「着物デ着せる」はなぜだめ? [コメントする]

「着物デ着せる」はなぜだめ?


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 13:20:57)

※これは過去ログを整理したものです。(管理人)

[362] 「着せる」 投稿者:綾子 投稿日:02/04/13(Sat) 07:45

学生が「私は田中さんを着物で着せます」はなぜ間違っているのか教えて欲しいというのですが、明快に説明できませんでした。
母語(イタリア語、英語)の影響ももちろんあると思います。
どなたかご教授願います。
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[364] 「ニ」格のイメージを伝えましょう 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/04/18(Thu) 03:06 <URL>

綾子さん、こんにちは。管理人のoyanagiです。
> 学生が「私は田中さんを着物で着せます」はなぜ間違っているのか教えて欲しいというのですが、明快に説明できませんでした。
> 母語(イタリア語、英語)の影響ももちろんあると思います。
綾子さんは、母語のどの部分がこの誤用につながったとお考えですか。
『なぜ間違っているか』に答えるにはいくつかの方法がありますが、
<なぜそのような間違いをしたのか>を突き止めることは有益だと思います。
−−−前置き−−−
これは「着せる」対象の取り違いによる誤用ですよね。
<対象>は「ヲ」格を取るということは間違いではありませんが、
「着せる」の対象は2つあります。
(1)物(=着物)
(2)人(=着物を着る人)
日本語では「着せる」という動作の場合には
(1)に「ヲ」格がついて、
動作が向かう対象には「ニ」格がつきますから
「山田さんニ 着物ヲ 着せる」
が正しい文型になります。
これが「山田さんヲ 着せる」では山田さんが着物のような存在(?)
になってしまいます。
※英語では
 Mother dressed her childという表現があるので、「ヲ」格を
人につけて、「子供を(服で)着せた」という文が生まれるのかもしれないと思いました。
−−−指導方法について−−−
★対象が「人」だから「ニ」格ということではなく、
 動詞の意味によって、「ヲ」と「ニ」を適切な対象につけることが大切だと思います。
★特に、日本語の場合は<移動、方向性がある動作>を表わす動詞には他動詞であっても、「ニ」格をとることが普通で、英語のように目的語=ヲ格とおもっていると思わぬ誤用文が生まれます。
例)ride a horse燹、馬ニ乗る
★日本語の場合は動詞の意味特徴によって「ヲ」と「ニ」を使い分ける
(1)<人>ヲ たたく
(2)<人>ニ 会う
その上で、今回問題となった文章の何がいけないのかを別のわかりやすい文と比較して説明すればいいと思います。
(3)<物>ヲ<場所>ニ  置く
(4)<物>ヲ<人の頭>ニ 置く
(5)<物>ヲ<人>ニ   着せる
このように「置く」というのは(3)のような文型で使われることは
おそらく理解しやすいと思うので、
「着せる」という動作も<移動、方向性がある>動作で、「置く」と
同じように考えればいいと思います。
(4)を間にいれて、クッションにして、(5)にもっていって、
「着せる」を使う文型が「<物>ヲ<人>ニ」となるのだと説明してはいかがでしょうか。
これが一番いい方法というわけではないと思いますが、参考になさってください。
ポイントは日本語の他動詞の「ニ」と「ヲ」の取り方の指導だと思います。
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[366] Re: 「ニ」格のイメージを伝えましょう 投稿者:綾子 投稿日:02/04/22(Mon) 06:11

oyanagiさん、ご指導ありがとうございました。
>
> 綾子さんは、母語のどの部分がこの誤用につながったとお考えですか。
 イタリア語では ”La faccio vestire con la giacca rossa.
といいます。
 英語でおきかえれば、La=her faccio vestire=I dress con=with
la giacca rossa=the red jacket という感じです。
 この文を日本語にすれば、誤用文になるわけです。
>
> 『なぜ間違っているか』に答えるにはいくつかの方法がありますが、
> <なぜそのような間違いをしたのか>を突き止めることは有益だと思います。
>
 そうですね。 もっと、イタリア語を勉強しようと思います。 
 学生のほとんどがイタリア人ですので。
>
> ★対象が「人」だから「ニ」格ということではなく、
>  動詞の意味によって、「ヲ」と「ニ」を適切な対象につけることが大切だと思います。
>
 助詞の使い方の指導がポイントだったんですね。
 どうもありがとうございました。
 まだまだ新米教師の私ですが、日本語の奥の深さに
 毎日勉強させられています。
 oyanagiさんのHPにはいつもお世話になっていますが
 これからもよろしくお願いいたします。
 
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[367] 「デ」格を使う発想 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/04/22(Mon) 11:43 <URL>

綾子さん、レスありがとうございます。
イタリア語の構造も書いてくださってありがとうございます。
私はイタリア語はわからないのですが、おそらく英語と共通したものがあるのではないかと思ってレスを書きました。
それで、イタリア語の(英語で書きますが)
★動詞+対象(=場所)+with+物
の構造をもつものは要注意ですね。
イタリア語の構文も教えていただいたので、ちょっと思い出したことを補足として書いておきます。今後の指導にお役立てください。
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私が英語を勉強したときに感じて、日本語を教えるようになってわかったことですが、
★描くべき状況は同じであるのに、言語によってその捉え方(そして
 その表現形式)が異なることです。
 今回は「着せる」という動詞でしたが、より広く考えると
*他動詞の動作の<対象>として何を指定するか
*<材料>を示す具格(「で」、with)が現われるか
ということについての捉え方の違いだと思います。
■「着せる」について補足
問題となった英語やイタリア語のdressにあたる動詞の使われ方をみると、ちょうど日本語にすると『人ヲ着物デ飾る』のような発想があるのだと思います。「飾る」は日本語でも「対象(=場所)ヲ物デ〜」の構造になりますよね。
にもかかわらず、「着せる」が「人(=場所)ヲ物で着せる」と言わないのは先の投稿にも書いたように、”日本語の”「着せる」という動詞の特徴(動詞の表わす意味の捉え方)から来るものだと思います。
(※このことについては以下にちょっと詳しく)
■共通点
ただし、日本語も英語などと共通する構文はあります。
一般的に<充足/充填>を表わす構文と呼ばれるもので、
「満たす」「埋める」は日本語でも「対象(=場所)ヲ 材料デ〜」となります。
・「グラスを ワインで 満たす」
  fill the glass with wine
・「余白を 挿絵で 埋める」
  fill (up) the blank with an illustration
これらの動詞は英語などの「動詞+場所+with+材料」と日本語の構文が重なるのですが、英語などではこの構文をもっと広く使えるところが日本語と違います。
■重ならない部分
・◯「荷物を 車に 積む」
◯ load the baggage into the car
 ◯ the truck loaded with freight (←load+場所 +with +材料)
 ×「荷物で 積んだトラック」
 ◯「荷物を 積んだトラック」
「着せる」と近いところでは、英語の<供給>動詞があります。
 (※英語を勉強した時になぜwithを使うのか不思議でなりませんでした。こういうのを発想の違いと言うのでしょうか)
・◯ provide the hungry with some food
 ◯ provide some food for the hungry
・◯ furnish the hungry with some food
 ◯ furnish some food to the fungry
 ×「お腹をすかせた人たちヲ 食べ物デ 提供する(供給する)」
 ◯「お腹をすかせた人たちニ 食べ物ヲ 提供する」
 ※「提供、供給する」という動詞では「デ」格は無理ですが、冒頭に
   書いたように、<充足>の発想で捉えれば「デ」格も可能です。
  ◯「お腹をすかせた人たち(の欲求)を 食べ物で 満たしてあげる」
このように、英語では移動する物と移動先の対象のどちらも<目的語>としてとることができて、withを使う構文も普通に使いますが、日本語では「で」が使える構文は限られていて、”物の移動”が認められる事態については(:つまりそれを表わす動詞では)「ニ」格をとるのが自然だということになります。
もちろん、日本語でも事態の捉え方によって「ニ」も「デ」も現われることはあります。(:表わす意味が異なる)
・「壁を ペンキで 塗る」(壁全体を塗るというイメージ)
 「ペンキを 壁に 塗る」(ペンキをどうするのか)
 「壁に ペンキを 塗る」(壁に対して何をするのか)
・「穴を ごみで 埋める」(ゴミは材料という意識)
 「ごみを 穴に 埋める」(ゴミの処理の仕方のひとつ)
■まとめ
(1)対象の「ヲ」と(材料を示す)「デ」格を組み合わせる形式
(2)対象の「ヲ」と(着点を示す)「ニ」格を組み合わせる形式
の2つを考えてみると、
「着せる」以外でも、英語(とおそらくイタリア語)とで、重ならない部分、重なる部分が出てきます。
概略、日本語では、「ニ」格を使う意識が高範囲にわたるために、英語などでは(2)もつかえるけど、(1)も普通に使うという場合でも、日本語では(2)しか言えないということが多いような気がします。
発想として<充足>があって、それを特徴とする動詞の場合には、日本語でも問題なく(1)が使えると言えそうです。
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以上ですが、ペンキの構文などは、養成講座か検定試験の勉強などではお馴染みの文かなと思いますが、今回「着せる」についての母語の影響のことで思い出したので書いておきました。
また、何か疑問に思ったら気軽にご投稿ください。
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