「あまり〜ない」の意味と導入 [コメントする]

「あまり〜ない」の意味と導入


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/16 02:32:23)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

No.683
投稿時間:03/04/19(Sat) 20:40
投稿者名:なっちゃん
Eメール:
URL :
タイトル:導入方法

あまり〜ない についてですが、例えば、
わたしは、さかなが あまり好きではありません。
は、少し魚が嫌いだという意味になると思います。でも、その微妙なニュアンスを、初級の学生に理解してもらうには、どのように導入すれば、良いでしょうか?どなたか、アドバイスお願いします。

No.685
投稿時間:03/04/20(Sun) 20:17
投稿者名:Oyanagi
Eメール:oyanagi@tky2.3web.ne.jp
URL :
タイトル:それを考える前に

こんにちは。管理人のOyanagiです。

直接の回答ではないのですが、ちょっと気になったことを書きます。

> あまり〜ない についてですが、例えば、
> わたしは、さかなが あまり好きではありません。
> は、少し魚が嫌いだという意味になると思います。でも、その微妙なニュアンスを、初級の学生に理解してもらうには、どのように導入すれば、良いでしょうか?どなたか、アドバイスお願いします。

『微妙なニュアンス』をどう理解させるかを考える前に、なっちゃんは「あまり〜ない」を「少し(〜の反対語)」という意味になると導入されているのでしょうか?

例えば、
「○○はとても大きいです」
「××はあまり大きくないです」=「××は少し小さいです」
という具合です。
そうすると、次のような場合はどうでしょう。

大型の車(=ア)と小型の車(=イ)と普通のサイズの車(=ウ)の三つについて述べるときに、

「アは(とても)大きいです」
「イは(とても)小さいです」
「ウは あまり大きくありません」
このように表現するのは問題ないと思いますが、どうでしょうか。

そして、上の考え方をこれにあてはめると
「ウは あまり大きくありません」=「ウは 少し小さいです」
となってしまいますね。
これは正しいのでしょうか?

普通のサイズの車を指して、「少し小さいです」というのは変ではないでしょうか。

このように<属性>を表す形容詞は、「好きだ」「おもしろい」「おいしい」のような<感情・感覚を表す>形容詞とは少し異なる振る舞いをするのではないでしょうか?

通常初級の「あまり〜ない」の導入では、<属性>を表す形容詞で行われるのはないかと思います。
つまり、「とても〜」とは言えない(=普通の程度かそれよりも少し高い程度のものである)ものを使って、「あまり〜ない」を練習させると思います。

それに対して、<感情・感覚を表す>形容詞について、
「あまり面白くない」
「あまり好きではない」
「あまりおいしくない」
を練習させる際には、ある程度注意が必要だと言えるでしょう。

まとめると、「大きい」は次のように二つの意味に解釈できますが、「おもしろい」はそれができません(または不自然です)。

○「この本は大きくありません。普通のサイズ/大きさです」
○「この本は大きくありません。小さいです」
?「この本は面白くありません。普通の面白さです」
○「この本は面白くありません。つまらないです」

このような違いについて考えた上で、なっちゃんさんの質問である、『微妙なニュアンス』について考えてみる必要があると思います。

★普通/平均的なレベルのものを指して、「あまり〜ない」を導入するのか
★「あまり〜ない」=「少し(〜の反対語)」であると導入するのか

この点についてはっきりさせておかないと、「あまり好きではない」の意味をどう指導するかが見えてこないと思います。

No.686
投稿時間:03/04/20(Sun) 23:52
投稿者名:なっちゃん
Eメール:
URL :
タイトル:お忙しいところ申し訳ないですが、早急にアドバイスお願いします

返信、そしてもっともなアドバイスをありがとうございます。
そうですね、普通の大きさの車を、あまり大きくない=少し小さい とは、言いませんね。あまり〜ない=少し<〜の反対語>では、導入しないほうがいいですね。
 この あまり〜ない を導入する初級のクラスでは、形容詞はまだ学習していなくて、好きではありません、嫌いではありませんは、学習しています。新たに形容詞を、この段階で取り入れることもできません。その場合、

           |||||||     
好きーーーーーーーーふつうーーーーーーーー嫌い

|||||||のところが、あまり好きではありません です。という説明ではどうでしょうか??アバウトすぎるでしょうか??
ご意見、お待ちしています。

No.687
投稿時間:03/04/21(Mon) 12:00
投稿者名:なっちゃん
Eメール:
URL :
タイトル:やっぱ・・・

> 返信、そしてもっともなアドバイスをありがとうございます。
> そうですね、普通の大きさの車を、あまり大きくない=少し小さい とは、言いませんね。あまり〜ない=少し<〜の反対語>では、導入しないほうがいいですね。
>  この あまり〜ない を導入する初級のクラスでは、形容詞はまだ学習していなくて、好きではありません、嫌いではありませんは、学習しています。新たに形容詞を、この段階で取り入れることもできません。その場合、
>
>            |||||||     
> 好きーーーーーーーーふつうーーーーーーーー嫌い
>
> |||||||のところが、あまり好きではありません です。という説明ではどうでしょうか??アバウトすぎるでしょうか??
> ご意見、お待ちしています。


 ごめんなさい。大きい の時は、あまり大きくありません=少し小さい は、おかしいと思います。でも、やっぱり、あまり好きではありません=少し嫌い になるような気がするのですが・・・どうでしょうか??
 もし、なるとしても、後のことを考えて、あまり〜ない=少し<〜の反対語> とは言えないし、やはり、どのように導入するのがよいでしょうか?? お願いします。 

No.688
投稿時間:03/04/21(Mon) 15:39
投稿者名:きんちょ
Eメール:akizuki@pr.co.kr
URL :http://akizuki.pr.co.kr/
タイトル:Re: やっぱ・・・

 最近、日本語オンラインのほうで、つぎのような やりとりが ありました。

http://nihongo-online.jp/tree02/treebbs.cgi?kako=1&all=3861&s=3861

なるほど、わたしは そこで、「あまり おおきくない」と「ちいさい」は両立すると 断言しているのですが、これはOyanagiさんの説明と まっこうから対立していることになりそうですね。

 なっちゃんさんの意見は どうも わたしに味方してくれそうな感じですが、Oyanagiさんの説明も一理も二理も あって、「ふつう」というレベルが意識されているときには「あまり」は 「ふつうよりは〜だけど、たいして〜というわけではない」という意味に なりますね。

 どうして こんなことに なるのでしょうか。

 それは、わたしたちが「おおきい」「ちいさい」というときの基準は、あらかじめ さだまっているわけではないからだと おもいます。あいてが「おおきいですか」と きけば、あいてが おもっているほどではないという意味で「ちいさいです」と いえるでしょう。そこには、謙遜などの意味も はいることも あるだろうし、逆に あいての かんがえをムゲに否定する表現をさけるためだけに、実は、かなり ちいさくても「あまり おおきく ありません」と いうような表現をしたりもすると おもうのです。

 「おおきい」か「ちいさい」かの基準を客観的な指標に おくのではなく、あいての ことばの表現していると おもわれる内容に おくと、図式的な説明から はなれた つかいかたが できるようになるのだと おもいます。

 で、問題は そういう こみいった現実があるなかで、おしえるほうは どのような部分をとりだして、どこをおしえ、どこは おしえないのかということをはっきり意識しておくことでしょう。Oyanagiさんが のべているのは、そういうことだと おもいます。

No.689
投稿時間:03/04/21(Mon) 18:42
投稿者名:Oyanagi
Eメール:
URL :
タイトル:一つの考え方(導入)

遅くなりましたが、昼休みにさっと書いたものを投稿します。
(お急ぎのようですので。でも間に合わなかったかも)

ざっと調べた限りでは、「あまり〜ない」の導入に際して、「あまり好きではない」=「少し嫌いだ」のように説明していいか悪いかに触れているものはありません。ですから、<反対語>がある形容詞について、どのように導入するかは先生によって違うのだろうと思います。

全体の解決にはなりませんが、とりあえず一つの方法を書いておきます。なっちゃんの示したものとの違いは、「好き」と「嫌い」を一直線上に示すのではなく、「好き」についてその程度を示す図を使うということです。

「あまり」の導入に際してのポイントは、たいていのマニュアルに書かれているように
(1)「とても」「あまり」「全然」は程度を表す副詞のつながりにおいて、「とても〜」は程度が高いこと、「全然」はゼロを表すこと、そして「あまり〜ない」は程度がゼロではないが、低いこと、を理解する。
(2)「あまり」「全然」は否定文といっしょに使われる。

この二点だと思います。教案のマニュアルには載っていないところをみると、反対語と同じになるかどうかには踏み込まないほうが無難だと考えられます。
そして、(一見わかりやすそうな)「嫌い」と「どちらでもない」と「好き」を一直線上に示すやり方は、反対語とのつながりを示す点ではいいのですが、これを見ると、「あまり〜ない」が「嫌い」の側に入っていて、基本である「とても」〜「あまり〜ない」「ぜんぜん〜ない」の程度の概念がうまく示せなくなります。ですから、下のように示したほうがいいと思います。

 −−−
  |とても    :「とても好きです」
  |
  |
  |
  |
  |あまり〜ない :「あまり好きじゃないです」(=はっきり「嫌い」ではないが、
  |                       「好き」の程度が低い→★)
0−−(ぜんぜん)〜ない:「ぜんぜん好きじゃないです」(=「嫌いです」)

★「あまり好きじゃないです」がどの程度のレベルかについて説明する場合には、「少し嫌い」ですとイコールとするのではなく、次のように説明するのも一つの方法かと思います。

 程度がゼロ(=はっきり「嫌いです」)ではないけれども、それに近いので、「嫌い」という気持ちも少しある。「嫌い」という気持ちがはっきりある場合には、「嫌いです」と言う。

☆注意点
「あまり好きではない」を「少し嫌いだ」と説明する場合には、次の点が気になります。
「少し嫌いです」はアンケート用紙の項目としてはありそうですが、実際の会話ではどの程度自然でしょうか?
例)「納豆は好きですか」
   ○「ええ、 好きです」
   ○「ええ、 とても好きです」
   ○「いいえ、あまり好きではありません」
   ○「いいえ、全然好きではありません」
   ?「いいえ、少し嫌いです」または「いいえ。納豆は少し嫌いです」
   ○「いいえ、嫌いです」


投稿時間:03/04/21(Mon) 18:45
投稿者名:Oyanagi
Eメール:
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タイトル:二つの解釈が生じるわけ

「評価を表す形容詞」と「基本的属性を表す形容詞」

先の投稿で触れたことをもう少し具体的に書いておきます。先の投稿では「属性形容詞」と「感情・感覚形容詞」と書きましたが、標題のほうが適切なので訂正しておきます。今後の指導の参考にしてください。

先の投稿では、ゼロを基準にその形容詞が示す意味の程度を考えましたが、この二つの種類の形容詞で「あまり〜ない」の解釈が多少異なるのは次のように基準とする点が異なるからだと思います。

「評価を表す形容詞」の場合はA(=絶対値ゼロ)を基準にするのが優先されて、「面白さ」がどの程度、「好き」のレベルがどの程度、「おいしさ」がどの程度のように考えるのですが、「基本的属性を表す形容詞」の場合は、Aの解釈も可能ですが、通常はB(=標準値)を基準にするのが優先されるのだろうと思います。(もちろん全てではありませんが)

※ちなみに、反対語が存在しない「感覚」の形容詞の場合は、何も問題なく、程度の概念で「とても〜」「あまり〜ない」「全然〜ない」が説明できます。
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|(痛い、眠い、など)
↑   ↑              ↑
全然  あまり            とても〜
〜ない 〜ない


(1)評価を表す形容詞   (2)基本的属性を表す形容詞
  A              B
 −−−            −−−
  |とても           |とても
  |              |
  |              |
  |              |
  |              |
  |あまり〜ない        |あまり〜ない
  |              |   
0−−(ぜんぜん)〜ない  標準−−−(ぜんぜん)〜ない

 ☆Aの場合は、「この本は(ぜんぜん)面白くない」=「この本はつまらない」
        「この本はあまり面白くない」=「この本は(少し)つまらない」と言える。

 ☆Bの場合は、「普通の価格の本より少し高い本」について「この本はあまり高くない」と言える。
  また、   「普通の価格の本」について「この本はぜんぜん高くない」とも言える。
  しかし、  「普通の価格の本より少し高い本」について、「この本は(少し)安い」とは言えない。

追伸:
きんちょさんからのレスがついたことですし、初級の導入で「当たり前のように行われている」ことについて、ちょっと反省してみる必要があるかもしれません。
(ちなみに、私も現場ではさっと「当たり前のように」流していました。反省)

No.690
投稿時間:03/04/21(Mon) 20:49
投稿者名:Oyanagi
Eメール:
URL :
タイトル:語用論のこと

きんちょさんの投稿もありましたので、「あまり大きくない」は「(少し)小さいです」と両立するかどうかについて私の考えを書いておきます。

最後まで読むとおわかりいただけると思いますが、「両立する」とも言えるし「両立しない」とも言える、というのが私の考えです。

#690に書いたように、<基本的な属性を表す形容詞>はBの「標準」を基準にしてことが優勢だと思います。
もちろんAのように「絶対値ゼロ」を基準に「高さ」「長さ」「広さ」を問題にすることも可能ですが、私たちは、あるものが「大きいか」「小さいか」を判断する場合には、それを判断する基準を設定するのが普通だからです。
しかし、現実に次のような文もあると思います。
「私の弟は背があまり高くない。平均より3センチくらい低い」
こういう場合には、「絶対値ゼロ」を基準に身長を問題にしていると考えられるかもしれません。

一方、<評価を表す形容詞>は、(この変はちょっと怪しいのですが)頭の中で、「面白さ」「おいしさ」「好きな程度」のポイント付けをしていると思います。つまり、それがまったくないのが「ゼロ」というわけです。

そして、ある程度のポイントがあれば、「面白い」、高ければ「とても面白い」、はっきりと「面白い」とまで言えないレベルの場合、「あまり面白くない」というのだと思います。

それでは、「あまり面白くない」は「少しつまらない」と同じではないかと、考える人もいるかと思いますが、その物を「面白い」というスケールで判断しているのか、「つまらない」というスケールで判断するのか、その態度がそもそも違うのだと思います。

そのような違いがあるので、私は、あえて「あまり面白くない」=「少しつまらない」のようにイコールで結ぶという考え方をとりません。

「あまり面白くない」はあくまでの基本通り、
★はっきり「おもしろくない=つまらない」とは言えないけども、「おもしろさ」は低いと解釈するべきだと思います。
「おもしろさ」が低いとはどんな意味なのかというと、はっきりと「おもしろい」と言えるレベルには達していないレベルだと言えます。

そのことを指して、「少しつまらない」という意味だと言ってしまうのではなくて、その人の態度として、「おもしろさ」はゼロではないけど、低いのだとう意味にこそ、「あまり〜ない」の構文の特徴があるのではないでしょうか。

最後になりますが、標題に書いた「語用論」のことを書いておきます。

私は、「少しつまらない」と思っている場合にも、「あまり面白くない」と言うこともあると考えます。それは、はっきりと、「つまらない」と言うことを避けて、「あまり〜ない」と言うという語用論の問題ではないかと思います。
見方を変えれば、日本語では「少し(マイナスイメージの形容詞)」という表現の代わりに「あまり(プラスイメージの形容詞)くない」という表現を使っている、と考えることもできるでしょう。

実は(評価を表す形容詞の場合)「マイナスイメージの形容詞」には「あまり〜ない」という言い方が不自然になるものがけっこうあります。
「あまりまずくない」?
「あまりつまらなくない」?
「あまり嫌いではない」?
このような「あまり〜ない」の特徴を考えると、上の語用論的な要素もあるのではないかなと思った次第です。

No.709
投稿時間:03/05/01(Thu) 18:09
投稿者名:なっちゃん
Eメール:
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タイトル:Re: 語用論のこと

しばらくネットができない状態だったので、遅くなって申し訳ないです。おやぎさん、きんちょさん、深いところまで、考えてくださり、また、細かくメールしてくだっさて、本当にありがとうがざいました。大変、勉強になりました。じゅうぶんに、参考にさせていただきます。


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