「厄介」と「面倒」 [コメントする]

「厄介」と「面倒」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 00:54:40)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[323] 「やっかい」「難しい」について教えて下さい 投稿者:ちょび 投稿日:02/02/25(Mon) 15:49

いつもお世話になっておりますm(__)m
今度扱う教材に「言語習慣の違いというのは、本当にやっかいなもの
だ」という一文が出てきます。教材のテーマは(「相づちの習慣につ
いて」です。)
この「やっかい」という言葉をどう導入しようか検討中です。
(初級から中級にさしかかっているくらいのレベルの学習者が多いの
でもう、知識として「やっかい」という言葉は知っているのかも知れ

いのですが…)
手元の辞書(小学館「類語例解辞典」)によると
やっかい…こまごまとしていたり,入り組んで込み入っている様
     「やっかいな事件に巻き込まれた」「この役はやっかいだ

難しい…何らかの支障があるために、実現することが簡単にできない
    意。めんどうである意・…理屈や論理が難しい意・…気軽に
    接しにくい意などがある。「解決するのが難しい紛争」
「難しい」ではなく、「やっかい」でしか使えない場面。または両者
のどちらを使うかで意味が大きく異なる場合が示せる例を考えている
のですが、なにかいい導入例はないでしょうか?
例えば
いつも友達にお金を借りに来てなかなか返さない人→やっかいな人
すぐに怒る人、自分の主張を曲げない人→難しい人??
言語習慣の違い→厄介な問題
宗教問題→難しい問題??
私は「やっかい」とは、難しいだけではなく、その難しさが原因で当

(自分)にトラブルが生じる時につかうような気がするのですが…
でも、国際問題なんかには「やっかい」という言葉は使いませんよね

あと、反抗期の子供に手を焼いていても「やっかい」とは言わないよ
うな気がします。
また、こういった例文・場面展開に役立つ辞書や参考書をご存知でし
たら、 あわせて教えていただければありがたいです。
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[324] 簡単なコメント 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/02/26(Tue) 00:56 <URL>

ちゃびさん、ようこそ<勉強部屋>へ。
単語の意味の違いを説明するのはほんとに”やっかい”ですね。(^_^;
なんて、顔文字でお茶を濁すわけにもいきませんね。
ちょびさんがお考えのように、単語の違いを説明する時の基本は
(1)Aしか使えないような用例を示す
(2)Bしか使えないような用例を示す
両者の特徴をおさせたら、
(3)AとBどちらも使える場合のニュアンスの違いを示す
ということで、この3段階がきれいに決まれば万々歳なのですが。
(名付けて”万々歳の3段階説明”)
> 例えば
> いつも友達にお金を借りに来てなかなか返さない人→やっかいな人
> すぐに怒る人、自分の主張を曲げない人→難しい人??
下の文はよさそうだけど、上の文はちょっと何か足りないかなって気がします。
> 言語習慣の違い→厄介な問題
> 宗教問題→難しい問題??
上は問題ないし、下は「難しい」も「厄介」もいいのでは?

> 私は「やっかい」とは、難しいだけではなく、その難しさが原因で当
> 人
> (自分)にトラブルが生じる時につかうような気がするのですが…
その辺のイメージは私もありますよ。
> でも、国際問題なんかには「やっかい」という言葉は使いませんよね
> ?
使わないことはないでしょう。
ブッシュと小泉首相が会談で(オフレコ)で
「やっかいなことになりましたね」と言っても変じゃないですよね。
> あと、反抗期の子供に手を焼いていても「やっかい」とは言わないよ
> うな気がします。
一つの文で考えると使わないと感じますが、文脈があれば使うように思いますよ。
> また、こういった例文・場面展開に役立つ辞書や参考書をご存知でし
> たら、 あわせて教えていただければありがたいです。
これについては、別のツリーで
以上の簡単なコメントについて、詳しいことは『ヘビーなコメント』のツリーへどうぞ。
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[325] ヘビーなコメント(途中息切れ) 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/02/26(Tue) 00:58 <URL>

今回はちょっと自信がないのですが、自分の考えをまとめておきます。使えそうなところがあったら使ってください。
ご意見をいただだければ嬉しいです。
またまた、と〜ても長いのですが、最後に「おまけ」みたいにもう一人の私が登場します。
この「私」は、こうやって時間があって、あれこれと考えることができない場合、つまり、ろくに準備もしないで授業に入ってしまったときの切り抜け方です。(くれぐれも最初にそれを読まないように)
■「難しい」対「やっかい」?
まず、私が疑問に思ったのは、なぜちょびさんはこの二つを対比させて
「やっかい」を導入しようと思ったかです。
ちょびさんが調べた「類語例解辞典」でも「やっかい」は「難しい」と
同じ項目ではありませんよね。
「やっかい」は「面倒」などといっしょになっているはずです。
(※ちょびさんが引用した次の文はこれらの単語の「共通する意味」として書かれてます)
>こまごまとしていたり,入り組んで込み入っている様
ということで、なぜ「難しい」と対比させて説明しようとしたのか、ちょっとひっかかりました。でも、「やかい」は「難しい」と繋がっていることは確かなので、それはそれでいいとして、やはり「面倒」ははずせないでしょう。
ということで、「難しい」「面倒」「厄介」の3つを考えてみました。(欲張るのはいつもの癖です(^_^;
■「やっかい」の位置付け(どこに注目するか)
新明解国語辞典の説明を引用しておきます。
『手数がかかりそうで、出来れば避けたい状態だ』
辞書の例を見ると、似たり寄ったりで、次のようなものがよく載っています。
・「やっかいな仕事だ」
・「やっかいな問題に巻き込まれた」
結局、それが『どんな仕事』なのか、それが『どんな問題』なのかを説明できたらいいのではないかと思います。
「難しい」という要素も関係してきそうだし、「面倒」とはほとんど重なっているようだし、といろいろ考えることはありそうですね。それが上手に説明できれば、少なくとも『こういう状況の時に「やっかい」』を使う、と説明できますからね。
ということで、終わりにしたかったのですが、時間もあったのでちょっと考えてみました。
※これはあくまでも「考え方」の一つなので、これを参考にしてもっといいものを考えてください。
本当はいろいろな用例に当たって、まとめるのがいいのですが、それが済んだと仮定して、先の類語辞典とこの辞典の説明と
と自分の語感を頼りに(←これが実は一番あてにならないのですが)、「やっかい」の位置づけをやってみたいと思います。
便宜的にXとYとZ、そして派生的なものPの4つに区別して考えてみます。
 X:対象そのもの(全体)の状態に注目!
   ★やり終える・解決する・答えを出すことが簡単ではない(:程度の問題)
 Y:対象の具体的な中身に注目!
 (1)簡単に終わらない(:過程の問題)
  →★手数・手間がかかる
 (2)いろいろなことが関係してくる(:広がりと複雑さの問題)
  →★いろいろな方面に気を配る必要がある   
 Z:対象から受ける話者の気持ちに注目!
   ★できればしたくない・近づきたくない・避けたい(:気持ちの問題)
   
(P:対象の評価)
  X→     ★なかなかそれができないと感じるさせる物事・人
  Y(1)→Z→★できないわけではないが、手間・世話がかかる物事・人
  Y(2)→Z→★近づかないほうが無難なあぶない人、かかわると危ないこと
■「やっかい」の位置はどこ(実際の作業の概略)
「難しい」は基本的なレベルの単語なので、上の分類”のみ”におさまるものではない(他の単語とも広くかかわる上位概念の単語という意味)ことを了解した上で、「やっかい」と「難しい」と「面倒」を比較してみましょう。
ポイントは「面倒」や「厄介」は「難しい」という意味をある側面で持ちながらもそれぞれがしっかり特徴(Yの1、2)を持って使われていることだと思います。
そして、「面倒」や「厄介」はその特徴を生かして、話者の気持ちまでも表現すること、さらに、そこから派生した対象への評価(=P)の部分が重要ではないかと思います。
 X    「難しい」 ・    ・      X
        ・   ・    ・
 Y(1)   ・  「面倒」−「厄介」 (2)Y
        ・   ↓    ↓
        ・   ↓    ↓
 Z      ・ (「うっとうしい」)    Z
        ・   ↓    ↓
 P       ・   ↓    ↓       P

上のイメージ図が意味していることですが、
☆「難しい」はXが中心になる単語で、話し方によってはYやZともつながる
☆「面倒」はY(1)を中心としてZに広がり、Xともつながっている
☆「やっかい」はY(2)を中心として、Zに広がり、Xともつながっている
☆「やっかい」と「面倒」は同じYとして共通の意味特徴を持つが、中心となるものはそれぞれ違う
☆さらに、(1)は(2)を含むので、Yの意味で使う場合(「世話」の意味ではない場合)は
 「厄介」は「面倒」で言い換えられるが、その反対はできないことがある。
 つまり、「面倒」が使えても「厄介」が使えない場合がある
■3者の使われ方を考えてみる
これを踏まえて、冒頭の(1)(2)(3)(=万々歳の3段階説明)の”素材”を書いてみます。
(ア)◯「この試験問題は難しい」
   △「この試験問題は面倒だ」
    (→「解くのに時間がかかる」なら◯)
   ?「この試験問題は厄介だ」
    (→「解くのに色々な公式を使う」なら△と判断する人もいるかも)
    (→「この試験自体がなにか問題を起こすような要素をはらんでいる」[=P]なら◯かな)
(イ)△「食事を作るのは難しい」
    (→程度の問題:「ある特定の料理」「器具の使い方」のことなら◯)
   ◯「食事を作るのは面倒だ」
    (→過程の問題:手間がかかる)
   ?「食事を作るのは厄介だ」
    (→姑の顔色をうかがい、主人の好みにも気を使うという場面なら◯かな)
(ウ)△「歯をみがくのは難しい」
    (→年齢によってはそういうこともあるから◯もありかな)
   ◯「歯をみがくのは面倒だ」
    (→いわゆるものぐさ太郎)
   ?「歯をみがくのは厄介だ」
    (→歯磨という行為に慣習として決まりごとがある社会のことなら◯かな)
(ウ)◯「この仕事、難しいね」
    (→程度の問題)
   ◯「この仕事、面倒だね」
    (→Y(1)だけでなく、やりたくない気持ちも出る)
    (もちろん(1)は(2)も含むので(2)の意味で使うことも可)
   ◯「この仕事、厄介だね」
    (→Y(2)だけでなく、やりたくない気持ちも出る)
    (「やりたくない」だけでなく、「係わりたくない」という気持ちが強い)
(エ)×「難しいことになったね」
   ◯「面倒なことになったね」
   ◯「厄介なことになったね」
と、ここまで書いて、エネルギー切れです。あとは、ちょびんさんが、”万々歳の3段階説明”できるように例文を吟味して組み立ててみてください。
授業までまだ日数があるということでしたら、いろいろと意見を交換していいものを作って行きましょう。(もちろん終わってからでもいいですが)
■おまけの「私」
T「さあ、授業を始めましょう。新しい単語の予習をしてきましたか。」
T「それでは、◯◯さん、『厄介』はどんな意味ですか」
S「『面倒』という意味です」
T「ちゃんと調べてきましたね。そうですね。だいたい同じ意味ですね。
  でも、やっぱりちょっと使い方が違います。
  今日の本文のテーマは『言語習慣の違い』です。
  これを勉強すると、『面倒』と『厄介』の違いがわかると思いますよ。
  授業の最後でもう一回聞きますから、覚えておいてくださいね」
(せっかく本文を勉強するなら、こんな方法もアリかなって思います)
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[326] ありがとうございます 投稿者:ちょび 投稿日:02/02/27(Wed) 22:06

とても、ヘビーで深い分析ありがとうございます。
自分の勉強不足を恥ずべきばかりです。
今回、私が「やっかい」を「難しい」と対比して考えたのは、
導入する際、学習者にとって既習(使いこなせる)語彙との対比で
新しい語彙・文法を入れるようにしているからです。
そして、「めんどう」まで入れるのはしんどいので、できれば避けてとおりたいなー、と思ったからでもあります。
Oyanagiさんの分析は、ちょっと私にとっては難しすぎる部分もあるのですが、
ウ)◯「この仕事、難しいね」
    (→程度の問題)
  ◯「この仕事、面倒だね」
    (→Y(1)だけでなく、やりたくない気持ちも出る)
    (もちろん(1)は(2)も含むので(2)の意味で使うことも可)
  ◯「この仕事、厄介だね」
    (→Y(2)だけでなく、やりたくない気持ちも出る)
    (「やりたくない」だけでなく、「係わりたくない」という気持ちが強い)
この部分は是非拝借させていただきたいと思います。
今回は、文章を書くだけでも、大変なお時間を頂いてしまったと思います。
ましてや、この分析の深さ・・・。
本当にありがとうございました。
「おまけの私」について
ボランティアで、教えているのですが、
予習してこられると怖いので、教材はその日に渡しています。
みんな忘れてくるし,毎回同じメンバーじゃないし…(言い訳)。
そして、このような、問題を学習者に丸投げするような高等技術は、
私にはとても使いこなせないのであります(^-^;
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[327] 「学習者と一緒に考えること」の意味 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/02/28(Thu) 01:03 <URL>

> とても、ヘビーで深い分析ありがとうございます。
> 自分の勉強不足を恥ずべきばかりです。
いえいえ、自分で「ヘビー」とつけただけあって、後で自分で読み返しても「ヘビー」です。
それでも、レスを拝見する限りでは、少しでもとっかありがあったようでなによりです。
さて、レスにあった「丸投げ」という考え方に、もしかして誤解があるといけないので補足しておきます。
> そして、このような、問題を学習者に丸投げするような高等技術は、
> 私にはとても使いこなせないのであります(^-^;
「高等技術」と呼べるものなかどうかわかりませんが、私が言いたかったことは、教師が何かについて、詳しく調べて、準備して、それを説明してもそれがすべて学習者に伝わるとは限らないということです。
たまたま、今回の提示の仕方が「教師が準備がなくて十分に調べられない」場合ということでしたが、たとえ、十分に調べたとしても、それを「どう伝えるか」というところで行き詰まることがあります。
そんな時には、やはり『どういう場面で、どういう場合に』使うのかを示してあげるのが一番いいと思うのです。
そして、それを教師が一方的に説明するのではなく、「学習者と一緒に考えること」でより効果があがると思っています。
ですから、私の投稿の最後の部分は「丸投げ」という意味ではなく、(準備不足という負い目を感じながらも)「学習者と一緒に考える」という意味です。
(もちろん、しかるべき方向に誘導するということでは、自分なりの考えがなければいけないと思います)
ですから、教科書の本文をやりおえて、というのは極端な事例かもしれませんが、始めに言葉を説明することにする場合でも、(「難しい」から入るにしても、「面倒」から入るにしても、)その入り方が、学生との問答であれば、それが生かされると思います。
(※こういう問答を通じた会話も日本語の練習になります)
学生と「どんな時に、難しい/面倒だと思いますか」などと具体的な状況を思い描かせて、だんだん、「厄介」の特徴に近づけて行けると思います。
ということで、「厄介」という<言葉>がすぐに理解できなくても、
「厄介」という言葉の<意味>が表す状況や気持ちは人間ならきっと共有できるはずだというのが私の考えです。
「厄介」なことがテーマになっている読み物を扱うなら、何が「厄介」という意味なのかを「学習者と一緒に」読み解いていってもいいのではないでしょうか。
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