「〜にならない」と「〜になれない」 [コメントする]

「〜にならない」と「〜になれない」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 14:14:44)

※これは過去ログを整理したものです。(管理人)

[477] 「なれない」と「ならない」 投稿者:あじざ 投稿日:02/11/03(Sun) 11:44

はじめまして。未熟者です。お世話になります。
「元気になれない」「元気にならない」や「楽になれない」「楽にならない」の違いがはっきり説明できません。「いくら働いても生活が楽にならない」といいますが、では、「楽になれない」とはいえないのかと質問され、この文ではいえないけど・・・とつまってしまいました。なんと答えてよいでしょう?よろしくお願いします。
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[480] 基本的な考え方 投稿者:oyanagi 投稿日:02/11/04(Mon) 03:00 <URL>

あじざさん、こんにちは。管理人のoyanagiです。
あじざさんが感じたように
>この文ではいえないけど・・・
の部分がやっかいなところですね。まずこのツリーで、なぜこの文では言えないのかを考えて、それを踏まえて次のツリーで言える場合と言えない場合があることについて考えてみたいと思います。
(結論だけ見るなら次のツリーの最後にあります)
■「〜になる」の主体を考えてみる
「〜になる」は変化を表わ形式と考えられますが、大きく分けて二つの使い方があります。
(1)人が主語になって、「そのような状態、人物になる」という用法
   例「きれいになる」「先生になる」
(2)人以外のものが主語になって、「そのような状態になる」という用法
なぜこの二つに分けるかというと、「人=意志を持つもの」が主体になるかどうかで、可能形が使えるかどうかが決まるからです。(※擬人法は別)
■「可能表現」の基本を考えてみる
可能表現というのは
★「〜したい/〜しよう」という欲求/意志が実現する/現実のものとなることを表現する形式です。
 その実現は<生まれ持った能力>から<それが実現する環境がある>まで幅広いものがありますが、基本はそうだと考えられます。そうすると、そもそも人以外(=意志をもたないもの)が主体となる文では可能表現は現われないということになります。
■「主体」と「可能表現」を合わせて考えてみる
例えば、「動く」という動詞を考えましょう。
「歩く」のは人間ですから、「足が痛くて、歩けない」というように可能表現を使えますが、自動車は人ではないので、「ガス欠で車が動けない」とは言いません。意味を考えれば「動く」という事態が実現しないので<可能>と繋がりそうですが、このような場合は<可能表現>を使わずに、「ガス欠で車が動かない」というように、『ただ自動詞を否定形』にすればこと足ります。
それに対して、上の(1)の場合は、同じ「〜になる」であっても、人が主体になっているので、<可能表現>が使えます。
(1)-1「この試験に合格しないと、教師にはなれない」(←教師になりたい/なろう)
(1)-2「もっと努力しないと、きれいにはなれない」 (←きれいになりたい/なろう)
つまり「きれいになる」でも上の例文のように「人」が主体になる場合には、「きれいになろう/きれいになりたい」という欲求が実現される、という意味で<可能表現>が使えますが、これが「部屋」になると「もっとしっかり掃除しないと、きれいになれない」とは言えないということです。これは「きれないならない」で済むわけですよね。
■なぜ「生活が楽になれない」とは言えないか
問題となった二つ表現「元気になる」「楽になる」を考えてみましょう。
この二つの表現は「人」について述べているわけですから、
「私は/その人は【元気になろうと思っても】元気になれない」
「私は/その人は【楽になりたくても】楽になれない」
というように<可能表現>を使うことができるはずです。
文脈を与えれば、より自然な文になるでしょう。
「私は/彼は花子さんが好きだから、彼女の笑顔を見ないと、元気になれないんだ」
「この重圧がなくならない限り、私は/彼は楽にはなれない」
あじざさんが挙げた例文では「人」ではなく、「生活」が主体となっていますから、<可能表現>を使うと不自然に感じるのだろうと思います。上の解説のように考えれば、(2)の用法となり、普通に『否定形』を使えばいいわけです。(※否定形だけで<不可能>の意味を”含む”ことができます)
??「いくら働いても生活が楽になれない」
◯ 「いくら働いても生活が楽にならない」
■もう少し深く考えてみる
「生活が楽になれない」と言えないのは以上につて以上ですが、あじざさんが感じているとおり、「元気になる」「楽になる」は<人>が主体となる文で可能表現「なれない」を使うこともできるし、単に結果を述べる文として「ならない」を使うことができます。ところが、同じ<人>が主体でも「教師になる」という表現では、「ならない」と「なれない」では表わす事態は異なるのが普通です。そして、<不可能>の意味を”含む”ということは、「車が動かない」のような<人以外>が主体になる文と何か共通したものがありそうです。
また、上の例文についてもう少し考えると、疑問に思うこともあるはずです。
例えば、「元気になる」というのが「病気が直る/回復する」という意味の場合には「元気になれる」とは言えないのではないか?などです。
これらのことを考えると、冒頭で「〜になる」を単純に(1)と(2)に分けて考えましたが、もう少し詳しくみる必要がありそうです。
※続きは次のツリーです。
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[481] もう少し考えてみる(+結論) 投稿者:oyanagi 投稿日:02/11/04(Mon) 03:03 <URL>

先の投稿では「〜になる」の用法を大きく(1)と(2)にわけて考えて、<人>が主体となる文とそうではない文との違いを比べましたが、(今回のことに限らず)用法というのは<連続>していると考えるのが良いと思います。ですから、どちらの用法かはっきり選別できるものあれば、グレーゾーンのものもあります。
つまり
★(1)でも<可能表現>の現われ方に差があり
★それは(2)へと連続してつながっている
ということです。
だからこそ、「元気にならない」と言うべきか、「元気になれない」と言うべきか迷うのだろうと思います。
これは人の物事の見方(=認知の仕方)と関係してきます。
★その事態を、人がどの程度コントロール(=働きかけが)できるのか
という見方です。
この見方を導入すると、
☆自らに働きかけることができる要素が多い(=コントロールの度合が大である)と
 みる場合は<可能表現>が問題なく使えるのですが、
☆自らの<生理的な状態>というのは、他の属性(=職業、強さなどの能力、性格、好き嫌いの感情)
 等に比べると、『それがおのずから生じる(=コントロールが難しい)』と認識されやすいことです。
つまり、「怒り」や「喜び」のような感情と同様に「元気になる」ことや「楽になる」ことなどは、「教師になる」ことや「きれいになる」ことよりも、自分の意志とは別に内部から生じてくるものだという認識です。
とはいっても、「元気になろう」や「楽になりたい」と言えることからわかるとおり、完全に意志と切り離されているわけでもないのです。そのことから、<段階性>というものを考えるほうがいいということになります。
以下の区分は仮のものですが、おおよそこのような段階性があるのでないかなと思います。
(1)-1>2>3>(2)
☆(1):「人」が主体の文型:
     基本的には「〜になれる」が使えるが、人の体の部分が主体になる
     場合(1)-3ではそれができなくなり、(2)につながっている
☆(1)-1:「〜にならない」が「〜になれない」とは別の意味で使われる
 (1)-1「この試験に合格しないと、教師にはなれない」
 (1)-1「そう言われても、どうしてもあの人のことは好きになれない」
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☆(1)-2段階:「〜したい/しよう」という人の存在が意識されると「〜になれない」が
         現われるが、結果に焦点があたると、「〜にならない」も使われる
 (1)-2「もっと努力しないと、きれいになれない/強くなれない」
 (1)-3「あの人の笑顔を見ないと、どうも元気になれない」
 (1)-3「このままでは、一生楽になれない」
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☆(1)-3段階:<可能>の意味を含んでいても「〜にならない」が使われる
         <可能表現>は他動詞を使わなければできない。
 (1)-3「あまりの寒さに指が×動けない、◯動かない」(比較:動かせない)
 (1)-3「酔っ払ってしまって、頭が×働かない、◯働かない」(比較:働かせられない)
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☆(2):「人以外」が主体の文型:基本的に「〜になれない」は使えない
     「ガス欠で車が動かない」
     「かぎがかかっていて、ドアが開かない」
以上の分類は、使われる文脈などにも左右されると思いますが、ポイントは”事態に「人」がどうかかわるか”っていことだと思います。
日本語は自他動詞でペアになっているものが多く、可能表現とのつながりで学習者が戸惑うことが多いと思います。
「ドアが開かない」と言うべきなのか、「ドアが開けられない」と言うべきなのか。
「車が止まらない」と言うべきなのか、「車が止められない」と言うべきなのか。
こんなことも、結局は話者が事態をどうみるかという認知の仕方とかかわっているのだと思います。
■結論
初級の学習者であれば、次のように説明するのがいいのではないでしょうか。
・<人>が主語じゃないときは<可能表現>は使えません。
・「元気になる」「楽になる」という表現も(文に現われていなくても)<人>を主語にしてして、「そうしたい/そうなりたいと思ってもそれができない」という場合には「元気になれない」「楽になれない」と言えます。
・<人>が主語でも、ただ「結果がそうなる/なった」ということだけを言いたい場合には(<可能>の意味を含めて)「元気にならない」「楽にならない」と言うことができます。
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[482] なるほど!! 投稿者:あじざ 投稿日:02/11/04(Mon) 20:35

oyanagiさん早速ありがとうございました。といっても、ボケた私の頭ではもう少しじっくりと考え、頭に叩き込みたいと思います。
質問されると、その場で答えられればいいのですが、未熟者の私はまだまだ無理な話で、今回の「じゃあ、私の宿題にするね」(といっても、oyanagiさんに助けていただきましたが)はまだいい方で、ひどいときは、「これはこうしかいえないからこれで覚えるの。」と、まあ、学習者の気の毒なこと・・・。
これからもご厄介になりますが、よろしくお願いします。
ありごとうございました。
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