「〜ル時」と「〜テイル時」 [コメントする]

「〜ル時」と「〜テイル時」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 00:21:19)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[192] 「〜る時」と「〜ている時」の違い 投稿者:浅野友加里 投稿日:01/07/02(Mon) 10:58

今日初めてこのホームページを読ませてもらいとても勉強になりました。
 先日、「ご飯を食べる時お箸を使います。」「ご飯を食べる時お茶を飲みます。」は正しいのに「雨が降る時傘を使います。」は変なのはなぜかと聞かれ返答に困ってしまいました。確かに「雨が降っている時傘を使います。」が正しいと思いますが、どうしてでしょうか。ご存知でしたら教えてください。
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[193] 「〜時」<背景という考え方> 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/07/03(Tue) 07:48 <URL>

浅野さん、<勉強部屋>へようこそ。「時」の使い方の問題ですね。
「時」の使い方の基本はもう既にご存じだと思いますが、確認という意味で。
まず次の三つの文型が考えられます。
(1)二つの動作が<同時>→『〜スル時〜スル』:「ご飯を食べる時 お箸を使います」
(2)後件が前件に<先行>→『〜スル時〜スル』:「ご飯を食べる時 手を洗います」
(3)前件が後件に<先行>→『〜シタ時〜スル』:「ご飯を食べた時 歯を磨きます」
そうすると、確かに問題の文「雨が降る時 傘を使います」は(1)の用法で正しい文になるはずです。ところが、自然な文は「雨が降っている時 傘を使います」になります。
そうするとこの文型は次の(4)の場合ということになりますね。
(4)前件が背景にあって、その中のある時点/期間で後件が起こる
   →『〜シテイル時 〜する』:(A)「先生の話を聞いている時 あくびをする」
                 (B)「出かけている時 空き巣が入る」
Bのように<瞬間動詞/変化動詞>の場合には結果状態が背景になるので「出かける時〜」では全く意味が異なりますが、Aのように<継続動詞>の場合には(1)の文型を使って「先生の話を聞く時〜」と言うことも可能ですが、やはり(4)のように表現するほう自然に感じるはずです。
これは(4)の説明にあるように”一方が<背景>として進行している”と、事態を捉えているためです。
------<背景という考え方>---------
そこで、このような視点で改めて問題文を観察すると、前件が「雨が降る」という自然現象です。浅野さんが書かれた他の文「ご飯を〜」の文とそれが大きく異なります。つまり、「ご飯〜」の文はその人が「食べること」と「箸を使うこと」、「お茶を飲むこと」を<同時>にすることができると認識されますから、概念図は次のXのようになりますが、「雨〜」の方は、私たちの経験から『雨が降っていることを確認する作業』があってそれで『傘を使う』という動作があると認識されますからYのようになります。
(※もちろん外を歩いていて、雨が降り始めて、傘を差して、雨がやんで傘をたたむ、というようにXと同じように捉えることができる事態もありますが、”通常”は「雨が降っている」という背景があって、自分が中から外へ出て、そしてまた中に入るまでの時間の動作として「傘を使う」という捉え方がされるのではないでしょうか。つまり事態の捉え方が異なると言えます)
   始める    終わる
   ↓      ↓
X: |−−−−−−|「食べる」
   |======|「使う」「飲む」
Y: →→|→→→|→→「降っている」
     |===|「使う」
つまり、「雨が降る」と「傘を使う」はX:(1)の文型ではなく、Y:(4)の文型で表すのが自然だと判断されるのではないでしょうか。
同様に、自然現象であれば、
(C)「雷が ×鳴る時は ◯鳴っている時は 建物の中にいれば安全です」
なども同じ判断になると思います。
逆に「雨が降る時」「雷が鳴る時」は(1)の解釈ではなく(2)の解釈が優先されるのだろうと思います。
「雨が降る時 折り畳み傘を忘れずに持って出かけます」
「雷が鳴る時 空がピカッと光ります」
とりあえず、学習者に対しては、この説明でなんとかなるような気がしますが、この説明が妥当かどうかはもう少し考察が必要かなと思います。
(→次のツリーを参照)
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[194] 「〜時」<もう少し一般化してみると> 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/07/03(Tue) 07:51 <URL>

------<発展1>---------
先の考察では問題の文が「雨〜」ということで自然現象であることに焦点をあててみましたが、この考え方を推し進めると、(前件が自然現象であることも含めて)前件と後件の主体が異なる場合には、実際には二つのことが<同時>であったとしても、前件を<進行している背景>として捉えるのが自然になることが多いと言えるかもしれませんね。
(D)「子供が ?外で遊ぶ時に ◯外で遊んでいる時に 母親は部屋の掃除をする」 
(E)「彼氏がプールで ?泳ぐ時に ◯泳いでいる時に、彼女はプールサイドで日光浴をする」
(F)「一人の人が ?歌う時 ◯歌っている時に 他の人は自分が歌う歌をさがす」
以上の文は「〜テイル時〜スル」という文型の典型である(4)とはちょっと違います。つまり後件の事態は継続している動作でかなり前件の動作の”幅”と一致しているということです。
しかし、主体が異なるということで、主節の動作に対して前件が<背景>の解釈を受けて、『◯◯が〜シテイル間(に)□□は〜スル』のように捉えるのが自然になるのでしょう。
------<発展2>---------
ここまで考えてみて、<主体が異なる>ときには必ず「〜テイル時〜スル」を使うというわけではないということも重要だと思いました。例えば、(F)の場合は「〜テイル時」が自然ですが、下の(G)では「〜スル時」でも問題ありません。
(G)「私が 歌う時には 彼がピアノをひいてくれる」
そすると、(4)の文型を使う場合というのは<前件が後件が起こる”背景”として認識される>場合なのでそのような認識がされる場合を考えると、次の2つにまとめられるでしょう。
***************
(ア)主節(後件)の事態が<点>としてとられられる場合:例文(A)(B)
(イ)主節(後件)の事態は<幅>があるが、前件の事態と”別々の事態”を表していている場合:例文(C)〜(F)
***************
そして、<主体>が異なれば、当然”別々の事態”を表すということが多くなるわけですが、必ずしもそうでないことは(G)をみればわかります。(G)のように主体が違っても”つながりがある事態”の場合には(1)の文型で大丈夫です。
ただし、<主外が異なる>場合のうち、<自然現象>が前件に来る場合は、通常”つながりのある事態”とは認識できないので「〜シテイル時」しか自然にならないのでしょう。しかし、”つながりのある事態”という認識ができれば当然理屈からして可能になるはずです。次の二つの文は「?」かもしれませんが、「雨が降るとき 傘を使う」よりは自然かなと思います。
(H)「雨が降る時 膝などの間接が痛くなる」
(I)「雨が降る時 ◯◯鳥がよく鳴く」(そんな鳥はいるのかな・・・(^^;
そうすると、浅野さんの挙げた例文でも「ご飯を食べる時、お箸を使う」は強く”つながり”を意識する二つの事態ですから「〜スル時」でなければだめですが、「ご飯を食べる時 お茶を飲む」はその意識が幾分弱くなるので、「ご飯を食べている時、お茶を飲む」も(ニュアンスは変わりますが)可能のはずです。
まとめると、<同時>という点では同じように見えることでも、「〜スル時」(1)と「〜シテイル時」(4)のどちらを使うかは話者が事態をどのように捉えているかで決まると言えるのではないかと思います。
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以上、私の考えをまとめてみました。参考になれば幸いです。
<勉強部屋>は決して答えを提供する場ではないので、疑問点があれば遠慮なくお書き込みください。
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