「〜んです」「〜のです」 [コメントする]

「〜んです」「〜のです」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/13 23:42:49)

※このスレッドは、勉強部屋の文法考察ファイルにOyanagiが考察したものがアップしてあります。

「〜のです」の統一的解釈を試みる


「〜んです」はどんな時に使う?

過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/13 23:44:18)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[40] 「〜んです 」について 投稿者:たま 投稿日:01/02/03(Sat) 10:26

学生から 「どうして日本語を勉強しているんですか?」の答えとして
「日本にいるんです。」と答えるとどうして変なのか?と聞かれました。
彼女の弁では「日本に居なかったら日本語は勉強していないから理由としてこれを言いたいとのこと・・。」 「日本にいるからなんです。」なら良いですよと言ったものの・・ちょっと考えてしまいました。
「んです」は本来感情を込めて言うときに使うものですが 「どうして?」に対しては 「んです。」で答えるような単純練習をしていたのかもしれないと反省しました。
この学生のどうやって解説してあげれば納得してくれるのか、教えて下さい。そして効果的な「んです」の導入方法と練習方法そして 自分自身がもう一度きちんと理解するために 参考文献などあったら教えて下さい。
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[43] Re: 「〜んです 」について 投稿者:きんちょ 投稿日:01/02/04(Sun) 10:14 <URL>

 「〜んです」は たしかに理由を説明するときに つかいますよね。
 ただ、一般的には「〜んです」の「〜」の部分は新情報をうけると いわれ
ています。(野田春美『「の(だ)」の機能』など)
 このばあいは、「日本にいる」ということが、質問している あいてに とっても、はじめから わかっていることなので、あらためて<説明>する必要のないことであることがポイントでしょう。
 もうすこし くわしく いうと、「〜んです」では、「〜」の部分が ふつうは ことばになっていない<共通情報>に対する<説明>になる、というのが基本の用法です。よく教科書にある
 「どうしたんですか」 −−  「おなかが いたいんです」
という会話でも、『様子がおかしい』というのが<共通情報>で、「おなかがいたい」は新情報による<説明>だと いうわけです。
 もちろん、実際には「〜」の部分が新情報でないばあいも あります。そういうときには、「なんで こんなことをあらためて説明しなけりゃいけないんだ。おまえも わかっていることじゃないか」という気もちが こもってしまいまいす。「〜んですから」が感情的になるのは、そのせいです。(「〜んです」じたいが感情的だとは いえないと おもいます。)今回の例でも、「私は日本にいるんですよ」と回答すれば、かなり すごんでいることに なりますよね。このばあいは、本来、新情報をあたえるときに つかう『よ』を「〜んです」に かさねることで、非文になるのを回避して特殊な解釈を要求したものだと みられるでしょう。
 また、<説明>“される”べきことがらが、実際には<共通情報>に なっていないことも あります。「〜んですが、…」という形式で依頼をするときなどは、実際には新情報かもしれないことを<共通情報>のように あつかって『わたしは こまっている』ということを了解させたうえで 依頼をするという、「〜んです」の性質を逆用した<まえおき>の効果をねらったものだと解釈が可能です。
 いずれにしても「〜んです」は談話の構造と心理に かかわるので、適切につかわないと、おもわぬ誤解をまねきますよね。しかも、構文としては ありうる かたちで あるだけに、それが気づかれにくい。やっかいな項目ではあります。それだけに研究のしがいも あるんですが。
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[47] Re^2: 「〜んです 」について 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/02/05(Mon) 18:59 <URL>

きんちょさん、的を射た解説ありがとうございます。きっとたまさんも納得されていることと思います。
私からは情報の提供とちょっと補充をしたいと思います。
きんちょさんはもちろんご存じだと思いますが、「〜んです」については過去にアルクの掲示板で話題になりかなりの投稿が寄せられました。きんちょさんも私も参加しましたが、そこに参考図書を挙げた投稿もありますので、たまさんもぜひご覧になってください。話題は今回の件とは直接関係はありませんが、「〜んです」についていろいろ勉強になると思います。
※アルクの過去ログは拙HPで公開している<文法情報リンク集>からジャンプすることができます。分類項目の<モダリティ>に「〜んです」が入っています。どうぞご利用ください。
さて、問題の「日本にいるんです」についてですが、これがなぜ不自然になるかはきんちょさんが指摘されたように「〜のです」は設定された課題(=既知)に対して未知の情報を提供するためだということだと思います。そこで、ちょっと補充のために例文を挙げておきます。
「いるんです」が自然になる文を考えると、
(1)(恋人同士の会話)
   「日曜日に、うちに行ってもいい」
   「だめだよ、日曜は親父がいるんだ(よ)」
のように、やっぱり「〜んだ」が相手にとっては未知の情報でないとだめですね。それでは現に今の情況の場合はどうでしょうか。
(2)「どうして、こっちの道を通らないんですか」
   「だって、こっちには大きな犬がいるんだ(よ)」
のように、やっぱり今の情況でも相手にとっては未知の情報ですね。
未知の情報だから親しい者同士なら「〜よ」が付くともっと自然になりますね。きんちょさんが指摘されたように、「日本にいるんです」は明らかに相手にとって既知の情報の提示になっているので話者の意図する意味にはなりませんね。理解を助けるためにわざと下品なことばで意図するところを補充してみました。
(3)「どうしてお腹が痛くなったんですか」
   「(わからんのか、ボケ!)
    こんなにご飯を食べたんだよ/ぞ」(既知情報の提示)
    比較「お昼ご飯を食べすぎたんです」(未知情報の提示)
   「どうして日本語を勉強するんですか」
   「(どうしてって、おめぇ、変なこと聞くね。わしは)
    今日本にいるんだよ。
    (日本にいれば当然日本語を勉強したくなるだろ!)(既知情報の提示)
    比較「日本の大学に進学したいんです」(未知情報の提示)
ということで、明らかに相手にとって既知であることを提示する場合には、たまさんが書かれたように「〜から(です)」か、<当然>という意味を出したければ、「〜んだから、・・・」でもいいと思います。
指導する際には「どうして〜んですか」に対しては相手が知らない情報を提示すると指導すればいいのではないでしょうか。
以上、情報提供と補充をさせていただきました。
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[48] Re^3: 「〜んです 」について 投稿者:たま 投稿日:01/02/05(Mon) 19:16

> きんちょさん、Oyanagi管理人様、よ〜く、よ〜く分かりました!!
なるほど頭の中がすっきりした気分です。 「「んです」は理由を表す機能はない、ただ感情を込めるもの。」と言う説をおっしゃる先生も居られるのですが これは???ですね。」大先生の弁だったので私も混乱してしまったようです。 有り難うございました。  きんちょさんとoyanagi管理人の解説をもう一度しっかり読んで頭の中の引き出しに整理します!
この掲示板を私の宝物にさせていただきます!!! これからもお世話になりま〜す。
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[49] 「〜んです」って何だろう? 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/02/05(Mon) 19:17 <URL>

皆さん、こんにちは。<勉強部屋>の主のoyanagiです。
以前、「〜んです」についてアルクの掲示板でのやりとりがあったときに「〜んです」の基本的な用法はなんだろうと一度考えてみたのですが、途中でやめていました。
アルクの掲示板ではけっこう偉そうなこと書いたのですが、実はあまりよく分かっていなかったのです(^^;
今回たまさん、きんちょさんから「〜んです」の投稿があって、またムラムラ(?)とやる気が起きました。それでなんとかまとめてみました。なにしろ、「〜んです」をなんとか統一的に説明したいというのは長年の夢でしたからね。とりあえず終わってほっとしています。
「〜んです」の基本的な用法は何だろうと気になっている方はぜひご覧になってください。そしてビシビシご意見をお願いします。
ちなみに今回の目玉は「さあ早く行くんだ」のような<命令>とされる用法もなんとか統一的に扱えないかという無謀とも思える試みをしていることです。今回も『力技で一本!』といきたいところなんですが・・・。
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[51] Re: 「〜んです」って何だろう? 投稿者:きんちょ 投稿日:01/02/06(Tue) 16:54 <URL>

 拝読しました。
 みんなが、なんとなくでも おもっていたり、指摘したり してきたことを
うまく ひとつの すじにそって まとめられたものだと 感心もし、びっくりも しました。
 最初の 分類と談話の構造づけが 説明の展開を すべてをきめているように おもったんですが、ふだんから かんがえつづけていたことだからこそ、このように整理できたのでしょうね。
 で、その最初の談話の構造を説明しているところなんですが、ここが 過不足なくいくか、というところが本当の勝負だと おもうんですね。いまは、できあがったものをみて みとれているところなので、もうすこし たってから、またコメントさせていただくかもしれません。まえにアルクの掲示板で紹介した、『日本語教育』91号の論文も、「もうひとつの現実」というタームで 統一的な説明をこころみていますが、それよりはスケールも おおきいし、ごまかされたような気が しない分だけ 説得力があるように感じました。結局、あの論文にしても、なにをもって「もうひとつの現実」と いうのか、ということをつきつめていくと、認知の問題に はいっていかざるをえないんですよね。「眼前の(認知されている)現実」とは ちがう「もうひとつ」という いいかたと、Oyanagiさんの「談話を完成する作業」は どこかで 通じているのかもしれません。欲をいわせてもらえば、「〜んです」が つかえないと されているばあいの説明にも のりだして もらえないものかと、ついつい期待してしまいます。
 ところで、「どうしたんですか」というのは、不思議な いいかたですね。いったい主語は なんなんでしょうか。ある教科書には「どうか なさいましたか」というのも でてきますが、尊敬語をつかう あいての行動を たずねているようには おもえないことが おおいです。
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[54] 「もうひとつの現実」は何か? 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/02/07(Wed) 11:36 <URL>

きんちょさん、コメントありがとうございます。

>で、その最初の談話の構造を説明しているところなんですが、ここが 過不足なくいくか、というところが本当の勝負だと おもうんですね。
その通りだと思います。
>まえにアルクの掲示板で紹介した、『日本語教育』91号の論文も、「もうひとつの現実」というタームで 統一的な説明をこころみていますが、それよりはスケールも おおきいし、ごまかされたような気が しない分だけ 説得力があるように感じました。
ありがとうございます。
実は紹介いただいた論文のことはすっかり忘れていて、このコメントで思い出して、探してみたところ運よく手元にその号があったので、さっと目を通してみました。
「もうひとつの現実」というタームは(論文の「おわりに」に書かれている内容から察すると)確かに私の考察に通じるところがあるようです。ただ、私の談話の展開という視点から言えば、「共有を目指す(=確定されるべき)現実」となるでしょうか。
>結局、あの論文にしても、なにをもって「もうひとつの現実」と いうのか、ということをつきつめていくと、認知の問題に はいっていかざるをえないんですよね。「眼前の(認知されている)現実」とは ちがう「もうひとつ」という いいかたと、Oyanagiさんの「談話を完成する作業」は どこかで 通じているのかもしれません。
「もうひとつの現実」というのは「外界にある客観的な現実」に対して「(個人の)認知レベルの現実」となると思います。つまり、言語という認知的な作業によって切り取られた「現実」というのがあると考えます。
形式が異なれば意味も異なるというのはこの二つのレベルの「現実」があるからだと思われます。
それは日本語に限ったことではないのですが、日本語はこの二つの違いをかなりシビアに意識していると思うのです。例の論文はその意味では私の考察につながるものがありますが、やはりポイントは<談話>レベルでの考察ではないかと思います。
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[55] 「〜んです」の今後 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/02/07(Wed) 11:38 <URL>

考察でも触れましたが、日本人は談話を展開する上で両者が情報を共有しあえたという『確認』を重視します。だからそれをマークする文法が存在しますが、もう少し視野を広げると、「〜た」がもつ機能も関係してくると思っています。<過去><完了>ということは確定したことになり、お互いに『確認』できる状態にあるわけです。だからそこから<モダリティ>につながるのではないかという気がします。だから、日本語にとって「タ形」というのは非常に重要な存在だと思います。
さらに、一度『確認』されれば、それは次の流れである『当然こうなる』という発想につながるのではと思います。日本語には「〜からには/〜以上」や「〜んだから」、「〜のに」のように『確定(=確認)』したことを受けて使われる表現が豊富なように思えます。(「〜だけあって」「〜だけに」なんて本当に良く聞きます)
また、いわゆる主観形容詞は「山田さんは悲しい」と言えません。相手の心中までは分からないのは人間ならだれで同じですが、日本語は英語などとちがって非常に「認知レベルの現実」にシビアですから、こののうな内面のことは「言えない」ということになってしまうのだと思います。
などなど、いろいろと思いつくことはあるのですが、どの程度掘り下げられるか???
さらに欲張って、日本語の「ナル言語」(英語などの「スル言語」に対する)概念とも結び付けようともくろんでいます。
※実は『動詞意味論』(影山太郎 くろしお出版)を読んで、この二つの概念に新たな統一的な解釈が試みられているのに刺激されただけなのですが(^_^;
>欲をいわせてもらえば、「〜んです」が つかえないと されているばあいの説明にも のりだして もらえないものかと、ついつい期待してしまいます。
これから例の論文をじっくり読んで、その辺も統一的に説明できないか考えてみます。面白いなと感じていることは、別なところで紹介しましたが、<無助詞の談話機能>というものを考えたときに、やはり談話というのはなかなかの曲者だということです。ですから、認知的な視点と談話の視点の両輪でさらに進んで行こうと思っています。
また考察をアップしましたらコメントのほうお願いします。
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