ ※積もる☆(注12 )
・る ・える
見る
<見る>上一段
見える
<見ゆ>下二段
煮る
<煮る>上一段
煮える
<煮る>下二段
・る ・せる
寄る
<寄る>四段
寄せる
<寄す>下二段(注13 )
※語幹の音韻も変化
消す(けす)
<消つ(けつ)>四段
消える(きえる)
<消ゆ>下二段

注12)「積む」と「積もる」は現代語においては意味上対応しないが、古語においては
   「積む」「積もる」ともに自他の用法があり意味上もある程度対応があったようである
注13)古語の「寄す」には四段活用で自動詞の用法もあったが、「寄る」が存在したため
   「寄す」が他動詞として生き残り、現代語の「寄せる」になったと思われる



謝辞

今回この自他動詞の対応表を公開するにあたり、7年ほど前に作成したものに追加、修正しました。
その際にshujiさんの『日本語教育、日本語、日本を考える』の掲示板における
「日本語を観る(7)自動詞と他動詞を自分で調べて観る」を参考にさせていただきました。
shujiさんの自他動詞の区別は現場における指導を念頭におかれた意欲的な試みです。
あわせてご覧いただければ、自他動詞の対応がかなり整理されると思います。



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