自他動詞と可能形の関係 [コメントする]

自他動詞と可能形の関係


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/16 02:34:06)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

No.710
投稿時間:03/05/02(Fri) 22:19
投稿者名:ひで
Eメール:HIRO813@aol.com
URL :
タイトル:「届ける」について

先日、外人の友達に質問をされました。

「母に手紙を送ってくれるように頼みました。もう2、3日経ったら手紙が届けるでしょう」という文を
届くでしょうに直したら、なぜ届けるじゃいけないのか質問されました。 説明はしたのですがうまく伝わらなかったです。
彼は届くことができるという意味を届くを可能形の届けるに変えて表したようです。


もう一つ質問されたことがあります。

「みんな無事になれるように祈っている。」を無事でいられるように
祈っていると直したらなぜ「無事になれるように」ではいけないのか
質問されました。

どうぜ力を貸してください。
よろしくお願いします。

No.711
投稿時間:03/05/03(Sat) 00:55
投稿者名:Oyanagi
Eメール:oyanagi@tky2.3web.ne.jp
URL :
タイトル:「意志動詞」と「自他動詞」と「可能形」の三角関係

ひでさん、こんにちは。Oyanagiです。

> 「母に手紙を送ってくれるように頼みました。もう2、3日経ったら手紙が届けるでしょう」という文を
> 届くでしょうに直したら、なぜ届けるじゃいけないのか質問されました。 説明はしたのですがうまく伝わらなかったです。
> 彼は届くことができるという意味を届くを可能形の届けるに変えて表したようです。

その友人が「可能形」を使わなければいけないと思って「届ける」を使ったというのであれば、次の3点を教えれてあげればいいと思います。(1)が一番重要なことなので、これで理解してもらえればいいのですが、もし、「自動詞」「他動詞」をある程度理解できる人だったら、(2)(3)のことにも触れれば、分かってもらえると思います。

(1)「意志動詞」のこと
「動詞」を可能形にして使うには制限があります。簡単に言えば、「意志動詞」と呼ばれる動詞でないと、可能形にして使うことができないということです。「意志動詞」というのは「人が主語になって、その人がしたい、しようと思ってする行為」です。

☆この意志動詞であれば、次のように文を作ることができることを示します。

「3時に家を出ます。そちらには5時までに着けるでしょう」
「仕事はあと少しです。もうすぐ帰れるでしょう」
「いまお店は満席です。もう少ししたら中に入れるでしょう」

このように「人がそれをする」という意味で使う動詞なら可能形にして、それを「することができる」という文を作ることができます。
★しかし「届く」は「人がする」ことではなく、「物がどうなるか」を表す動詞ですから、元々可能形にはできない動詞です。

(2)自動詞と他動詞のこと
「届く」という自動詞に対して、「届ける」という形の他動詞があります。
ですから、この点で考えても、「手紙“が”届ける」という文は間違いになります。
※このような動詞については、下に例を挙げておきました。

(3)「実現する」ことと「出来る」こと

友人は「届く」という事態が「実現する」ことを、可能形を使って表現しなければならないと考えたようですが、(1)で説明したように、「意志動詞」の場合は、「“しよう””したい”と思うことが実現する」→「可能形」で表現することができますが、「無意志動詞」の場合はそれができません。できないというより、“そうする必要がない”と言えます。つまり、出来事の場合は、その出来事が「実現する/しない」は、動詞をそのまま使って表現できるということです。

☆「届く」「届ける」もそうですが、「開く」「開ける」のようにペアが存在する自動詞のほとんどが(:「入る」「乗る」「通る」など例外もありますが)、物事の変化などの出来事を表します。ですから、それが実現する場合には、そのまま「届く/届いた」「開く/開いた」と言い、「実現しない」場合は、“否定形”で「届かない/届かなかった」「開かない/開かなかった」と言えばいいわけです。

☆「届く」「届ける」のように、(実際には存在しませんが)自動詞の可能形と同じ形になる他動詞のペアがある動詞には次のようなものがあります。やはり自動詞のほうは「可能形」で使うことはありません。そのまま使えばいいです。
自動詞と他動詞のペアのグループについてはこのホームページの<文法考察ファイル#23>を御覧になってください。
グループ4に入っている動詞です。
→http://www3.tky.3web.ne.jp/~oyanagi/studyroom/23.html
自動詞 他動詞
揃う 揃える
開く 開ける
付く 付ける
続く 続ける
傾く 傾ける
届く 届ける
立つ 立てる
建つ 建てる
育つ 育てる
並ぶ 並べる
                     ↓※これは「可能形」ではなくて、他動詞です!
「そのカギを使えば、ドアは開きますよ」×開けます
「カギが壊れているようです。ドアが開きません」×開けません
「こののりを使えば、ぴったり付きますよ」×付けます
「こののりはだめです。うまく付きません」×付けません


> もう一つ質問されたことがあります。
> 「みんな無事になれるように祈っている。」を無事でいられるように
> 祈っていると直したらなぜ「無事になれるように」ではいけないのか
> 質問されました。

これも、「なる」という自動詞の「可能形」を使おうとして間違ったと考えれば、先の例と同じように説明できますが、先の例とは違う点があります。上の文は「人」を主語にして「みんなが無事になる」という表現自体が間違いです。つまり、「無事になる」という表現が不自然です。ですから、正しい表現として「無事でいる」という表現を使う、と教えるのがいいと思います。これはもう「そういう表現がない」のですから、そう言うしかありません。
それを理解してもらった上で、なぜ「なる」→「なれる」が使えないのかという疑問に対しては、先の例と同じように説明することはできます。

★「なる」は「する」とペアになっている自動詞です。ですから、「出来事」の「実現」を表す場合には、可能形で使うことはありません。
「このエアコンをつければ、部屋はすぐに涼しくなります」×「涼しくなれます」
「普通は一週間かかりますが、このサービスを利用すれば、もっと早くなります」×「早くなれます」

(注)「なる」は、「先生になる」のように「職業」「人の属性」を表す言葉と一緒に使う場合に限って「意志動詞」のように使うことができますから、可能形で使うこともできます。
「もっと勉強しないと、立派な人にはなれませんよ」

★「する」は「人」を主語にして意志動詞として使えるので、当然可能形が使えます。
「このエアコンをつければ、部屋をすぐに涼しくできます」(※「する」の可能形は「できる」)
「普通は一週間かかりますが、このサービスを利用すれば、もっと早くできます」

このように「意志動詞」にすれば、問題なく可能形を使えます。そう考えれば、「無事でいる」という表現が可能形で使えることも理解できます。「無事でいる」というのは「(その人が)無事の状態を続ける」という意味の「意志動詞」の表現になっているからです。
次のような「〜でいる」の表現も同じですね。
「ずっと健康でいる」「ずっと健康でいたい」「ずっと健康でいられる」
「ずっと幸せでいる」「ずっと幸せでいたい」「ずっと幸せでいられる」

以上です。上で使った文法用語については、実際に学習者に説明する際には、適当にやさしく言い換えて伝えてください。長くなりましたが、不明な点があればまたご質問ください。


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