「〜ガわかる」と「〜ヲわかる」 [コメントする]

「〜ガわかる」と「〜ヲわかる」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 00:26:50)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[212] 「〜がわかる」と「〜をわかる」 投稿者:ふみ 投稿日:01/07/31(Tue) 22:25

0yanagiさん、こんにちは。
早速ですが、「〜がわかる」と「〜をわかる」って、両方言いますよね?
(でも、文法的には本当は「が」のほうが正しいのでしょうか。まずここからして自信がないのですが…)
とりあえず、両方言うとして、「が」と「を」では、「わかる」の意味が少し違うような気がするのですが、どうでしょうか?
例えば、
? 豚の気持ちをわかるには、豚になってみるより致し方ない。
? 彼のことをわかるために、私は今まで頑張ってきたのです。
? サポーターが経営をわかる必要はない。
このような文の場合、「を」を「が」に変えるとちょっとおかしな感じがします。(ネットで検索した文をもとに作りました。)
なんとなく、「が」は状態性で「を」は動作性かなー、という感じはするのですが、よくわかりません。それとも、根本的に「わかる」の意味をよく理解していないのでしょうか?
それに、「私ならこれは『が』を使う」と思うようなものにも結構「を」が使ってあるので、だんだん頭がおかしくなってきました。
もしかして、すっごーくどうでもいいことなのかもしれませんが、気になってしょうがないのです。どうか、よい知恵をお貸しください。よろしくお願いします。
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[213] (1)考え方の方向づけ 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/08/01(Wed) 02:12 <URL>

ふみさん、お久しぶりです。
> 早速ですが、「〜がわかる」と「〜をわかる」って、両方言いますよね?
確かに。
> (でも、文法的には本当は「が」のほうが正しいのでしょうか。まずここからして自信がないのですが…)
「文法的には正しい」→「規範的」と考えれば、確かに『「わかる」の対象は「が」をとる』となりますね。
*************
この先の説明の前提として書いておかなければならないことがあります。
☆「規範的」であるとどうして判断するのかを次のように考えてみます。
  <基本的な文でそれが(ほとんど)例外なく適用できる>
 「わかる」を言い切りの形、否定形、過去形で使うときには確かに「を」をほとんど受け付けません。
  ×「彼の言っていることをわかる」
  ×「彼の言っていることをわからない」
  ×「彼の言っていることをわかった」
  そして、対象の単語をいろいろ入れ替えてもそれはあてはまります。
**************
> とりあえず、両方言うとして、「が」と「を」では、「わかる」の意味が少し違うような気がするのですが、どうでしょうか?
>
> 例えば、
> (1) 豚の気持ちをわかるには、豚になってみるより致し方ない。
> (2) 彼のことをわかるために、私は今まで頑張ってきたのです。
> (3) サポーターが経営をわかる必要はない。
>
> このような文の場合、「を」を「が」に変えるとちょっとおかしな感じがします。(ネットで検索した文をもとに作りました。)
注:◯数字は機種依存文字なので書き替えました。
*************
実際に検索してヒットした件数を参考までに書いておきます。
(できるだけ正確な数を出すために「わかる」と「分かる」の両方を検索してみました)
「が わかる ために」 161件
「が 分かる ために」 112件
           計273件(A)
「を わかる ために」 125件
「を 分かる ために」  69件
           計194件(B)
「が わかる には」  182件
「が 分かる には」  132件
           計314件(C)
「を わかる には」   90件
「を 分かる には」 62件
           計152件(D)
『わかる/分かる には』の場合にはその差が2倍(:CとD)ですが、『わかる/分かる ために』はかなり接近している(:AとB)と言えるかもしれません。しかし、どちらにしても”無視できない程度”に「を」の使用があるということですね。
*************
> なんとなく、「が」は状態性で「を」は動作性かなー、という感じはするのですが、よくわかりません。それとも、根本的に「わかる」の意味をよく理解していないのでしょうか?
このように二つの形が使われているということは、まゆさんがお考えのように”意味の違い”があるからだと思います。
そうすると、先に前提として考えた「規範」はどうなってしまうでしょうか。
こんな場合は、<『わかる』→「が」を使う>という規則がどうしてなのかを考えてみないといけないと思います。
★つまり、なぜ「規範」とされるのかということを考えてみれば、その「規範」に収まりきれない場合には当然「が」ではないものが使われるはずだということが理解できるはずです。
※→(2)に続く
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[214] (2)共通する認識 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/08/01(Wed) 02:13 <URL>

対象を表す名詞に「を」ではなくて「が」を使う場合に共通する認識を考えてみます。
大抵の参考書に挙げられている例として(ア)〜(エ)があります。
(ア)感情・感覚の形容詞
   『(私は)これが ほしい』
   『(私は)ここが 痛い』
(イ)自発を表す動詞
   『(私は)あれが 見える/聞こえる』
(ウ)可能を表す動詞
   『(私は)これが できる』
(エ)要・不要、存在・非存在、所有に関係する動詞
   『(私は)これが 要る』
   『(私は)忍耐が ない』
   『(私は)兄弟が ある』
まず(ウ)が一番わかりやすいですが、主語になっている「私」が実は<場所>のように認識されています。だから「私には」のように「に」を入れることができます。(ウ)もそうですし、(イ)もできます。そして、(ア)もそのような認識の延長にあると思います。
それは(イ)のような<自発>の発想とのつながりを考えると理解しやすいです。
『私という<場所>に◯◯の感情、感覚が生じる』という認識です。
つまり、一般に<主語>と考えられる「私」は実は<場所>で「〜が」を主体にした構文だと言えます。そうすると、「私」が<何かに働きかける主体>ではなく、<何かが生じる場所>という認識ですから、これはまさに<自動詞>の文と発想は同じになります。
(オ)私は これを こわす
(カ)   これが こわれる
ここに、対象に「が」を形容詞、動詞と自動詞の「が」がとりあえず、同じ認識で括れそうだということがわかります。
それでは問題の「わかる」という動詞はどうなるでしょうか。
(キ)『(私は)これが わかる』→『(私には)これが わかる』
ということで、「私」が上の場合と同様に<場所>と認識されて、その場所に「わかる」という現象が生じるという発想になっていることがわかります。これが「〜がわかる」を規範的とする根拠です。
※→(3)につづく
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[215] (3)まとめで〜す 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/08/01(Wed) 02:15 <URL>

ここまで考えてくると、先にみた「規範」の根拠とすることから”はずれる”場合には「が」が使われないという結論が出そうです。
まゆさんが、指摘されたように、「を」は典型的には他動詞の対象に付くように、<人が働きかける対象>と相性がいいです。それとは反対に「が」は<自然と生じる主体>と相性がいいです。”状態”というのはこれに含まれると思います。
(注:今回の考察は「が」と「を」を単に他動詞/自動詞、動作性/状態性という対立でみないで、<場所>に生じるという見方をするところがポイントです)
そこで、まゆさんが作られた文をみると、「わかる」が言い切りではなくて、「〜ために」「〜には」のような<目的>表現と接続しています。三番目の「〜必要がある/ない」という表現も「〜しようとする必要」という認識があるので、共通するのは<人が働きかける対象>ですから、「を」を使いたくなるのでしょう。
ただ、検索結果で示したように、「ために」がそのような認識がより強く働きますが、「〜には」はそれほどでもないと言えるでしょう。どちらにしても、そのような認識が働くことで「を」を使うことも”自然”であるということです。
しかし、「規範」を規範たらしめている認識はなお根強いものがありますから、「ために」も「には」の構文でも、「が」を使うことはこれはこれで”自然”なことです。
ということで、
> それに、「私ならこれは『が』を使う」と思うようなものにも結構「を」が使ってあるので、だんだん頭がおかしくなってきました。
全然頭がおかしくなることはなくて、むしろそれが”自然”な感じ方だと思いますよ。(^_^)
『あなたのこと が/を もっと わかりたい!』なんて文でも「を」を使う人がけっこういると思いますよ。これも「わかる」「〜たい」だから「が」が正しいんだなんて言い張らなくても、使う人の”認識”の仕方で、<理解するために相手に働きかける>という発想になっていれば、”自然”に「を」が出てくるのではないでしょうか。
わかりにくいところがあったら、遠慮なくご質問くだい。
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最後に蛇足ですが、このように考えても、実際に学習者にどう教えるのがいいかということは別の問題です。『「が」でもおかしくない以上、規範どおり「〜がわかる」で指導する』という立場があってもいいと思います。
注:「が」と「を」でゆれていて問題になるものに、「〜が/を〜たいです」の構文がありますが、教科書によっては(例:Japanese for busy people)「〜を〜たいです」を提示しています。どちらを「規範的」とするかという判断がゆれている例で、「を」を採用する理由の一つには、指導上の配慮(=学習者が理解しやすい)があるからです。
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[216] エピソード(^^) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/08/01(Wed) 02:18 <URL>

大学時代、体育会系のクラブに所属していた私は、大会の前になるとOBへの案内を書いていました。その始めに、「◯◯先輩におかれましては、・・・・」と書きながら、『おかれましては』って何だ?と思ったのですが、日本語教師になって、尊敬表現のことを勉強して「なるほど」と理解できました。
********
尊敬の気持ちを表すには表現を間接的にするという方法があるが、<尊敬する人が何かをする>という表現は直接的なので<尊敬する人=場所>と考えて、<その場所でそのような事態が自然に生じる>と表現することで、間接的になって尊敬の気持ちを表せる。
だから、自発形と尊敬の形(=られる)は同じ。
********
つまり、『〜におかれましては』は<場所>だとわかって、目から鱗でした。(^_^;
ということで、そのころの気持ちを思い出しながら、今回の「を」と「が」の考えをまとめてみました。
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[217] ありがとうございました。 投稿者:ふみ 投稿日:01/08/01(Wed) 22:58

0yanagiさん、さっそくご丁寧にお答えくださり、ありがとうございました。
 なるほど、「場所」ですか。今までにも何度か見かけたことはあるのですが、深く考えたことはありませんでした。「なーんか、感覚的によくわかんなーい」と、見なかったことにしてまして…。今回も、拒絶反応が出かかりましたが、5回くらい読み返して、ようやく、少しですが、頭の中に「場所」の場所ができてきたように思います。
 つまり、
「(私は)これが わかる」と言うときは、「私」が「場所」のように認識されていて、
「(私は)これを わかる」(この文は普通言いませんが、便宜上)と言うときは、「私」が 対象(「これ」)に働きかける主体である、という認識が強い、
ということでしょうか。
おかしなところがありましたら、ご面倒ですがご指摘ください。
ところで0yanagiさんは体育会系だったんですね。なんだか意外でした。…と言うと失礼かな…。私も、大学時代はバレー部で結構真剣にやってました。
前から、どうも0yanagiさんと私は同世代のようだ、と推察されて、勝手に親近感を持っていたのですが、それが余計強くなりました(笑)。
それはさておき、これからもよろしくお願いします。
(わたくし、「ふみ」でございます。)
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[218] 「わかる」を「わかろう」(反省+補足) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/08/02(Thu) 00:52 <URL>

ふみさん、レスありがとうございます。
> なるほど、「場所」ですか。今までにも何度か見かけたことはあるのですが、深く考えたことはありませんでした。「なーんか、感覚的によくわかんなーい」と、見なかったことにしてまして…。今回も、拒絶反応が出かかりましたが、5回くらい読み返して、ようやく、少しですが、頭の中に「場所」の場所ができてきたように思います。
う〜ん。5回も読んでいただいて・・・
「感覚的にすと〜んと落ちる」ものを目指して書いてみたのですが、
まだまだ理解してもらえるようなわかりやすい文章を書く力のさなを痛感しました。m(_ _)m
でも次のコメントを読む限りではポイントは理解していただけたようで。
まずは、ホッ。

>  つまり、
> 「(私は)これが わかる」と言うときは、「私」が「場所」のように認識されていて、
> 「(私は)これを わかる」(この文は普通言いませんが、便宜上)と言うときは、「私」が 対象(「これ」)に働きかける主体である、という認識が強い、
> ということでしょうか。
--------
あのあと気が付いたのですが、「わかる」の意志形も<意志>だから
やっぱり「〜が わかろう」とは言いませんね。
「わかる」は<自動詞>だから、基本は「が」、<他動詞>のように使う場合には「を」と考えてもいいのだと思うのですが、じゃあ、なぜ<自動詞>なの? と考えてみると、<場所>という考え方は自分を納得させる一つの方法としていいのではないかと思っています。
★「わかる」という動詞の意味を「感覚的」に捉えてみると、
あることが知識の助けを借りて、収まるべき場所に「分けられて」そして「その<場所>に収まる」ということだと思います。
つまり、行き着く先だけに焦点があるってことですね。
(ということは「〜に着く」の「に」とも繋がっていますね)
そこに行く着くと「あ、わかった!」となるのではないでしょうか。
だから、日本人好みの「落ちどころに落ちる」という感覚でしょう。
これが、<自動詞>的な自然に「なる」という発想だと思います。
★ところが、ときどきその過程が思うようにいかなくて、収まるべき場所にせっせと「分ける」作業をしなければならないと感じることがあって、そのような感覚が<他動詞>としての「する」という発想で、「〜をわかろう/わかるために」で表われると考えてみてはどうでしょう。
ああ、余計分からなくなってしまったかもしれませんね。(^_^;
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> ところで0yanagiさんは体育会系だったんですね。なんだか意外でした。…と言うと失礼かな…。私も、大学時代はバレー部で結構真剣にやってました。
バレーですか。(バレーボールのほうですよね(^^; )
> 前から、どうも0yanagiさんと私は同世代のようだ、と推察されて、勝手に親近感を持っていたのですが、それが余計強くなりました(笑)。
そうすると、アニメではない「バレーボールのドラマ」を見ていた世代でしょうか?

> それはさておき、これからもよろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。
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[219] 今度はスト〜ンときました。 投稿者:ふみ 投稿日:01/08/02(Thu) 15:26

0yanagiさん、こんにちは。
> う〜ん。5回も読んでいただいて・・・
> 「感覚的にすと〜んと落ちる」ものを目指して書いてみたのですが、
> まだまだ理解してもらえるようなわかりやすい文章を書く力のさなを痛感しました。m(_ _)m
 とんでもないことです! 私の理解が悪いのは、ただただ私の頭が悪いせいでして、0yanagiさんの文章には責任はないですよ。
私はもともと「感覚人間」で、大学の専攻も文学なので、理論的なことにはめっぽう弱いのです。「言語学」を一から勉強したい、と思っているくらいです。
ですから、
> ★「わかる」という動詞の意味を「感覚的」に捉えてみると、
> あることが知識の助けを借りて、収まるべき場所に「分けられて」そして「その<場所>に収まる」ということだと思います。
> つまり、行き着く先だけに焦点があるってことですね。
> (ということは「〜に着く」の「に」とも繋がっていますね)
>
> そこに行く着くと「あ、わかった!」となるのではないでしょうか。
> だから、日本人好みの「落ちどころに落ちる」という感覚でしょう。
> これが、<自動詞>的な自然に「なる」という発想だと思います。
>
> ★ところが、ときどきその過程が思うようにいかなくて、収まるべき場所にせっせと「分ける」作業をしなければならないと感じることがあって、そのような感覚が<他動詞>としての「する」という発想で、「〜をわかろう/わかるために」で表われると考えてみてはどうでしょう。
ここはもう一発で、「感覚的にすと〜んと落ち」ました。
実は、私の頭の中にあった「意味の違い」も、まさにこういうことだったのです。あまりにもぴったり当てはまったので、嬉しくてひとりでに顔が笑ってしまいました。再三にわたって説明を試みてくださって、本当にありがとうございます。
> そうすると、アニメではない「バレーボールのドラマ」を見ていた世代でしょうか?
はい。私の小・中学時代はバレーボール全盛時代でしたね。今でも、ママさんバレーやってます。最近はあまり行けませんが。
では、またよろしくお願いします。
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