<疑問点>
他動詞は「〜てある」の文型で結果状態を表わすのが普通だが、「着る」はなぜ「着ている」の形になり、「着てある」が不自然なのか?
<結論>
構文的には他動詞の特徴をもっているが、意味的には<主体変化>の特徴を持っているので、多くの<主体変化>表わす自動詞のように「てある」ではなく「ている」を用いることになる。
しかし、ある事態の準備のために行った行為の結果が持続するという意味を表わしたい時に、「てある」が使用されることがある。
<動詞の分類まとめ>
以下、自動詞と他動詞につて、「てある」が使用可能かどうかという点から下位分類してみる。
それぞれのクラスが連続していることが見てとれる。
1)<主体運動>を表わす自動詞
*「ている」が進行中を表わす
*「てある」は使用できない。
しかし、まれに使用できるものがある(注)
・太郎が走る --> 太郎が走っている
・太郎が泳ぐ --> 太郎が泳いでいる
・太郎が寝る --> 太郎が寝ている/(試験のためにたっぷり)寝てある
注)「太郎が睡眠を取る」という解釈で6)の分類につながる用法か?
「太郎が床に入る」という解釈で2)の分類につながる用法か?
2)<主体変化>を表わす自動詞
*「ている」が結果状態のみを表わす
*「てある」は使用できない
・窓があく --> 窓があいている。
・ラジオが壊れる --> ラジオが壊れている
・太郎が座る --> 太郎が座っている
・太郎が(電車に)乗る -->太郎が(電車に)乗っている
3)<主体動作>と<主体変化>の両方を表わすが、<主体変化>に視点がある他動詞
:情報、物事の獲得(広義には情報、物事の位置替え)
*「ている」が結果状態のみを表わす
*「てある」は使用できない
・そのことを知る --> そのことを知っている
・それを持つ --> それを持っている
・知識を持つ --> 知識を持っている
・能力〜
・権利〜
?それについて情報を得る --> 〜情報を得ている
3)<主体動作>と<主体変化>の両方を表わし、両方に視点がある他動詞
*「ている」が結果状態と進行中の両義をもつ
*「てある」は通常使用しない
・名前を覚える。 --> (全員の)名前を覚えている
・服を着る。 --> 服を着ている
・ずぼんをはく。 --> ずぼんをはいている
・ぼうしをかぶる。--> ぼうしをかぶっている
4)<主体動作>と<主体変化>の両方を表わすが、<<客体変化>>の特徴ももつ他動詞
*「ている」が結果状態と進行中の両義をもつ
*「てある」が使用できる
・ベルトをしめる --> ベルトをしめている/ベルトがしめてある
・包帯をまく --> 包帯をまいている /包帯がまいてある
5)<主体運動>と<<客体変化>>の両方を表わす他動詞
*「ている」が進行中の意味のみを表わす
*「てある」が結果状態の意味を表わす/文脈によって準備のための結果状態継続
・太郎が窓をあける --> 太郎が窓をあけている/窓があけてある
修正2008/07/25
・太郎が紙をはる --> 太郎が紙をはっている/紙がはってある
・太郎が名前を消す --> 太郎が名前を消している/名前が消してある
・太郎が花子に手紙を送る -->(太郎が花子に手紙を送っている)/花子に手紙が送ってある
注)「生産動詞」はこのクラスか?
・太郎が穴を掘る --> 太郎が穴を掘っている/穴がほってある
・太郎が名前を書く --> 太郎が名前を書いている/名前が書いてある
6)<主体運動>を表わす他動詞
しかも、客体に体する働きかけが主体の内部になんらかの形で蓄積し継続する
*「ている」が進行中の意味のみを表わす
*「てある」が準備のための結果状態継続を表わす
・太郎がご飯を食べる --> 太郎がご飯を食べている/ご飯を(たくさん)食べてある
・太郎が資料を読む --> 太郎が資料を読んでいる/資料を(会議のために)読んである
7)<主体運動>表わす他動詞
しかし、6)のような意味特徴がない
*「ている」が進行中の意味のみを表わす
*「てある」が使用できない
・太郎が花子を愛する --> 太郎が花子を愛している/×花子を(結婚のために)愛してある
・太郎が花子を信じる --> 太郎が花子を信じている