「いい」と「よい」 [コメントする]

「いい」と「よい」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/16 01:59:03)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

No.583
投稿時間:03/01/18(Sat) 18:35
投稿者名:しろ
Eメール:
URL :
タイトル:はじめまして

はじめまして。
ボランティアで日本語を教えるお手伝いさせていただくことになりました、しろ、です。
話す、と、教える、というのは、全く異なったもので、日々混乱中です。

今日は、「よい」と「いい」について質問します。
以前、「よい」は文語で、「いい」は口語だと思っていました。
しかし、そうというわけでもなさそうで、、、

これらの使い分けを教えていただけたらと思います。
つまり、どんな時に「よい」を使うのか、またその逆。
または、「よい」「いい」のどちらもOKなのか。(活用の違いのみなのか?)などです。

お手数ですが、どうぞよろしくお願いします。

No.585
投稿時間:03/01/19(Sun) 07:09
投稿者名:oyanagi
Eメール:oyanagi@tky2.3web.ne.jp
URL :
タイトル:活用形の話

しろさん、こんにちは。<勉強部屋>へようこそ。管理人のOyanagiです。

> ボランティアで日本語を教えるお手伝いさせていただくことになりました、しろ、です。
> 話す、と、教える、というのは、全く異なったもので、日々混乱中です。
はじめのころは大変でしょうが、自分の国の言葉を改めて考えてみるとうのも楽しいものです。(いろいろな発見があってということですが)

> 今日は、「よい」と「いい」について質問します。
> 以前、「よい」は文語で、「いい」は口語だと思っていました。
> しかし、そうというわけでもなさそうで、、、
>
> これらの使い分けを教えていただけたらと思います。
> つまり、どんな時に「よい」を使うのか、またその逆。
> または、「よい」「いい」のどちらもOKなのか。(活用の違いのみなのか?)などです。

しろさんも、これから初級の文型を教えて行けば気が付くことだと思いますが、「いい」と「よい」を単文で言い切りの形で使う場合には、しろさんが感じたように「よい」は非常に硬く聞こえます。
「それでいいです」
「それでよいです」

それと、言い切りでなくても、言い切りの形(辞書形)を使う文型でも同じような差が出ます。
「それでいいでしょう」
「それでよいでしょう」

「それがいいと思います」
「それがよいと思います」

ところが、「いい」は他の形式といっしょに使う場合(:つまり文型ですね)に、活用する場合は、「よい」を元の形で考えて活用させる必要が出てきます。
これは活用ですから、「いい」を使おうと思ってもできません。ですからこれには文体の差が存在しません。

初級では最初に否定形で登場しますね。
「この本はいいです」
「この本はよくないです(よくありません)」

その後は、たとえば、過去形
「この本はよかったです」
そして、もちろん過去の否定形
「この本はよくなかったです」

様態の「そう」
「この本はいいです」→「よさそうです」

過去形(タ形)を使う文型
「よかったり、悪かったりです」

条件の形
「いい」→「よければ」
    →「よかったら」

などなど。
ということで、活用を考える場合には、「どちらもOK」ということはありません。「よい」を基本形にして活用させます。

No.586
投稿時間:03/01/19(Sun) 10:01
投稿者名:しろ
Eメール:
URL :
タイトル:Re: 活用形の話

大変よく分かりました。
(確かに“よく分かりました”の“よく”も“よい”から来ていますし。「いく分かりました」とは言いませんね。

ということは、例えば、この形容詞が名詞を修飾する場合、
「彼はいい人です。」⇒「彼は良い人です。」や、単独で使われる場合、Oyanagiさんが書かれたように、
「この本はいいです。」⇒「この本は良いです。」と言い換えられるけれども、「いい」「良い」が活用したときなどは、“良い”の形を使った一通りの言い方しかできないということですね。

最後にもう一度確認の為の質問ですが、「いい」も「良い」も両方とも文法的には正しいと考えていいのでしょうか?
つまり、例えば「文法的には“良い”の方が正しい」というような違いはないですよね。

ありがとうございました。

No.587
投稿時間:03/01/19(Sun) 16:51
投稿者名:oyanagi
Eメール:oyanagi@tky2.3web.ne.jp
URL :
タイトル:古典文法とのつながり

> ということは、例えば、この形容詞が名詞を修飾する場合、
> 「彼はいい人です。」⇒「彼は良い人です。」や、単独で使われる場合、Oyanagiさんが書かれたように、
> 「この本はいいです。」⇒「この本は良いです。」と言い換えられるけれども、「いい」「良い」が活用したときなどは、“良い”の形を使った一通りの言い方しかできないということですね。

そうですね。前回の投稿では、「終止形」のことしか書きませんでしたが、現代語では「終止形」と「連体形」も同じですから、名詞を修飾する場合も「いい+名詞」と「良い+名詞」の二つが使われますが、やはり「良い+名詞」は硬い印象を与えますね。
それから、正確に言えば、「いい」は終止形と連体形しかないので、“「いい」が活用する”という言い方も変ですね。
(詳しくは下を御覧下さい)

> 最後にもう一度確認の為の質問ですが、「いい」も「良い」も両方とも文法的には正しいと考えていいのでしょうか?
> つまり、例えば「文法的には“良い”の方が正しい」というような違いはないですよね。

「文法的に正しい」というのが何を意味するかによりますが、一つの考え方として、古典文法からのつながりを考えてみることができます。
古文の時間に習ったと思いますが、「いい」は古文では「よし」でした。いわゆる「ク活用」の形容詞ですね。
       未然   連用    終止   連体    已然    命令
「よし」:(よ)から、(よ)く 、(よ)し、(よ)き 、(よ)けれ、(よ)かれ
              かり、        かる

       未然   連用    終止   連体    仮定
「よい」:(よ)かろ、(よ)く 、(よ)い、(よ)い、 (よ)けれ  ----
              かっ

「いい」:   ×    ×    いい   いい     ×     ×

このように比べてみると、「いい」は終止形と連体形しかもたない<口語形>という位置づけですね。そして、現代での使用状況を考えれば、終止形と連体形については「いい」は正しい形と認められていますから、文法的にも正しいと判断されます。
ただ、歴史的にみれば、中世に終止形と連体形の区別がなくなり、「よき」が音便で「よい」になり、それが現代語につながっているわけです。
「いい」という形は(『言葉に関する疑問集』文化庁によれば)江戸時代に関東、あるいは江戸で勢力を得たものとみられる、と書かれています。正統性のようなものを考えれば、(「よし」→)「よい」がもともとの形となりますね。しかし、もともとの形だから「正しい」、新しく生まれたから「正しくない」という判断はこの場合しなくてもいいと思いますよ。(ら抜き言葉と違って、十分に認知された形ですからね)


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