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比喩の分類


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 14:39:29)

※これは過去ログを整理したものです。(管理人)

[508] 比喩の分類 投稿者:半熟 投稿日:02/11/21(Thu) 01:49

oyanagi先生、こんにちは。
以前「コトの類型」について教えて頂いた半熟です。その節はあり
がとうございました。
お言葉に甘えて、また来てしまいました。(^o^)
今回は隠喩・提喩・換喩の見分け方について質問したいと思います

問題集に次のような問題がのっていました。
問題1 [ ]内に示した観点から見て、他と性質の最も異なるもの
を、1〜5のうちから一つ選べ。
(1)[比喩の種類]
1.頭が下がる
2.眉をひそめる
3.手を切る
4.肩を落とす
5.骨を埋める
解答  3
解説 3の慣用的意味は、隠喩に基づき成り立っているが、3以外
は換喩に基づいて慣用的意味が成り立っている。たとえば、「眉をひ
そめる」は、「眉をひそめる(=眉のあたりにしわを寄せる)」とい
う動作と「不快に思う」という精神状態が同時に起こることにより、
後者の意味が慣用的に成立している。それに対して、「手を切る」は
、「つないだ手を離す」という意味と「交わりを絶つ」という意味が
類似していることにより、後者の意味が慣用的に成立している。
完全攻略 模擬テスト問題  アルク (2001年発行) 7ページ
より
1・2・4については換喩であることが、なんとなく判るのですが
、5の「骨を埋める」については換喩か隠喩か提喩か迷ってしまいま
す。
日本語大辞典には次のような説明がありました。
(すみません。私が持っている参考書・用語集等には比喩のことに
ついて あまり詳しくのっているものがありませんでした。)
隠喩  たとえを言うのに「・・・のようだ」などの語を用いない
もの。  「雪の肌」「氷のやいば」
提喩  一つのものの名で全体を表し、全体の名で一つのものを表
す。  「銀座(にぎやかな町)」「花(桜)」
換喩  あるものをそれと縁の深いもので表す。  「黒帯(柔道
の有段者)」
なんとなくわかるような気もするのですが自信がありません。
例えば、次のものは以下のような分類であっているのでしょうか?

羽をのばす→隠喩
手があく→換喩
肩を並べる→換喩
目をつぶる→換喩
肩身が狭い→換喩
職場の花→隠喩
千鳥足→隠喩
どうぞ、よろしくお願い致します。 m(_ _)m
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[509] 「換喩」の考え方について 投稿者:oyanagi 投稿日:02/11/22(Fri) 02:24

半熟さん、こんにちは。
(きのうはちょっと体調を崩していたのでレスが遅くなりました)
試験勉強のほう、頑張っているようですね。今回は比喩の問題ですね。
この投稿を読んだときに、すぐ平成12年度の検定試験を思い出しました。去年の1月にあったやつですね。(※今年の試験は実は見ていないのでまた出たのかは知りませんが)
例年アルクさんが「合格するための本」を出して、そこにその年にあった試験問題の解説を乗せていますが、筆者いわく「悪問」とした問題とにていますね。(笑)アルクさんの模擬試験はそれと比べれば、ましだと思います。
実は「比喩」というものが「日本語学」として実は重要なのだと認識されたのは最近のことだと思います。私は認知言語学の勉強をしながら、いかに言語の基本部分と「比喩」が関係が深く、重要であるかを知り「(またまた)目から鱗」でしたが。(これも比喩ですね。笑)
その検定試験には「提喩」と「換喩」という用語は使われていませんでしたが、つながりを考えてみるのも勉強になるかなと思います。ただ、はじめに断っておかなければなりませんが、慣用句の全てがどれかに分類されるということではありません。隠喩と換喩が組合わさることもあると思います。
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> 問題1 [ ]内に示した観点から見て、他と性質の最も異なるものを、1〜5のうちから一つ選べ。
> (1)[比喩の種類]
> 1.頭が下がる
> 2.眉をひそめる
> 3.手を切る
> 4.肩を落とす
> 5.骨を埋める
>
> 解答  3
> 解説 3の慣用的意味は、隠喩に基づき成り立っているが、3以外は換喩に基づいて慣用的意味が成り立っている。たとえば、「眉をひそめる」は、「眉をひそめる(=眉のあたりにしわを寄せる)」とい う動作と「不快に思う」という精神状態が同時に起こることにより、後者の意味が慣用的に成立している。それに対して、「手を切る」は 、「つないだ手を離す」という意味と「交わりを絶つ」という意味が類似していることにより、後者の意味が慣用的に成立している。
> 完全攻略 模擬テスト問題  アルク (2001年発行) 7ページより
> 1・2・4については換喩であることが、なんとなく判るのですが
> 、5の「骨を埋める」については換喩か隠喩か提喩か迷ってしまいます。
> 日本語大辞典には次のような説明がありました。
> 隠喩  たとえを言うのに「・・・のようだ」などの語を用いないもの。「雪の肌」「氷のやいば」
> 提喩  一つのものの名で全体を表し、全体の名で一つのものを表す。「銀座(にぎやかな町)」「花(桜)」
> 換喩  あるものをそれと縁の深いもので表す。「黒帯(柔道 の有段者)」
ーーーーーーーーーーー
これだけでは、なかなか理解が難しいでしょう。換喩を「縁が深いもの」だけですませては、検定試験には対応できないでしょう。
※もし「比喩」と「提喩」「換喩」の区別とその用例を勉強したければ、次の二つがお勧めです。
(1)『メタファー思考』瀬戸賢一 講談社
(2)『レトリックと認識』野内良三 NHKブックス
さて、このアルクの解説はまさに12年度の検定試験の問題文をそのままうつしたかのようなものですね。ただ、これは間違いではないかもしれませんが、「同時に成立している」という見方をすると、「換喩」の考え方とうまく合わないのです。
換喩というのは
(1)<隣接性>・・・空間的つながり
(2)<継起性>・・・時間的つながり
(2)<有縁性>・・・百科事典的つながり
以上の3つに大きく分類されます。『レトリックと認識』より
仲間はずれの1、2、4、5は換喩だとされますが、それを「同時に認められる精神状態」などと限定しているから辻褄が合わなくなるのだろうと思うのです。そんな説明を読んだら、半熟さんのように、なぜ5が同じグループなのか悩んでしまうのも無理はありません。
このグループは「換喩」でその用法は<継起的>なつながりを示しています。
つまり、『ある精神状態になる』(=原因)→『ある動作をとる』(=結果)の関係ですね。
※ちなみに時間的なつながりを理解するのにいい表現としては、『ちょっとトイレに行ってくる』などがあります。これは字義通りの意味でトイレを見学(?)しに行くわけじゃなくて「トイレに行ったあとにすること」を意味しますよね。を意味しています。慣用句だけに換喩があらわれるわけではないので誤解のないように。
さて、そうすると、「骨を埋める」というのは、別に精神状態ではありませんが、<継起的>なつながりが比喩表現となったと考えれば理解できるでしょう。
つまり、「その土地で/場所で、亡くなる」→その結果「そこに骨を埋める」ことになるわけです。それを比喩的に捉えたのが「〜に骨を埋める」ですよね。
※ここで注意することは、「原因」と「結果」のどちらを示すかですが、1、2、4、5はすべて、「結果」を示して、その「原因」を結び付けて比喩的な意味を生み出していますが、その反対に、「原因(=先行する事態)」を示して「結果(=後に続く事態)」を結び付け、意味を生み出しているものもあります。
先ほどの『トイレに行く』はその例ですね。
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> なんとなくわかるような気もするのですが自信がありません。
> 例えば、次のものは以下のような分類であっているのでしょうか?
>
> 羽をのばす→隠喩
> 手があく→換喩
> 肩を並べる→換喩
> 目をつぶる→換喩
> 肩身が狭い→換喩
> 職場の花→隠喩
> 千鳥足→隠喩
ーーーーーーーーーーーーーーーー
これでいいんじゃないですか。(あまり自信なし)
ただ、「換喩」については「隠喩」との複合だったりするものもあるように思います。
「隠喩」はそのものずばり「まるで・・・ようだ」という類似によるつながりです。つまり、AとBはまったく異なる種類のものだけれど、そのように見立てることで結び付けているわけですよね。
(※実際には、人には「羽」はないし、「花」のような植物でもないし、「鳥」でもないわけです)
「換喩」は上の慣用句の場合は、上に書いたように、<継起性>を考えれば、いずれも「結果」の部分を示して、「原因」とのつなりによって慣用的な意味を生み出しているでしょう。
ただ、隠喩と換喩が組合わさっているとも考えられます。実はこのために、その慣用句がどちらなのか判別がつかないのもあるのではないでしょうか。
ちなみに、悪問とされた検定試験の問題では「的を射る」と「羽を伸ばす」「暗礁に乗り上げる」が同じグループとされていました。(隠喩のグループだと考えられます)
※「手」ー「仕事」
 「実力が伸びる」ー「身長が伸びる」(=肩を並べる)
  など。
蛇足
文章問題の場合(悪問でないかぎり)その人の考え方に従って考えれば、そう難問奇問はないのですが、そのことについてある程度知識があれば、「あ、これは○○のことを言っているんだな」とわかり解きやすくなることは事実です。
そうそう、用語のことですが、隠喩は「メタファー」、換喩は「メトニミー」、提喩は「シネクドキ」とも呼ばれます。
それでは、また何かあったらどうぞ。
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[514] だいぶわかってきました。 投稿者:半熟 投稿日:02/11/26(Tue) 01:43

oyanagi先生、またまた わかりやすく丁寧なご説明ありがとうございました。 (^o^)
体調を崩されたというのに、色々と教えていただき、ありがたく思っています。
レスが遅くなってしまった無礼をお許しください。実は私もひどい風邪をひいてしまいまして
ずっと寝込んでおりました。(><)
先生は、もうお身体のほうは よろしいんですか? お大事になさってくださいね。
> この投稿を読んだときに、すぐ平成12年度の検定試験を思い出しました。去年の1月にあったやつですね。(※今年の試験は実は見ていないのでまた出たのかは知りませんが)
過去問を解いてみましたが、直接比喩に関して問う形ではありませんでしたが(比喩・隠喩・提喩・換喩などの
言葉は出てこなかった)、上位語と下位語(提喩と関係がありますね)に関する文章問題がありました。
その中で上位語と下位語の関係ではないものとして、「木」と「枝」 の組み合わせ(こちらは換喩の関係ですね)
を選ばすものなどが ありました。
(1ヶ月前にこの問題をやった時はちんぷんかんぷんでしたけど、今はわかるように
なりました。ありがとうございます!)
> ※もし「比喩」と「提喩」「換喩」の区別とその用例を勉強したければ、次の二つがお勧めです。
> (1)『メタファー思考』瀬戸賢一 講談社
> (2)『レトリックと認識』野内良三 NHKブックス
早速(1)の本を読んでみました。今まで気が付かなかったけど、実は私達は、こんなにも比喩を
使っていたのですね。
最後のほうの理論解説が特に気に入りました。(「赤ずきん」がメトノミーで「白雪姫」がメタファー etc)
わかりやすくて面白かったです。いい本を紹介していただいたので、よかったです。
> 換喩というのは
> (1)<隣接性>・・・空間的つながり
> (2)<継起性>・・・時間的つながり
> (2)<有縁性>・・・百科事典的つながり
> 以上の3つに大きく分類されます。『レトリックと認識』より
この『レトリックと認識』という本も是非読んでみたかったのですが、図書館には置いてなかったので
かわりに(かわりになんて言ったら失礼ですね。すみません)『レトリック辞典』野内良三著 国書刊行会 
で、換喩についてもう少し勉強してみます。
> 文章問題の場合(悪問でないかぎり)その人の考え方に従って考えれば、そう難問奇問はないのですが、そのことについてある程度知識があれば、「あ、これは○○のことを言っているんだな」とわかり解きやすくなることは事実です。
はい! 悪問が出なければいいな・・・。
> それでは、また何かあったらどうぞ。
痛み入ります。 m(_ _)m
 
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