peachtree さんのコメント
(2005/11/08 00:44:12)
「これはいつ買った牛乳ですか。」と「この牛乳はいつ買いましたか。」の違いはなんでしょうか。
先日質問されて、答えられませんでした。
文型の違いが意味すること
Oyanagi さんのコメント
(2005/11/13 01:51:31)
peachtreeさん、ようこそ勉強部屋へ。管理人のoyanagiです。文型が違うと言ってしまえば、それでおしまいですが、おそらくご質問は、意味が違うのか、使われる場面に違いがあるのかということだろうと思います。以下に私の考えたことを書きますので、参考になさってください。
「これ・それ・あれ」と「この・その・あの」という指示語が使われている場合、ご質問のように二つの文型があります。
考えやすいように、疑問文ではなく、平叙文にしておきます。
(1)【これ】は きのう買った【牛乳】です。
(2)【この牛乳】はきのう買いました。
また、話題が「牛乳」であることがお互いに了解されていれば、次のような文もあります。
(3)【これ】は きのう買いました。
さらに、冗長な印象を与えますが、名詞を繰り返すことも可能でしょう。
(4)【この牛乳】はきのう買った【牛乳】です。
この4つを、文型の違いでまとめて示すと、次の二つになります。
(A):(1)(4)【これ/この牛乳】は きのう買った【牛乳】です。
(B):(2)(3)【これ/この牛乳】は きのう買いました。
AとBは、どちらも
★【これ/この牛乳】を話題として取り立てて
★「きのう この牛乳を 買いました」という情報を伝えています。
違うのは、その伝え方です。
(A):名詞文で伝える
<【これ/この●●】は何か/どんな●●か>という見方で組み立てられた文です。
(B):動詞文で伝える
<【これ/この●●】について言えば、・・・ました>という見方で組み立てられた文です。
(A)は、名詞文でその名詞を修飾するものが付きます。ご質問の文以外にも次のようなバリエーションがあります。
(A)のバリエーション
1)物 :<【これ/この●●】は 何か/どんな●●か>という見方
→これは・・・・【物】です。
2)人 :<【この人】は だれか/どんな人か>という見方
→この人は・・・【人】です。
3)場所:<【ここ/この場所】は どこか/どんな場所か>という見方
→ここは・・・・【場所】です。
一方(B)は、「【これ/この●●】を ・・・ました」という基本文から、
【これ/この●●】を話題して取り立てて組み立てられた文です。
この伝え方の違いは何を意味しているでしょうか。
伝え方が違うということは、その伝え方がより自然になる場面というのがあるのだろうと思います。
「これは いつ買った牛乳ですか」と「この牛乳はいつ買いましたか」のような疑問文になると、その違いは目立ちませんが、質問に対する答えや自分から話題と取り立てて話す場合には、その違いがある程度見て取れると思います。
★(A)は、その対象がどのようなものかを述べるスタイルで、
★(B)は、基本文の構成要素を話題として取り立てて、それについて述べるスタイルです。
<場面1>
山田「この写真、きれいに取れていますね」
佐藤「あ、この写真ですか。これは/この写真は・・・・・」
この場面で、(A)と(B)のどちらのほうが“より自然”かを考えると、(A)ではないでしょうか。
(A)佐藤「あ、この写真ですか。これ/この写真は、去年山に登ったときに撮った写真です」
(B)佐藤「あ、この写真ですか。これ/この写真は、去年山に登ったときに撮りました」
もちろん(B)の文末を「〜んです(よ)」にすれば、(A)と同じ程度に自然になりますが、いずれにせよ、必ずAを使わなければいけないとか、Bは不自然だと言い切るほどのものではありません。
<場面2>
山田「この写真も、今年撮ったんですか」
佐藤「いいえ、これは/この写真は・・・・」
この場面では、(A)も(B)も自然に使えると思います。
(A)佐藤「いいえ、これは/この写真は去年撮った写真です」
(B)佐藤「いいえ、これは/この写真は去年撮りました」
しかし、取り立てるものが「物」ではなく、ほかのバリエーション(「人」や「場所」)になると、(A)と(B)の文型が表す内容自体が少しずれてくる場合があります。
(A)のバリエーション 2)と、それに対応する(B)の文型
↓「その人は だれか/どんな人か」という見方
(A) 【その人】は 去年の同窓会で会った【人】です。
(B) 【その人】は 去年の同窓会で会いました。※意味が不明瞭
【その人】には 去年の同窓会で会いました。※Aとは意味がずれている。
↑【その人】を話題として取り立てる
基本文:去年の同窓会で【その人】に会いました。
(A)のバリエーション 3)と、それに対応する(B)の文型
↓「ここ/この店は どこか/どんな店か」という見方
(A) 【そこ/その店】は きのう友達と行った【店】です。
(B) 【そこ/その店】は きのう友達と行きました。
【そこ/その店】には きのう友達と行きました。※意味がずれている
↑
【そこ/その店】を話題として取り立てる
基本文:きのう友達と【そこ/その店】に行きました。
↓「ここ/この店は どこか/どんな店か」という見方
(A) 【そこ/その店】は きのう友達と会った【店】です。
(B) 【そこ/その店】は きのう友達と会いました。※不自然
【そこ/その店】では きのう友達と会いました。※Aとは意味がずれている
↑
【そこ/その店】を話題として取り立てる
基本文:きのう二人で【そこ/その店】で会いました。
■結論
「これはいつ買った牛乳ですか」も「この牛乳はいつ買いましたか」も聞きたい情報は同じですが、聞き方が違います。
前者は「これはどんな牛乳か」という聞き方で、
後者は「この牛乳はどうしたのか」という聞き方です。
このような他動詞の目的語を主題として取り立てる場合には、“結果的に”聞く内容は同じになり、単に聞き方が違うだけで、どちらか一方を使わないと文が不自然になるということはありませんが、文型が違うために、その他のバリエーションの場合には、その文型の特徴が表れて、違いがはっきり出ることがあります。
■蛇足(形容詞が使われる文)
ご質問の文は、動詞文、動詞文が連体修飾節になっている文でしたが、これが形容詞文、形容詞が連体修飾する文を観察してみると、動詞の場合と重なる部分があるものの、もう少し違いがはっきりしています。並行して考えてみるといいのではないかと思います。
形容詞が使われている文も下のようにAとBの文型が可能ですが、疑問文の答え方は、疑問文の文型に合わせるほうがより自然になるようです。
(A)【これ/この本】は 面白い【本】です。
(B)【これ/この本】は 面白いです。
通常、「〜は<どんな>○○ですか」という質問には、「<形容詞>○○です」と答えるほうが「<形容詞>です」と答えるより自然ですが、主題の部分(〜は〜)を省略せずに、明示すれば、不自然さは減ります。
例「あの方はどんな方ですか」
「(あの方は)とても面白い方ですよ」
△「あの方はとても面白いですよ」
?「とても面白いですよ」
例「そこはどんなところですか」
○「静かなところですよ」
△「そこは静かですよ」
?「静かですよ」
一方、「〜は<どうですか>」という質問には、「<形容詞>です」と答えるほうが「<形容詞>○○です」より自然に感じるようですが、上の例ほどの差はないかもしれません。主題の部分(〜は〜)を省略せずに、明示すれば、不自然だと感じる人はもっと少なくなるでしょう。
※これは私の語感ですが、人によって差があると思います。ただ、疑問文と同じ文型で答えるのが一番自然だと感じるのは共通していると思います。
【指示語が入っている場合=対象が特定されるもの】
例「(先月買った)そのステレオはどうですか」
「(これは/このステレオは)とてもいいですよ」
「これはとてもいいステレオですよ」
△「とてもいいステレオですよ」
例「(引っ越して1カ月になますけど)
このアパートはどうですか」
「(ここは/このアパートは)いいですよ」
「ここはいいアパートですよ」
△「いいアパートですよ」
【指示語が入らない場合】
指示語が入らない場合は、「<形容詞>○○です」は不自然になります。
例「日本の映画はどうですか」
「(日本の映画は)面白いですよ」
?「日本の映画は面白い映画ですよ」
?「面白い映画ですよ」
例「彼女が作ったケーキはどうですか」
「(彼女が作ったケーキは)おいしいですよ」
?「彼女が作ったケーキはおいしいケーキですよ」
?「おいしいケーキですよ」
形容詞が使われる文型で関連するものが、アルクのサイトの「日本語Q&A」にありますので、こちらもどうぞご覧下さい。
http://home.alc.co.jp/db/owa/jpn_npa
http://home.alc.co.jp/db/owa/jpn_npa?stage=2&sn=242
以上長々と書きましたが、何か不明な点がありましたら、遠慮なくご質問ください。
peachtree さんのコメント
(2005/11/14 23:40:52)
ご丁寧な説明、本当に有難うございました。
確かに、取り立てるものを「人」や「場所」にすると、場面の違いがよりはっきりするように思います。
もう少し自分なりに考えてみたいと思います。