「〜わりには」「〜にしては」 [コメントする]

「〜わりには」「〜にしては」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 00:17:57)

※このスレッドに関連して、勉強部屋の文法考察ファイルにOyanagiが考察したものがアップされています。

「〜にしては」と「〜わりに(は)」の違いを考える


「〜わりには」と「〜にしては」の違い

過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 00:19:12)

[164] わりに・・ 投稿者:M 投稿日:01/06/13(Wed) 19:30

はじめまして 新米日本語教師Mと申します。
いつも勉強させていただいてます。
「〜わりに(は)」と「〜にしては」についてお聞きしたいのです・・。
・新入社員(のわりに/にしては)仕事が速い。
・一流レストラン(のわりに/にしては)まずい。
・元歌手(のわりに/にしては)歌が下手だ。
これらの場合は どちらも使えますが ニュアンスの違いはありますか?
私は・・・「わりに」のほうは 事実(前件)と結果(後件)が不釣合い・・ということに重点があり、「にしては」のほうは その関係を意外に思う!という気持ちが大きいような気がします・・。でも実は実際使うときを考えるとあまり区別してないのですが・・ 
・年齢(のわりに/×にしては)若く見える。
・50歳(×のわりに/のわりには/にしては)若く見える。
・値段(のわりに/×にしては)長持ちする。
・100円(×のわりに/のわりには/にしては)長持ちする。
ここまで考えて 具体的な数かどうかという点で 区別できそうだと気づきました。ただ、「わりには」にすると 前件が具体的な数でも OKということになり、???です・・・。
・彼は忙しいにしては よく手紙をくれます。
これは ある教科書の例文にあったのですが、私は どうも違和感があります。どうでしょうか。前後がないというせいもあるかもしれませんが・・。
・安い(わりに/?にしては) 質がいい。
・彼は慎重(なわりに/?にしては) よく忘れ物をする。
学生に どう説明すればいいか迷っています。皆様はどうお考えでしょうか。
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[166] ただの仮説ですが… 投稿者:きんちょ 投稿日:01/06/13(Wed) 22:45 <URL>

 こんにちは。
 おもしろい問題が提起されているなと おもって、くちをだしてみたくなりました。
 ほかの掲示板でも、こういう連語に「は」が かかわる問題が だされていたようですが、「〜ときは」「〜以上は」「〜からには」「〜わりには」などと、「は」の一般的な性質をしっているだけでは すぐに解決ができない差が「は」の有無がもたらす連語が けっこう ありますね。
 この件については、まったく かんがえたことが なかったのですが、投稿を拝見して 気がついたことは、すべての例文について、「〜わりには」をつかえば自然な文になるということです。ですから、「〜わりには」を基準としてみると、
A「〜わりに」が不成立のものは、「は」が ないことに理由がある
B「〜にしては」が不成立のものは、「わり」が ないことに理由がある
という みとおしをたてて分析してみることが できるのではないでしょうか。すると、
Aについては、具体的な数値がある ばあいが そうらしい
Bについては、形容詞や、程度をあらわす抽象名詞の ばあいが そうらしい
と いえそうです。そうすると、前者については、
 「数値があるときは、『は』が必要だ」
 「形容詞や程度の抽象名詞は『わり』が必要だ」
ということになります。これは、どういうことでしょうか。後者の『わり』が必要だというのを逆にみると、のこりの要素は、「抽象的でない名詞」ということになります。つまり、つぎのような関係が なりたつものが『わり』が不要だ、つまり、「〜にしては」が成立すると いえそうです。
・その人は新入社員にしては仕事が速い。[その人は新入社員だ]
・その店は一流レストランにしては まずい。[その店は一流レストランだ]
・かのじょは元歌手にしては歌が下手だ。[かのじょは元歌手だ]
・かれは、50歳にしては若く見える。[かれは50歳だ]
・このライターは100円にしては長持ちする。[このライターは100円だ]
これらの[  ]のなかにかいたのは、名詞文です。たしかに、形容詞をつかうばあいも、おなじ形式で
・? このライターは安いにしては質がいい。[このライターは安い]
・? 彼は慎重にしてはよく忘れ物をする。[彼は慎重だ]
・? 彼は忙しいにしては よく手紙をくれます。[彼はいそがしい]
のように かきかえられますが、これらは形容詞文になってしまいます。名詞文と形容詞文の ちがいは なんでしょうか。ひとつの ちがいは、形容詞文は一時的な状態をあらわすが、名詞文は かわりにくい属性をあらわすということではないでしょうか。うえの ? をつけた文のうち、[このライターは安い]については、属性に ちかいかもしれませんが、のこりの ふたつ(「慎重だ」「いそがしい」)は、もともと一時的な状態をしめすのに よく つかわれる語です。その分、最初の文に対する許容度が わたしの ばあいは、たかく感じたり するんですが、いかがでしょうか。いずれにせよ、これが 単なる一時的な状態ではないということをしめすために、名詞表現に かえてしまえば、文は かなり安定するわけです。
・ このライターは安ものにしては質がいい。[このライターは安ものだ]
(うしろの ふたつが、そうしても まだ不自然なのは、後件が動詞文であることも関係があるように おもいます。)
 以上のように、「MはNにしては〜」については、[MはNだ]という名詞文が成立することが、その使用の条件だと いったん かんがえてみることが できそうです。
 逆にいうと、「わりに」「わりには」は、それ以外にも[N]が形容詞や、程度をあらわす抽象名詞でも いいわけです。「わかいわりに(は)」も「わかさのわりに(は)」も つかえるということですね。これは、「わり」という ことばに関係していると おもいます。つまり、程度概念と関係するということではないでしょうか。
 そうすると、「は」の有無と数量詞との関係ですが、ここでは、とりあえず、
 「程度概念が ひとつの 価に固定されたものが数値である。固定をともなうので、『は』で限定することが必要だが、そうすると、程度概念でもあり、それが数値で固定されているために[MはNだ]という名詞文の関係でもありうる文をつくることができる。」
と解釈したいと おもいます。そうすることによって、「〜わりには」「〜にしては」が両方とも つかえるといことが説明できるのではないでしょうか。
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[168] とりあえず感想だけですが 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/14(Thu) 18:43 <URL>

Mさん、<勉強部屋>へようこそ。そして、きんちょさん、いつも貴重なコメント有難うございます。
これは今まで考えたことが無かった問題です。Mさんに指摘されてはじめて気がつきました。(^_^;
自分が以前関わった問題集作りでは「年齢のわりに」とか「値段のわりに」という表現を全く考えていなかったことに驚き!(しまった!という気持ちです)
しかも接続する品詞に間違った記載があって、「〜にしては」は形容詞には付きにくいことを見落としていました。(これはすぐに気がついたのですが、あとの祭)
ということで、この二つが言い換えられるのは、名詞と動詞の場合ということになるのですが、その中でも接続する単語に違いがあるのは確かですね。そしてMさんが感じたニュアンスの違いもありますね。さらには、なぜ「〜にしては」は形容詞が付きにくい(付かない)のかという問題。これはかなり「ビリビリ」来る(:刺激的な)問題ですね。
まだ、考え始めたばかりでまとまっていないのですが、きんちょさんとはちょっと違うアプローチで攻めてみようかなと思っています。いつもの手法といえばいつものやつなのですが、それぞれの典型的な使われ方(元々の意味)を考えて、それから両者の接点をみてみようかなと思います。あしたまでには何かいいアイディアが出るのではないかと思います。
他の方からの投稿もお待ちしています。「この参考書にこんな解説があった」という情報もあったらお願いします。
ちなみに私がいつも頼りにしている『NAFL選書 日本語表現文型』(アルク)には「『〜にしては』は形容詞に付きにくいこと、前件と後件の主体が事なる場合には使いにくいこと」などの解説はありましたが、基本的には両者は同じ意味であるとして扱っています。う〜ん、こうなったら自分たちで考えるしかないですね。
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[172] 文法考察ファイルにアップしました 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/15(Fri) 21:18 <URL>

「〜にしては」「〜わりに(は)」について先の投稿で疑問に思ったことをなんとか解消できる説明を考えてみました。
内容は長くなるので掲示板ではなく<文法考察ファイル>にアップしました。どうぞご覧になってください。
(ファイル#41です)
いつものようにひらめきを頼りになんとか理由を考えたという内容なので不備なところがあると思います。遠慮なくご意見をお願いします。
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きんちょさんの仮説にあった例文「このライターは安ものにしては質がいい」についてですが、このように修飾用法にしても形容詞はなお不自然ではないかと思います。それで、なぜ形容詞は「〜にしては」で成立しないのかということを考えてみましたので、そのへんはぜひきんちょさんからコメントをいただきたいと思います。
------
Mさんの元記事の中で、「〜にしては」と「〜わりに(は)」のニュアンスの違い、接続する品詞の制限などがなぜ生まれるのかを私なりにまとめてみましたが、「は」が付く場合と付かない場合との違いまで考察が及びませんでした。今後いただいたコメントを参考にさらに考えてみたいと思います。
(とにかく刺激的な質問をどうもありがとうございました)
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[176] Re: 文法考察ファイルにアップしました 投稿者:M 投稿日:01/06/18(Mon) 16:49

文法考察ファイルをよませていただいていて ふと立ち止まった例文について質問します。
・勉強しなかった(にしては/わりには)テストでいい点がとれた。
この行為の主体は 自分でしょうか?
?(私は昨日)「勉強しなかった(にしては/わりに)テストでいい点がとれた。」
・・・・とすると違和感があります・・。一文だけを見ると。
少し広げて・・
母:昨日のテストはどうだったの?
息子:良かったよ!
母:・・・えー・・本当?
息子:ああ、勉強しなかった(にしては/わりに)いい点だった!
母:・・・・。
とすると OKですよね・・^^;
また
?(あなたは昨日勉強しなかったそうだけど)
   「勉強しなかった(にしては/わりには)テストはいい点ですよ」
というのも 問題なしですよね・・?基準・典型からずれている!!と対象を評価・批判する・・という意味合いの他の例文と同様ですし・・。?の一文だけを見ると 少し異質に感じました。
何を隠そう私は授業で「自分自身のことには使いません!」と言い切ってしまったことがあり・・・・。上の?の例文はまちがい!ということにしてました・・。そのあと?のシチュエーションなら・・・!ということに気づき・・そして考えれば考えるほど自分の語感に自信が持てなくなってきましたが・・。
あと、基準・典型からずれている・・というのが「にしては/わりには」であり
逆に 基準・典型とちょうど合っている 相応している・・という意味のものは
・安い(   )質が悪い。
・元アナウンサー(   )話が上手だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・「だけに」・・ですよね。
実際 よくできる学生からこの質問がありました。
でも すべて逆の意味にして「だけに」が使えるかというとそうでもないようです・・。
少し話がずれてしまいますが・・・。どうお考えでしょうか・・?
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[177] 補足&新たな疑問「にしては」 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/19(Tue) 09:04 <URL>

Mさん、こんにちは。
文法考察ファイルをお読みいただいて、有難うございます。
1点だけ確認しておきます。
あの考察では「基準」と「典型」とはことなる概念で使っています。書き方が悪くて両者が同じものであるかのような印象を与えるかもしれませんが、「典型」の概念が「〜にしては」の中心的な意味であることがあの考察の鍵になっているので、ここで補足説明しておきます。
-------
「基準」は2つのものを”比較する”うえで必要なもので、「〜としては」(「〜にしては」ではありません)で話者が頭の中でイメージしているものです。
「典型」というのは『それらしさ」です。『その言葉から連想される様々の事がらすべてを含みます」。もちろん「基準」は「典型」のイメージづくりのコアになる部分であると思いますが、微妙に異なります。
「基準」はかなり客観的な判断として使われて、どんなに●●であってもそれは<それを含むグループの一員であるという認識>が可能ですが、「典型」という概念は『それらしさ』の概念ですから、それからはずれればはずれるほど●●ではないという判断に傾きます。ここがまさに「〜にしては」のモダリティの特徴です。
「わりに(は)」というのは「〜としては」とは異なるものの、Xという『割合』に対してYの『割合』を比較するという概念ですから、「典型」という概念ではなく、むしろ「基準」があって、それ対してXという『割合』を考えると、Yはどうなのかという判断になっていると思います。
-----
そうすると、「わりに(は)」は自分のことであれ、他者のことであれ、比較できる対象であれば使うことができますが、「〜にしては」は自分のことについて「典型」とずれているかどうかという判断がしにくいと言えるかもしれません。
> 何を隠そう私は授業で「自分自身のことには使いません!」と言い切ってしまったことがあり・・・・。上の?の例文はまちがい!ということにしてました・・。そのあと?のシチュエーションなら・・・!ということに気づき・・そして考えれば考えるほど自分の語感に自信が持てなくなってきましたが・・。
このような見方をしたことがなかったので、なんとも言えませんが、次の文が、<自分のことでありながら”外から”自分のことを判断しているような印象>がありませんか?
「私にしてはよくやったと思う」
つまり、「私らしさ」が出ればもっと悪い結果が出ていたはずだが、実際は「私らしくない」よい結果が出たという判断ですよね。
おそらく、”自分自身のことについて、典型にはまっているかはずれているか”という判断が日本語ではしにくいのだと思います。
自分がしたことについて、
「私らしいでしょう」のような言い方にも同じ様な印象を受けます。
他人がしたことについて、
「あつらしいね」という自然な文と比較すると何か”本来は使わない自分自身についてわざと使って表現効果を出している”ような気がします。
(というと言い過ぎかもしれませんが)
同じことが「〜にしても」にも言えるのかもしれませんね。
----
ということで、あくまでも「〜にしては」と「典型」を結びつけるという前提で考えてみましたが、正直いって自信はありません。
「典型」をイメージするときには、自分自身のことは言わないなんていう解説を読んだこともないですから、間違っている可能性大ですね。
ただ、考察でも触れたように「〜にしては」の意味構造には『どうも/まるで・・・のようだ」の2つがあるとにらんでいますから、
『どうも・・・』の推量のほうは次の文のように自分のことでもそんなに不自然にはならず、
「かぜにしては、熱もないし、喉もいたくないし・・・
 (どうもかぜではないようだ)」
『まるで・・・』の比况のほうは他者について述べるのが自然になるという見方もできるかなと思いました。
また新たな疑問ですね。(^_^;
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[183] あれ? 投稿者:きんちょ 投稿日:01/06/20(Wed) 21:48 <URL>

 すみません。ちょっと いそがしくて、アップして いただいた考察も まともに よんでいないのですが、…
> きんちょさんの仮説にあった例文「このライターは安ものにしては
> 質がいい」についてですが、このように修飾用法にしても形容詞は
> なお不自然ではないかと思います。
 あれ?! っと おもって もう一度、自分のかいたものをよんで
みたんですが、わたしは、
・? このライターは安いにしては質がいい。[このライターは安い]
については「許容度が わたしの ばあいは、たかく感じたり する」
とは いったものの、「?」をつけているように、けっして すわりが
いいとは おもっていないんですよ。そして、Oyanagiさんが引用され
た文というのは、
・ このライターは安ものにしては質がいい。[このライターは安ものだ]
なんですが、「安もの」は「やすもの」と よむ つもりで かいて
います。「安物」と かくべきだったかもしれませんが、まさか
これが「やすいにしては」とは よめないだろうと おもうんですね。
「考察」のほうをみても、Oyanagiさん、なにか錯覚しながら わたしの
かいた文を引用されたんじゃないかと おもうんですが、ちがいますで
しょうか。
(そうだとしても、全然、気にしていませんので、念のため。これは
 確認のための投稿です。)
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[184] きんちょさん、失礼しました 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/20(Wed) 23:18 <URL>

きんちょさん、どうもすみませんでした。
指摘されて、よ〜く見たら「安もの」ですよね。自分で引用までしておいて気がつかないなんて。きっとそう思い込んでいたんですね。
どうも失礼しました。
ということは私が「安物にしては」にしないと落ち着かないと思ったことをきんちょさんは最初の投稿で指摘されていたということですね。
見間違いとはいえ、それを考察の疑問点にまでしてしまって全くお詫びのしようもございません。
さっそく考察ファイルのほうは訂正しておきます。
以後気をつけます。
改めて、考察について何かコメントがありましたらよろしくお願いいたします。
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[185] 訂正、確認しました 投稿者:きんちょ 投稿日:01/06/21(Thu) 16:43 <URL>

訂正、確認しました。
「訂正前」と「訂正後」を両方のこしておくなんて、てがたいですね。
こっそり なおしておいてくれても よかったのに。
それはともかく、ありがとうございました。
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[187] <基準>と<典型> 投稿者:きんちょ 投稿日:01/06/21(Thu) 17:25 <URL>

 考察、拝見しました。
 わたしの投稿と ひきあわせてみると、

|           程度概念 − <基準>
| [MはNだ]という名詞文の関係 − <典型>

というふうな構想で まとめられたようですね。
 わたしは、「数値」というのは、この両者が かさなりあうところに
あるんじゃないかと おもったわけですが、<基準>でもあり<典型>
でもあると いうことは、ありうるのでしょうか? 
 いや、たぶん、どちらでも ありうるというのは おかしいので、
つぎのように なるのでしょうね。(わたしは動詞のばあいをかんがえて
いなかったので、これをくわえて修正しました。)
|    |
|    |程度概念 [MはNだ]
|    |     という規定 
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|抽象名詞| ○     ×    ⇒ <基準>  わりに
|・形容詞|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|数字  | ○     ○    ⇒ <基準>  わりには
| ・動詞|            ⇒ <典型> にしては
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|属性名詞| ×     ○    ⇒ <典型> にしては
|    |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
「は」の有無については、この整理では すこし乱暴すぎるところが
あると おもうので、もうちょっと検討が必要かもしれません。
------------------------------------------------------------------------
[188] Re: <基準>と<典型> 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/22(Fri) 09:23 <URL>

きんちょさん、コメントありがとうございます。

>  わたしの投稿と ひきあわせてみると、
> |
> |           程度概念 − <基準>
> | [MはNだ]という名詞文の関係 − <典型>
> |
> というふうな構想で まとめられたようですね。
なるほど。そのように結び付けることもできそうですね。
後できんちょさんが動詞について考察されていることと関係しますが、
認知言語学では<典型>というとまず名詞について解説されてます。
ですから、動詞文の場合もそのような動作/現象の主体(=名詞)について<典型>というイメージを描いていると言えるかもしれません。
それが形容詞になると純粋に<程度>概念となって、<典型>という視点では捉えにくいと言えるでしょうか。

>  わたしは、「数値」というのは、この両者が かさなりあうところに
> あるんじゃないかと おもったわけですが、<基準>でもあり<典型>
> でもあると いうことは、ありうるのでしょうか? 
>
>  いや、たぶん、どちらでも ありうるというのは おかしいので、
> つぎのように なるのでしょうね。
<基準>と<典型>は別次元の概念だと思います。強いて繋がりをさがせば、<典型>としてイメージされるものが何かを判断する際に<基準>として”使われる”ことはあると思います。
考察でも触れましたが、<標準>という概念は<典型>と重なる部分があると思います。
>(わたしは動詞のばあいをかんがえて
> いなかったので、これをくわえて修正しました。)
>
> |    |
> |    |程度概念 [MはNだ]
> |    |     という規定 
> |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
> |抽象名詞| ○     ×    ⇒ <基準>  わりに
> |・形容詞|
> |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
> |数字  | ○     ○    ⇒ <基準>  わりには
> | ・動詞|            ⇒ <典型> にしては
> |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
> |属性名詞| ×     ○    ⇒ <典型> にしては
> |    |
> |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
一番下の『属性名詞』で「わりに(は)」が使えないというのはどのような場合のことを指すのでしょうか。
-----(まとめ)-----
きんちょさんのコメントを私なりにまとめると、
「〜にしては」が<典型>という概念によって判断する表現形式であるとしたら、<典型>が容易にイメージできるものがまさに【MはNだ】という名詞(文)になっているものであり、動詞(文)がその周辺に位置している。ところが、形容詞(文)は<程度概念>であるためその対極に位置しているために、「〜にしては」が使えない。
--------------------
それにしても、元記事にあったように教科書に「忙しいにしては」という文があったということですから、どう扱ったらいいでしょう?
これが許容されると判断したからこそ教科書に登場したはずですよね。
私たちの仮説が正しいとしたら、おそらく形容詞の中でも「忙しい」は主体(=人)の動作(=せわしなく動いている)をイメージするために<動詞>に接近しているからかもしれません。
その点、「高い」「広い」のような属性形容詞とは異なると言えるでしょうか。
そうすると主体(=人)の動的なものをイメージできる形容詞、つまり感情形容詞などは「〜にしては」を使えると言えるますかね?
「痛いにしては、顔の表情が全然変わらないね」
なんかいかがなもんでしょう?
もちろん不自然さはありますが、「忙しいにしては」を許容する人にとってはこれもOKなのかも、と思いました。
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[189] Re【修正】: <基準>と<典型> 投稿者:きんちょ 投稿日:01/06/22(Fri) 23:28 <URL>

 Oyanagiさん、こんばんは。
> 一番下の『属性名詞』で「わりに(は)」が使えないと
> いうのはどのような場合のことを指すのでしょうか。
実は、「新入社員」とか「一流レストラン」などの属性をあらわす名詞でも「わりに(は)」が つかえるということをうっかりしていました。そうすると、もとから修正しないと いけないようです。しかし、いまになって かんがえると、これらが「わりに(は)」と関係するのは、「新入」であるとか「一流」であるとかの意味内容であって、単に「? 社員のわりには」「? レストランのわりには」とは つかいにくいし、より明確なケースをしめせば、固有名詞で、「*山田さんのわりには」は無理であって「山田さんにしては」と いわなければなりません。そこで、この部分をふくめて、No.187の 最初のところから以下のように かきかえてみてはどうかと おもいます。
 最初の わたしの投稿との ひきあわせは、

|           程度概念 − <基準>

| [MはNだ]という名詞文の関係 − 性質規定→<基準> または、
|                  対象同定→<典型>

というふうに かきなおしてみたいと おもいます。
|    |
|    |程度概念 [MはNだ]
|    |     という規定 
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|抽象名詞| ○     ×    ⇒ <基準>  わりに(は)
|・形容詞|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|数値  | △     △    ⇒ <基準>  わりには
|   [固定を伴う][性質規定なし] ⇒ <典型> にしては
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|属性名詞| ×     ○    ⇒ <基準>  わりに(は)
| ・動詞|            ⇒ <典型> にしては
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
|固有名詞| ×     ○    ⇒ <典型> にしては
|    |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
程度概念からは<基準>が、[MはNだ]という規定からは、その性質規定から<基準>、対象同定から<典型>も みいだせるという前提にたち、「数値」のばあいの特殊性をかんがえてみます。
 「数値」は、程度概念でもあり、[MはNだ]という規定でもあります。
 しかし、「数値」は程度概念としては限定をうけているので、「は」をともなってのみ<基準>をみいだすことが できます。そこで、「〜のわりには」が対応します。同時に「数値」は、[MはNだ]という規定としては性質規定を捨象されているので、そこから<基準>をみいだすことができず、<典型>のみが みいだされます。そこで「にしては」が対応します。
 ・身長が150センチ{のわりには/にしては}けっこう体重が ある。
という文では、「身長150センチ」は、その程度が固定されてしまっているので「は」による限定をうけているときだけ、それが 程度概念であったものが固定されて このように表現されたのだという解釈をうけられ、「身長150センチ」を規定概念として みるには、身長以外の性質規定が捨象されているので<基準>をみちびくことが むずかしい(が、ほかと区別するうえでの同定があるので<典型>なら可能)……
と、いうようなことが いえないかと おもうわけです。
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[190] 文法の切り口 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/25(Mon) 03:46 <URL>

すみません、レスが遅くなりました。
私は「〜にしては」がなぜ形容詞につかないのかということ考えてみて、<基準>と<典型>という切り口を思いついたのですが、きんちょさんがさらに詳しく考察されているように、同じ名詞という品詞でもこの切り口で「〜わりに(は)」が使いにくかったりするものがあるようですね。
そこまでは考えていなかったので貴重なコメントに感激しております。
とにかく、この<基準>と<典型>でどうやら説明できそうだと言えそうで、ほっとしています。
固有名詞のことについてのコメントを読んでいて、ますますそれを確信しました。固有名詞はまさに<典型>のイメージとして「◯◯さんらしさ」と結び付くもので、固有名詞は”固有”であるがために<基準>という概念とは結び付きようがないと言えるでしょうか。
「わりに」に「は」が付くかどうかというところにまで考察が及び、なるほどと思うところがありますが、この部分についてはまだわたしの中では十分に理解ができていません。
もう少し考えてみます。
それにしても、このような切り口で品詞を検討してみること、そして名詞をさらに分類してみるといういままでは気がつかなかったことがわかったのは収穫でした。
ということで、まだ完全解決とはいきませんが、かなり有意義な考察ができたのではないかと思っています。
疑問を提起してくれたMさん、そして貴重なコメントをくださったきんちょさん、本当に有難うございました。
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