コトの類型 [コメントする]

コトの類型


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 14:16:13)

※これは過去ログを整理したものです。(管理人)

[488] 動詞と格助詞 投稿者:半熟 投稿日:02/11/10(Sun) 21:45

oyanagi先生、はじめまして。
来年の日本語教育能力検定試験を独学で受験する者です。

次の問題が よくわかりません。
解答をみても どうしてそうなるのか わからないのです。
正解を導き出すような法則のようなものが あるのでしょうか?
参考集の名前でも何でもいいです! ヒントをください!!
お願いします。 m(_ _)m

合格水準 日本語教育能力検定試験問題集 アークアカデミー編(1995年度版)39ページより

問題10 動詞と格助詞には次のような組み合わせがあるが、下の動詞は
    どの組み合わせになるか。複数回答も可。

a ・・・が・・・に・・・を 述語動詞
b ・・・が・・・に 述語動詞
c ・・・が・・・を 述語動詞
d ・・・が・・・と 述語動詞
e ・・・が 述語動詞


(4)読む
(5)買う
(11)入る
(16)向く
(20)似ている
問題集の正解
(4) c (5) a (11) b,c (16)b,c (20) b
私の出した答え
(4) a,c (5) a,c (11) b (16)b,c,e(20) b,d

私の考え
(4)読む   「子供に本を読む」→a
(5)買う   「努力を買う」→c
(11)入る   cの用法が思いつきません。→bのみ
(16)向く   「気が向く」「運が向く」→e
(20)似ている 「母と似ている」→d


問題集の解説
 いわゆる「コトの類型」の問題である。述語になるべき動詞は一定の
補語を不可避的に必要とする。たとえば、「読む」という動詞は動作主体
である人だけで動作が行われることはありえない。必ず対象たる本とか
新聞が動作に関わりをもつはずである。こうしたことはすべての動詞に
ついて辞書的なレベルでいえるのである。述語によっては、いくつかの
複数の類型をもつものもあるので、上記解答のように複数解答もでてくる
のである。
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[490] 『コトの類型』その1 投稿者:oyanagi 投稿日:02/11/12(Tue) 01:09 <URL>

11/11/2002
半熟さん、こんにちは。Oyanagiです。
-お断り-
書き忘れたタイトルを元記事に記入して、中身を削除した投稿のツリーは消しておきました。

> 合格水準 日本語教育能力検定試験問題集 アークアカデミー編(1995年度版)39ページより
私もこの問題集を持っていたので、内容を確認してみました。
なるほど、変ですね。私が持っているのも1995年の初版のものなので、その後もしかしたら改訂されていて、直っているかもしれませんね。(もちろんだれも指摘しなければずっとそのままでしょうけど)
★重要★
ただ、この問題集は最後の模擬練習を除けば、『問題をやりながら知識を整理する』という性質が強いので、本番でこんな”曖昧な”出題はされないと思います。(絶対にと言ってもいいです)
設問では『コトの類型』という用語も出ておらず、単に『文型』程度の意識で答えを求めているようにもとれますから、答えはいろいろ出てしまうのは当然です。
それを踏まえて、それじゃどういう知識を整理すればいいかというと、まさに問題集の解説にもあるとおり、『コトの類型』ですね。それでは半熟さんが指摘されていることを十分考慮して、この問題集を作った人の考え方も推測して、私なりの答えを書いておきます。
あ、その前に『コトの類型』についてですが、参考書をご覧になるなら、
☆『日本語のシンタクスと意味I』寺村秀夫 くろしお出版
がいいでしょう。『コトの類型』といえばこの寺村先生ですからね。
非常によくまとめられています。そして、次に書くこともそこを参考にしています。
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> a ・・・が・・・に・・・を 述語動詞
> b ・・・が・・・に 述語動詞
> c ・・・が・・・を 述語動詞
> d ・・・が・・・と 述語動詞
> e ・・・が 述語動詞
>
> (4)読む (5)買う (11)入る (16)向く (20)似ている
>
> 問題集の正解
> (4) c (5) a (11) b,c (16)b,c (20) b
> 私の出した答え
> (4) a,c (5) a,c (11) b (16)b,c,e(20) b,d
>
> 私の考え
> (4)読む   「子供に本を読む」→a
> (5)買う   「努力を買う」→c
> (11)入る   cの用法が思いつきません。→bのみ
> (16)向く   「気が向く」「運が向く」→e
> (20)似ている 「母と似ている」→d
------------------------------
まず、(4)の「読む」について
★コトの類型における『必須補語』という考え方
格助詞には上の文型に上げられているもの以外にも「で」や「から」「より」などがありますね。なぜこれらの助詞が上に挙がっていないかというと、『必須補語』になる項目に使われないからですね。
『必須補語』の考え方は、『その動詞が表わす事態が成立するために必ず必要となる補語』ということですね。これだけでは何が必須かという曖昧な部分があることは確かですが、それでも余分なものをそぎ落としていって『これがなければ動詞が表わす事態がイメージできない』という部分を見極めればいいわけです。解説には書かれていない部分でそのへんを補足説明します。
「遊ぶ」という動詞は、上の類型ではeに入りますよね。この動詞はただ「〜が遊ぶ」というだけでそれが表わす事態をイメージできます。そして、それ以外の情報を加えたければ「公園デ遊ぶ」とか「友達ト遊ぶ」言えば言い訳です。ここでよく(養成講座の受講生にも言われましたが)「遊ぶ」のだから場所が必要だ!だから「で」も必須だという人がいます。こういう考え方になると、なかなか『必須補語』という概念がつかめません。
ちなみに、同じ問題で「さまよう」という動詞の答えが、c、つまり「〜ガ〜ヲさまよう」となっていますが、この動詞は「歩く」と対比すると分かりやすいでしょう。「歩く」という動詞は移動の”様態”のみに焦点を当てた動詞ですから、「(道)ヲ歩く」のような「ヲ」は必須補語にはなりません。ところが「さまよう」という動詞は、単に移動の”様態”を示すだけでなく、『<ある場所>で<その場所>がどこかはっきりと分からず』というイメージを喚起します。ですから、移動の場所を示すことが必須補語ということになります。
(※寺村先生のコトの類型では「歩く」も「通る」も同じ類型になっていますが、前者は「ヲ」は『準必須補語』として、後者は「ヲ」が必須補語としています。「さまよう」は「通る」と同じ理由で「〜ヲ」が必須補語と考えればいいわけです)
さて、前置きが長くなりましたが、このような視点で「読む」を考えてみると、まず第一に必要なのを<対象>だから「〜ヲ読む」となるのはいいと思います。しかし、それを『だれに/だれのために読む』かとうことは、付加情報(寺村先生の用語では<副次補語>)であって、「読む」という動詞が表わす事態を描写する上で必須ではなく、そして準必須でもないと考えられます。
※「準必須補語」などという用語を持ち出すとかえって曖昧さを助長するようですが、この問題を考える際には「必須補語」だけ考えればいいでしょう。詳しくは冒頭で紹介した参考書をお読みください。
※同類の動詞:「〜ニ(セーター)ヲ編む」
ということで、問題集では「読む」はcになっているのだと思います。
続きは「その2」のツリーへ
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[491] 『コトの類型』その2 投稿者:oyanagi 投稿日:02/11/12(Tue) 01:11 <URL>

次に(5)の「買う」です。
上の説明は「おかしい!」と思ったかもしれません。なぜならこの「買う」の答えがcではなく、aだからです。
「買う」が「〜ガ〜ニ〜ヲ買う」だったら、「読む」も「〜ガ〜ニ〜ヲ読む」としてもいいのではないかと。問題集を作った人の考え方を推察すると、寺村先生の『コトの類型』に忠実に従ったのではないでしょうか。
★「買う」は「もらう」と同類の動詞である。
ということです。
「もらう」の類『〜ガ〜ニ〜ヲ・・・』:受ける、預かる、教わる、など
「あげる」の類『〜ガ〜ニ〜ヲ・・・』:与える、預ける、教える、など
そして、「買う」は「もらう」の類に、「売る」は「与える」の類になっています。
ただし、寺村先生も断っているように、同類とはいえ、「買う」「受ける」は現代語では「ニ格」はとらず「カラ格」をとるのが普通だということです。
これは私の推察ですが、「買う」の答えをaにしたということは、「〜ニ買う」の「に」は、「〜のために買う」という意味ではなく、「〜から買う」という意味なのではないでしょうか。「〜のために買う」の「に」は上の説明どおり必須補語にはなりません。もしこれを必須補語と考えて、aにするなら同じ理由で「読む」もaにしなければいけないでしょう。
(※ただし、「〜のために」という意味で使う「〜ニ買う」と「〜ニ読む」では、前者は自然ですが、後者は普通「〜ニ読んであげる」となるのが自然ですから、それが理由で答えが違うという考え方もできます)
ちなみに、半熟さんは「努力を買う」をあげて、cと考えいますが、そのような拡張された用法を持ち出さなくても「お菓子を買う」のような使い方が基本で「買う」は必須補語として「ヲ格」を取ると考えるべきです。そして、コトの類型から言えば、(カラ格とするべきだが、「もらう」と同類であるということで)ニ格も必須補語と考えれば、答えがaとなるわけです。
次に、(11)の「入る」です。
これは明らかにミスプリントでしょう。「〜ガ〜ヲ入る」という用法を私も知りません。
次に、(16)の「向く」です。
半熟さんは「気が向く」「運が向く」という”慣用句”を挙げていますが、
★必須補語とは”本来”必要とされる成分であり、省略された形で文が成立するかどうかは問題ではない。
ということだと思います。
この慣用句の場合は元々は
「(<私の>気)ガ【あること】ニ(向く)」コト
「(運)    ガ【私】   ニ(向く)」コト
だと考えられます。ですから、基本はやはり「〜ガ〜ニ向く」と考えるのがいいでしょう。
ちなみに、一つの動詞で他動詞と自動詞があり、意味が対応していないものに「持つ」があります。
例えば、
「(私 )ガ(かばん)ヲ持つ」
「(牛乳)ガ(1週間) 持つ」
このような場合は、コトの類型として二つたてるのはいいと思います。もちろん、「持つ」も基本は「〜ヲ持つ」ですから、「〜ガ持つ」は含めないという考え方でもいいと思いますが、「気が向く」「運が向く」は元々のコトの類型で考えるのがいいのではないでしょうか。「〜ニ」の部分があると考えたために答えが2つしかないということになったのだと思います。
最後に、(20)の「似ている」です。
これもミスプリントでしょう。
「〜ニ似ている」と「〜ト似ている」の二つを挙げるべきです。
以上まとめると、
問題集の正解
(4) c →OK:妥当な考え方でしょう
(5) a →OK:これはちょっと苦しいけど、出題者の意図を汲んで
(11) b,c →b :これはミスプリでしょう
(16) b,c →OK:妥当な考え方でしょう
(20) b →b,d:これはミスプリでしょう
冒頭にも書きましたが、この手の問題が”文章問題”ならいざしらず、このまま出て答えを選ばせるとは考えられません。出るとしたらちゃんと『コトの類型』を説明する文章の中で、例、例外などを出しながら答えを選ぶ問題になるはずです。ですから、半熟さんが疑問に思ったことが実はとっても大切だったわけで、そういった部分が文章問題になって出ることがということです。
ここに私が書いたことも、”答え”ではなく”一つの考え方”ですね。検定試験の文法の文章問題について言えば、要はそこに書かれている”考え方”に沿って答えを出せればいいわけです。「こう考えたら→こう」「こう考えたら→こう」といった具合です。
長くなりましたが、これからも検定試験の勉強頑張ってください。
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[496] ありがとうございました。 投稿者:半熟 投稿日:02/11/13(Wed) 22:01

oyanagi先生! 本当に ありがとうございました!!
見ず知らずの私に こんなに丁寧に教えていただいて 感激しました。
先生のご説明は とても わかりやすかったです。
疑問に思っていた点(なぜ「買う」が a なのに、「読む」が c なのか・・・等)
についての私の説明が 不十分だったにもかかわらず、先生は私の気持ちを
汲んでくださり、まさに私の知りたかった事に 答えてくださいました。
ありがとうございました。
> -お断り-
> 書き忘れたタイトルを元記事に記入して、中身を削除した投稿のツリーは消しておきました。

お手数をお掛けいたしました。m(_ _)m
> 私もこの問題集を持っていたので、内容を確認してみました。
> なるほど、変ですね。私が持っているのも1995年の初版のものなので、その後もしかしたら改訂されていて、直っているかもしれませんね。(もちろんだれも指摘しなければずっとそのままでしょうけど)
気になったので本屋に行って、ちょっと見て来ました。
(20)似ている については、正解が b,d に変わっていましたが、
(11)入る は、そのまま b,c と なっていました。 (--;
> あ、その前に『コトの類型』についてですが、参考書をご覧になるなら、
> ☆『日本語のシンタクスと意味I』寺村秀夫 くろしお出版
> がいいでしょう。『コトの類型』といえばこの寺村先生ですからね。
はい!是非読んでみたいと思います。
> 冒頭にも書きましたが、この手の問題が”文章問題”ならいざしらず、このまま出て答えを選ばせるとは考えられません。出るとしたらちゃんと『コトの類型』を説明する文章の中で、例、例外などを出しながら答えを選ぶ問題になるはずです。ですから、半熟さんが疑問に思ったことが実はとっても大切だったわけで、そういった部分が文章問題になって出ることがということです。
> ここに私が書いたことも、”答え”ではなく”一つの考え方”ですね。検定試験の文法の文章問題について言えば、要はそこに書かれている”考え方”に沿って答えを出せればいいわけです。「こう考えたら→こう」「こう考えたら→こう」といった具合です。
読解力や分析力が 求められるのですね。もっと日頃から難しい本を沢山読んで
頭を鍛えておけばよかった・・・。(T-T)
> 長くなりましたが、これからも検定試験の勉強頑張ってください。
ありがとうございます!残された時間で出来るだけのことをして、万全の状態で
試験を受けたいと思います。
もし、またどうしても解らない事があったら 質問させていただくかもしれませんが
その時は、もしご迷惑でなければ よろしくお願いいたします。 m(_ _)m
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[497] Re: ありがとうございました。 投稿者:oyanagi 投稿日:02/11/14(Thu) 00:17 <URL>

半熟さん、レスをありがとございます。
> 疑問に思っていた点(なぜ「買う」が a なのに、「読む」が c なのか・・・等)
> についての私の説明が 不十分だったにもかかわらず、先生は私の気持ちを
> 汲んでくださり、まさに私の知りたかった事に 答えてくださいました。
そう言ってくださるとこちらもうれしいです。
まあ、ここは「勉強部屋」なので、私も勉強させてもらっています。
> 気になったので本屋に行って、ちょっと見て来ました。
> (20)似ている については、正解が b,d に変わっていましたが、
> (11)入る は、そのまま b,c と なっていました。 (--;
そうですか。(20)が訂正されていて、(11)が変っていないということは「確信的」に答えがb,cってことですね。
アークアカデミーにメールでもしておきましょうか。
> 読解力や分析力が 求められるのですね。もっと日頃から難しい本を沢山読んで
> 頭を鍛えておけばよかった・・・。(T-T)
過去問題などを2年分くらい目をとおしておいて慣れておけばいいでしょう。(あ、もうそれはやっていらっしゃるかもしれませんね)
> もし、またどうしても解らない事があったら 質問させていただくかもしれませんが
> その時は、もしご迷惑でなければ よろしくお願いいたします。
はい、いつでもどうぞ。お待ちしています。
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