「〜ルほうがいい」と「〜タほうがいい」 [コメントする]

「〜ルほうがいい」と「〜タほうがいい」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/13 22:55:48)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[108] するほうがいい/したほうがいい 投稿者:miyabi 投稿日:01/05/05(Sat) 13:42

はじめまして。日本語教授法のページを追っているうちにここに辿り着
きました。
さっそくですが、「〜するほうがいい」と「〜したほうがいい」の違
いがわかる方、いらっしゃいましたら、教えていただけないでしょうか

「〜するほうがいい」のほうが何だか丁寧な感じがしますが、詳しい
ことはよくわかりません。
将来は日本語を教えていきたいと思っているのですが、いざ、教える
となると難しいですね・・・。
よろしくお願いいたします。
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[109] 教師の財産(ちょっと脱線しますが) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/05/05(Sat) 19:52 <URL>

miyabiさん、<勉強部屋>へようこそ。\(^o^)/
将来日本語を教えていきたいと思っていらっしゃるそうですが、
miyabiさんの次のコメントはとっても意味があると思いました。
>「〜するほうがいい」のほうが何だか丁寧な感じがしますが、
> 詳しいことはよくわかりません。
実際日本語を教え始めると、参考書を読みながら文法を整理してなおかつドリルを作成するという作業がありますから大変です。「〜スル/シタほうがいい」も教師向けの参考書などを読んでみると、説明があると思うのですが、それじゃ、参考書を読んでさえいれば教えることができるのかというと、そんなことはないというのが現役の教師の声だと思います。
最終的に教師の”財産”となるのは自分で<内省>する力だと私は思います。
miyabiさんが実際に日本語教師になるかどうかはわかりませんが、どちらにしても『自分はこう感じるけどどうなんだろう』という姿勢がとっても大切なことだと思います。
あるときは自分の語感が、参考書などを読んでみて一般的な認識とズレていることがわかって反省したりすることもありますが(独善的な私は特に要注意です(^^;)、逆に自分の語感が参考書の説明とは違って、なぜだろうと考えてみることもあります。どちらにしても自分の”財産”がそれでまた増えることにつながりますよね。
前置きが長くなりましたが、miyabiさんの上のコメントをどうして取り上げたのかを伝えたかったのでうっとうしいことだとは思いながら書かせていただきました。
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[110] 「〜ほうがいい」と<丁寧> 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/05/05(Sat) 19:54 <URL>

さて、ご質問の件ですが、一般的な参考書の一つとして『日本語文型辞典』(くろしお出版)の「ほうがいい」をみてみると、次のような説明があります。p.522
---(引用開始)---
辞書形を使っても、タ形を使ってもそれほど大きな違いはないが、聞き手に強く勧める場合にはタ形を使うことが多い。例えば、現在風邪をひいている人に面と向かって言うような場合には「V−たほうがいい」が使われる。但し、否定形は常に「・・・ない」の形で用いられ、「・・・なかったほうがいい」という形は使うことができない
---(引用終了)---
少し補足すると、『聞き手に強く勧める場合』ではないときというのは、例えば一般的なことを話すような場合でしょう。話の中だけのことだったら「〜タほうがいい」の形じゃなくてもそれほど不自然ではないということです。
例:「(東京から)大阪へ行く時には飛行機で行くほうが新幹線で行くよりいい」(一般的な話)
  「最近飛行機事故が多いから、新幹線で行ったほうがいいよ」(その人へのアドバイス)
実際、「〜ほうがいい」はその人へのアドバイスで使われることのほうが多いので「〜タほうがいい」の形のほうをよく使うかもしれませんね。
そこで問題なのはmiyabiさんが感じた「〜スルほうがいい」が丁寧に感じるということは何と関係しているのかということです。
ポイントとなる文法点をまとめると、
☆聞き手に強く勧める(=アドバイス)→「〜シタほうがいい」
となりますが、実はこの繋がりの背景には
☆話し手が聞き手に自分の態度を示す(:日本語教育ではこれをモダリティと呼んでいます)というものがあります。ここでは、実際にはまだ起きていいない動作/現象が既に起きタものと考えるという見方があるために、<それを強く勧める>というモダリティになっていると考えられます。
ちなみに、これが強くなると「タ形」でなければちょっと変な場合が出てきます。
例:「あいつといっしょに仕事をするくらいなら 
   死んダ/会社を首になっタ ほうがましだ」
  ?死ぬ /?会社を首になる ほうがましだ」
                      
そうすると次のような考え方もできそうな気がします。
★自分の態度を強く示す場合には「〜シタほうがいい」が適当だけれども、逆にアドバイスでありながらそのような態度を抑える(=控えめに話す:丁寧にする)場合には「〜スルほうがいい」を使うことができる。
こうすることで、面と向かってアドバイスしているという印象を与えずに、一般的なこととして提示しているという印象を与えるので<丁寧>に感じると言えるかもしれませんね。
例:「まあ、あなたのおっしゃることもわかりますが、
   ここはやはり◯◯スルほうがよろしいんじゃないでしょうか」
----
以上、miyabiさんが感じられた<丁寧>ということと「〜ほうがいい」との繋がりを考えてみました。
「〜タ」に話し手の気持ちが込められているなんてなかなか面白いと思いませんか。
こんな視点で普段の日本語を観察すると結構楽しいです。
実際に教え始めると”楽しい”なんて言っていられなくなりますけど(^^)
こらからも<勉強部屋>は言葉の難しさと面白さをテーマに発信していこうと思います。
ご感想、ご意見のほうお願いしますね。それでは長くなりましたがこのへんで失礼します。
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[111] 感謝します。 投稿者:miyabi 投稿日:01/05/06(Sun) 23:21

Oyanagiさん、丁寧なご説明&アドバイス、ありがとうございました。
最近ずっと気になっていたことだったので、何だか少しすっきりしました。
日頃とくに気にせず使っているのに、1つ1つ吟味していくと、いろいろなことが見えてくるようですね。タ形1つの意味をとってみても、驚きました。
驚いているだけではどうしようもありませんが、<内省>の精神を忘れずに、少しずつ勉強していきたいと思います。
本当に、ありがとうございました。


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