「〜と〜の」と「〜と〜との」 [コメントする]

「〜と〜の」と「〜と〜との」


たたみ さんのコメント
 (2005/09/15 13:05:34)

 「〜と〜の」と「〜と〜との」の使い分けはどのように行うのでしょうか?。

 「AとBの関係」「AとBとの関係」という表現は両方使いそうですが、これらはどのように使いわけていいかわかりません。
 「私とあなたの父の関係」というように「の」が2回続くようなときには「私とあたなの父との関係」という風に使うのでしょうか?。
 正確な使い分けを知っている方いらっしゃいましたらご教授ください。


元々の構文の違いに注目してみる

Oyanagi さんのコメント
 (2005/09/18 18:11:39)

たたみさん、こんにちは。管理人のoyanagiです。

いわゆる「並列助詞」の「と」の使い方ですね。実は私も「正確な使い分け」は知りませんが、参考書に書かれている内容を紹介しながら、自分の考えを交えて使い分けをめとめておきます。参考になさってください。

■「と」の繰り返しについて(参考書では・・・)

『基礎日本語文法 改訂版』(くろしお出版)p.163には次のように並列助詞の繰り返しについてまとめられています。

-----(引用開始)------
並列される要素の最後のものに並列の形式が付くかどうかは、形式によって異なる。代表的な形式である「と」、「や」「も」、「か」について言えば、「と」は付いても付かなくてもよく、「や」と「か」は付加されず、「も」は必ず付加されなければならない。
例 (29) 机と椅子(と)を並べてください。
(30) 机や椅子を並べてください。
(31) コーヒーか紅茶がいいと思います。
(32) コーヒーも紅茶も好きだ。
-----(引用終了)-------

また、『日本語基本文法辞典』The Japan Times p.474 には、key sentenceとして次のような文を挙げ、最後の「と」は( )に入っています。さらに Noteでは、次のような説明があり、最後の「と」はたいてい省略される、としています。

-----(引用開始)------
マイク と ディック (と) は 学生 だ/です。

The final to is usually omitted, but the others are not.
-----(引用終了)-------

さらに、ウェブ上に公開されている庭三郎さんの『現代日本語文法概説』においても、次のように書かれています。(※とてもよくまとめられていて役に立ちますよ。文法について知りたいときは、ぜひご覧になってみてください)
http://www.geocities.jp/niwasaburoo/05meisiku.html#5.9
-----(引用開始)------
「AとB」は「AとBと」の形もありますが、ふつうは後ろの「と」は省か れます。
-----(引用終了)-------

以上、三つの参考書の記述から、

★「と」の場合は、最後の「と」が付くのが本来の形であるけれども、たいていは省略されて使われることが多い

ということがわかります。まあ「本来の形」であるかどうかは置いておいて、省略されることがあるということから次のようなことが言えるでしょう。

★<省略したほうが自然な場合>あり、
★<省略しなても全く不自然ではない場合>もあり、
★また、<省略しないことで、何か効果が生じる場合>もある

■「と」の省略の自然、不自然さと効果についての一つの考え方

さて、ここからは私の個人的な考えをまとめたものです。

考え方の出発点として、4つの文型に分類して考えてみます。

(1)動作ではない場合
   Aさんが教室にいる。Bさんも教室がいる。
   →AさんとBさんが教室にいる。
   Aが机の上にある。Bも机の上にある。
   →AとBが机の上にある。

(2)−1動作の場合(「一緒にではない」)
   Aさんが本を読む。Bさんも本を読む。
   →AさんとBさんが本を読む。
    (=本を読む人は、AさんとBさんだ。)

(3)−2動作の場合(「一緒にそれをする」)
   AさんがBさんと(一緒に)遊ぶ。
   →AさんとBさんが(一緒に)遊ぶ。

(4)相互動詞の場合(一方だけでは動作が成立しない動詞)
   AさんがBさんと結婚する。
   →AさんとBさんが結婚する。

私の語感では、(1)<(2)<(3)<(4)の順番で、最後に「と」を入れても不自然ではない度合いが高くなると思います。実際、初級の学習では、(1)(2)の場合には、最後の「と」は入れないで学習するのが普通だと思います。

このような観察結果から考えると、「と」があっても不自然ではないのは、「一緒に」とか「お互い」に意味がはっきりしている場合だと言えます。それ以外の(1)と(2)の場合は、入れても間違いではないけれども、省略するほうが普通だと言えます。

さらに、上の観察結果からわかることは、最後に「と」を入れると、「一緒に」とか「お互い」という読みが優勢になるということです。これは最後に「と」を入れることによる効果と言えるでしょう。
つまり、「AさんとBさんが結婚する」というのは、1)が文脈なしでは優勢ですが、2)の解釈も可能で、意味が曖昧です。
1)AさんとBさんが夫婦になる
2)たとえば、今年結婚するのは、AさんとBさんの二人。
  (つまり、AさんはXさんと結婚し、BさんはYさんと結婚するという場合)
ところが、「AさんとBさん【と】が結婚する」という場合には、なお2)の可能性は排除できないにしても、1の優勢がさらに強くなるように思いますが、いかがでしょうか。

ここで、(4)についてもう少し深く見ておきます。
(4)は、「結婚する」「けんかする」「争う」「衝突する」のような動詞だけでなく、【関係】【同一】【相違】を表す動詞、形容動詞、名詞も含みます。

(4)’AはBと同じだ。→AとBは同じだ。
    AはBと違う。→AとBは違う。
    AはBと別だ。→AとBは別だ。
    AはBと関係がある。→AとBは関係がある。
    AはBと差がある。→AとBは差がある。

■「AとBの」と「AとBとの」の違い

ここまで考えると、たたみさんが疑問に思われた文型について一つの答えを出すことができると思います。

「AとB(と)の関係」という語句は、その元の形として、「AはBと(BはAと)関係がある」という構文があります。これは(4)’に分類されるものです。ですから、「と」は省略可能だけれど、「と」を入れることで、「相互」の意味がより強く全面に出る効果が得られるのではないでしょうか。

最後に、「私とあなたの父の関係」のように「の」が連続する場合についてですが、これはたたみさんがお考えのように、曖昧性を少しでも減らすためには、「私とあなたの父【と】の関係」のように「と」を入れたほうがいいと思いまが、文脈があれば、入れなくても正しく「私」と「あなたの父」の「関係」と解釈できると思います。

■結論

並列の「と」は、最後の「と」は省略されることが普通だが、上に見た分類の3と4、特に4の場合には、「と」を入れることも普通に行われており、「と」を入れることで、「両者が一緒に」「相互に」という意味が強調されると言えます。逆に言えば、そのような意味で間違いなく伝えたい場合には、最後の「と」を省略しないという方略があると言えるかもしれません。(あくまで推測です)。

庭三郎の現代日本語文法概説


たたみ さんのコメント
 (2005/09/19 02:24:52)

 ありがとうございます。
 ここまで論理的かつ丁寧に説明していただいて非常にありがたく思います。
 なるほど。目からウロコが落ちました。そういうことなんですね。疑問点が解消できました。

 実は中学のときに文法は捨ててしまいまして、それが祟って調べ方すらわからない状態になってしまったのです。
 これを機に文法を勉強しなおそうと思います。

 疑問点解消及び良い機会を与えていただきありがとうございました。また、何かありましたら助けてください。


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