「程度副詞」と「情態副詞」 [コメントする]

「程度副詞」と「情態副詞」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/16 02:02:49)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

No.595
投稿時間:03/01/21(Tue) 22:58
投稿者名:ソラ
Eメール:
URL :
タイトル:副詞について

はじめまして
独学で勉強中のソラです。
いつも感心して読ませていただいています。
今回は前々からわからないところなんですが。
アドバイスいただけたらうれしいです。


?副詞
程度・情態・陳述
この中のA「程度B情態の区別が大変難しいです。

1、母はシチューをじっくりと煮込んでいる
 この「じっくりと」は情態と書かれていた気がするのですが、

情態は動詞にかかり、程度は名詞・形容詞・動詞・副詞にかかると説明ではなっています。
そこで
 「じっくりコトコトと煮込む」という文が成り立つなら
この「じっくりと」は副詞にかかるため
 程度副詞かなっと思ったりもしたのですがいかがでしょうか?
後説明で
情態副詞は「動作の程度のありよう」
程度副詞は「動作の状態の程度性」
と書かれていました。

2、はっきりと答える
3、少しでも解きなさい
2は「情態」で3は「程度」となっていました。

本当に微妙な違いかもしれませんが、2は「答える」程度を表しているようにも
思えるのですが、「小さな声で答える」、や「静かに答える」なども情態なんでしょうか?
基本だからこそ大切な副詞の疑問です。

副詞って厳密に何を基準してわけるとわかるなどは
ないのでしょうか?
いつもあきらかな物はわかるのですが
迷いながらある意味自分の感にたよっています。
もしありましたら
お聞かせください。
どうかよろしくおねがいします

No.598
投稿時間:03/01/23(Thu) 00:35
投稿者名:oyanagi
Eメール:oyanagi@tky2.3web.ne.jp
URL :
タイトル:「カンに頼る」から「イメージトレーニング」へ

ソラさん、<勉強部屋>へようこそ。

ええと、アルクの「にほんご喫茶室」への投稿に、きんちょさんがレスをつけていましたね。それに対して「よくわかりました」というレスがついていたので、問題は解決したのではないかと思っていたのですが、改めてこちらにも投稿されたので、ちょっと違う視点でレスをつけておきます。
※一部はきんちょさんのレスの内容と重複します。
ポイント1と2で「情態副詞」と「程度副詞」を区別するさいの基本的な見方を書きます。
そして、ポイント3で、もう一歩踏み込んだ区別の仕方を書きます。
さらに、ポイント4で、「情態副詞」の下位分類を紹介して、「程度」の概念と「情態副詞」とのつながりを示しておきます。
最後に、副詞を理解する上で参考になる図書を挙げておきます。
------------------------------------------------------
> 1、母はシチューをじっくりと煮込んでいる
>  この「じっくりと」は情態と書かれていた気がするのですが、
>
> 情態は動詞にかかり、程度は名詞・形容詞・動詞・副詞にかかると説明ではなっています。
> そこで
>  「じっくりコトコトと煮込む」という文が成り立つなら
> この「じっくりと」は副詞にかかるため
>  程度副詞かなっと思ったりもしたのですがいかがでしょうか?

■ポイント1
 「情態副詞」か「程度副詞」かは“位置”で決まるわけではありません。

上の例文では「コトコトと煮込む」という文の「コトコトと」の前に「じっくり」がついたから、この「じっくり」は程度副詞だと判断されたのなら、それは間違った考え方ですね。
きんちょさんのレスにもあるように、情態副詞が二つ並んで述部(動詞)を修飾することだってあります。
【情態副詞1】【情態副詞2】+動詞
「かなりコトコトと煮込む」であれば、
【程度副詞+情態副詞】+動詞
と考えればいいですね。
これについては、きっと理解されたと思いますので、次のポイントへ。

■ポイント2
 両者の区別が難しいと感じことがあれば、自分の頭の中で<疑問文>を作って、どちらが適切かを考えればほとんどの場合区別できると思います。

(1)どう〜しますか/しましたか?
   どんなふうに〜しますか/しましたか?

(2)どのくらい〜しますか/しましたか?
   どの程度〜しますか/しましたか?

(1)の答えとして自然なら、それは「情態副詞」ですね。
(2)の答えとして自然なら、それは「程度副詞」ですね。

例)・どんなふうに煮込みますか。 →○コトコトと煮込みます(「コトコトと」は情態副詞)
                  ×かなり  煮込みます(「かなり」は情態副詞ではない)
  ・どの程度煮込みますか。   →?コトコトと煮込みます(「コトコトと」は程度副詞ではない)
                  ○かなり  煮込みます(「かなり」は程度副詞)

  ・どんなふうにコトコトと煮込みますか。 →○じっくりコトコトと煮込みます
                      →?かなりコトコトと煮込みます
  ・どの程度コトコトと煮込みますか。   →○かなりコトコトと煮込みます 
                      →?じっくりコトコトと煮込みます

いかがでしょうか。○をつけた判断はソラさんも○だと思いますが、?をつかたものはそう不自然じゃなくて、これもいいのではないかと思いましたか。たぶん、ソラさんは、「どの程度」という疑問文に対して「じっくり煮込みます」と答えることに、そう不自然に感じないかもしれません。(違っていたらごめんなさい)
私も×にはせずに、?としたのは、たとえば、次のようなあきらかに不自然に感じるものと比べると分かりにくいかなと思ったからです。
  ・どんなふうに歩きますか。 →○ゆっくり歩きます。(○情態副詞)
                 ×たくさん歩きます
  ・どの程度歩きますか。   →○たくさん歩きます。(○程度副詞)
                 ×ゆっくり歩きます

それでは、上の方法で何となく区別に不安を感じたらどうするのがいいでしょうか。
ソラさんが書かれているように、自分の「カン」に頼るしかないでしょうか。
そこで、もう一歩踏み込んで考えることを提案しておきます。

■ポイント3
その副詞を何回か口に出して言ったときに、その“意味をイメージ”できますか?
できるものは「情態副詞」です。『それ自体が語彙的な意味を持つ』ということが情態副詞の定義として使われているので、それを利用するということです。

「ゆっくり」という言葉は頭の中でその様子が“イメージ”できますね。これは問題なし。
「コトコトと」という言葉はどうですか。一緒に使われる動詞が何かを問わず、それ自体でどんな様子かイメージできませんか。

さて、それと比べて、「とても」「たいへん」「すこし」「ちょうど」はどうですか?
いくらイメージしろと言われても、様子や情態がイメージできないでしょう。できるとしたら、『定規とかスケール』がぼやっと出てくるくらいですね。つまり、程度副詞は、それ自体には語彙的な意味がない、というのが特徴なんです。

そうれでは、いよいよ、「じっくり」という単語ですね。動詞を特定しなくても、漠然とであっても、この単語からイメージする様子があるんじゃないですか、(人によって違いがあるでしょうが)、はやる気持ちを落ち着けて、腰をちょっとおとして構えているような情景がイメージできませんか。これは「かなり」と違うところですね。

どうですか。これでもやっぱり区別できないということであれば、そう感じる「副詞」を挙げて、また投稿してください。一緒に考えてみましょう。

■ポイント4
本当はこの4が一番に来るべき内容なのですが、質問の内容を優先したので、ここに書いておきます。

『分類』というものを考えるときに、「白黒」つけようという態度は、どこかで無理が生じます。「連続している」と考えれば楽になります。名詞、形容詞、形容動詞という品詞分類もそうですが、単語がすべて、整然と分類されるわけではありません。
あるものは【典型】としてすっきりと分類され、あるものは【周辺=他の分類との堺の近くにある】にあって分類する際には、すっきりとした気持ちで分類できないものがあります。
「情態副詞」の【典型】とは、動作動詞の動作の様子を描写するものですね。「ゆっくり歩く」

でも、下に引用したように「情態副詞」にはいろいろなものが含まれます。
ですから、分類が難しいと感じる単語があっても、それはそれを考える人の理解力が不足しているわけではなく、そもそもそのような性質をもった単語があるということです。

※副詞を「程度」「情態」「陳述」という3分類に定着させたのは、昔の国語学者ですが、それで全ての副詞がきちんと分類できるわけでありません。学者によってはそれ以外の副詞の分類をたてることもあります。また、「情態副詞」にしても、いろいろな種類のものが混じっていて、さらに下位分類ができます。ここでは深く立ち入りませんが、時間があればそのようなことも参考書などを読んで勉強すれば、分類する際の見方が勉強できると思います。(最後の参考文型を参照)

ここでは、「情態副詞」の下位分類を紹介しておきますので、「程度副詞」との区別に役立て下さい。
『日本語教育能力検定試験 傾向と対策 vol.1』バベル・プレス p65からの引用です。
*******引用********
情態副詞
(1)声(擬声語)・音(擬音語)・様子(擬態語)
  ブクブク あっさり しっとり
(2)情態の完了・未完了にかかわるもの
  まだ もう すでに はや とうに
(3)量を表すもの
  すっかり まるまる
(4)態度を表すもの
  わざと ことさら あえて せっかく
(5)関係を表すもの
  ともに たがいに
********************

さて、(3)の「量を表すもの」が気になりませんか。情態副詞なのに「量」とは!
「程度副詞」は「程度」の概念しか表さない単語ですが、「程度」と「量」って違うものだけど、似ている部分がありますね。
それでは、なぜ(3)が「情態副詞」に入っているかというと、ここでいる「量」は“動作の結果、どういう情態になっているのか”という点に視点を当てた副詞だと考えるわけです。

つまり、「10本あったビールを、すっかり飲んだ」というのは、「全部飲んだ」ことを意味していますから、「すっかり」が「量」を表すとみるのは問題ないと思います。ただ、「すっかり」という単語は「全部」とイコールではありませんね。「全部/完全に〜てしまった結果、今○○の情態にある」ということを表しています。その意味で、「情態副詞」だというわけです。

また、「あの子はまるまる太っている」も同じように考えられますね。「(完全に)太ってしまった結果、今<まるまる>と表現できる情態にある」ということを表しています。

このような副詞を「結果副詞」と呼ぶ学者もいます。このような副詞は「程度」の概念も含んでいる分、「程度副詞」との境界にかなり近いところにあると考えていいでしょうね。つまり【典型】ではないということですね。
再度、確認しておきますが、先のポイント4に書いたように、「すっかり」も「まるまる」も一緒に使われる動詞が表す事態が成立した結果の情態を“イメージ”できる単語ですね。

■参考文献

もし、副詞について何か一冊ということであれば、『日本語教育指導参考書19 副詞の意味と用法』国立国語研究所¥700、がいいでしょう。副詞の分類の歴史から、分類の仕方のいろいろ、具体的な分類とその例、用法についての考察などが、コンパクトにまとめられています。

No.603
投稿時間:03/01/23(Thu) 01:59
投稿者名:ソラ
Eメール:
URL :
タイトル:ありがとうございました。


まずは早速のお返事に感謝を
申し上げたいと思います。

「にほんご喫茶室」でのきんちょさんの
説明でイメージは沸いたのですが、他の副詞に
ぶつかるとまだ混ざり合ってしまう点がありましたので、
oyanagi先生の視点で考えを聞けたら
うれしいと思う書かせていただきました。

今からじっくりと読ませていただきたいと思います。
先生
毎回みなさんに的確なお返事ありがとうございます。
私自身日本語の魅力にはまりかけています、
これからも
勉強し続けたいと思いますので
どうかよろしくお願いいたします。


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