依頼表現(日本語と英語) [コメントする]

依頼表現(日本語と英語)


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/13 23:27:10)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[20] 「いただきます」のその後? 投稿者:ASUNARO 投稿日:01/01/16(Tue) 14:40

 ついに「世紀を越えて」しまいました。
あけましておめでとうございます。掲示板もリニューアルなさったようでおめでとうございます。メーセージが入力し安くなりましたし、記事も読みやすくなりましたね。
 ところで、随分間があいてしまって、今更の感もあるのですが、自分の中では考えがまとまらなくて書けなかったのと、お返事を出していないことに後ろめたさがつきまとってもいましたので、一度途中経過をメールさせていただくことにしました。
 まず、きんちょさん、「ちょうだい」するの件につきましては、早とちりの解釈をして申し訳ありませんでした。「頂戴する」の例を読んだとき、自分の中で「これだ」と思うところがあって、自分に都合良く解釈してしまったのは、こちらのほうかもしれません。
 つまり、「頂戴する」になると、クレルとモラウの両方の意味で使う範囲が男女の間でさらに広がるのではないかという仮定です。
例えば、お茶を所望するとき、ご家族の方に対して、どのように言われますか?
「おーい、お茶」「お茶をくれ」「お茶をくれないか」−男性
「ちょっと、お茶」「お茶を頂戴」「お茶をもらえる?」-女性
男性がクレルを使う場面でも、女性はモラウの表現を好むのではないだろうかということなのですが。
 モラウ/クレルの普通の会話では、授受の動作そのものが明確にでるのに対し、場面や位相が上に行けば行くほど、明確な境界をひくことが難しくなるように思われるのです。
 さらに、年賀状の中にこんな表現を見つけて、今までとは逆の発想を思いつきました。あくまで、仮説ですが...
「旧年中は、ひとかたならぬご愛顧を賜りまして、誠にありがとうございました。」
「本年も、変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申しあげます。」
頂くの尊敬語である「賜る」は、「クダサル」の謙譲語でもありますし。イタダクとクダサルの両方の意味が存在するとしたら、「もらって、ありがとう」から「いただいて、ありがとう」が派生したのではなく、「賜りまして、ありがとう...」から「いただきまして、ありがとう」に下がってきたのだとしたら、イタダクの持っているグレイゾーンがその普及を可能にしたと言えるのではないかと。
------------------------------------------------------------------------
[21] Re: 「いただきます」のその後? 投稿者:ASUNARO 投稿日:01/01/16(Tue) 14:56

 同時進行で、もう一つの考えも捨てきれずにいます。
oyanagiさんが、書き言葉を丁寧に表現する必要性と書かれていたこと
から、「翻訳文」の影響もあるのではないかという事です。
英語で依頼表現をする際、
 Would you give me〜?(してくださいませんか)−Will you〜?
 Could I have 〜?  (していただけませんか)-Can I〜?
と、訳しわける必要性が生じて、(英語に限らず、欧州言語には共通した表現だと思われますが)、その翻訳語が徐々に日本語に浸透していったのではないかという仮説です。
 いずれにしても、説得力を持つほどの裏付けがないので、書くことができずに今日まで来てしまいました、翻訳語の影響という視点から「もらえる」とモラウ系のみが可能形をとるということへの足がかりがつかめそうな気もしているのですが...
 途中経過で甚だ表現不足ですが、「つっこみ」をお待ちしています。
------------------------------------------------------------------------
[23] 「賜わる」説 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/20(Sat) 09:49 <URL>

ASUNAROさん、あけましておめでとうございます。
レスが遅くなって申し訳ございません。
長い正月休みをとったせいで、そのつけが今回ってきて大変です。
ところで、「いただきます」のその後ですが、まだまだ迷宮入りと
するわけにはいきませんね(^^)
「賜わる」が「くださる」と「いただく」の両方の敬語になるという
点は確かにおもしろいところだと思います。
私も少しこの側面で考えてみますね。
------------------------------------------------------------------------
[24] 「英語直訳」説 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/20(Sat) 09:50 <URL>

> 英語で依頼表現をする際、
>  Would you give me〜?(してくださいませんか)−Will you〜?
>  Could I have 〜?  (していただけませんか)-Can I〜?
> と、訳しわける必要性が生じて、
>(英語に限らず、欧州言語には共通した表現だと思われますが)、
> その翻訳語が徐々に日本語に浸透していったのではないかという
> 仮説です。
この英語との対比では確かに<可能>の法助動詞がくるほうが
「いただく」に対応しているようにも思えますが、
英語では依頼表現でも
Could you tell me〜?のような文型もあるので
必ずしも『私』の場合と『あなた』の場合が対になって使い分け
られているわけでもないような気がします。
やはり「くれる」系というのは英語にはない日本語らしい
立場指向の表現ではないかと思います。
とりあえず思いついた点だけですが。
------------------------------------------------------------------------
[25] Re: 「英語直訳」説 投稿者:ASUNARO 投稿日:01/01/21(Sun) 17:44


> 英語では依頼表現でも
> Could you tell me〜?のような文型もあるので
> 必ずしも『私』の場合と『あなた』の場合が対になって使い分け
> られているわけでもないような気がします。
 
 いきなり、「もらえる」に結びつけてしまったのは早計でした。ただ、対になっているかどうかを問題にしたいのではなく、英語の依頼表現の中には、話者が恩恵を受けることを相手に働きかける表現と、相手の直接の行為に働きかける場合とが存在するという概念が、間接的に日本語にも影響を与えた可能性を探ってみたかったのです。
 この場合、giveが「あげる」と「くれる」の区別をもたないというのはまた別のこととして。
 oyanagiさんのくださった例文についても、
 Could you tell me how to get to the station?(Would)
Could I ask you how to get to the station?
という表現が可能であると思います。Could youを常に、いただけませんかと訳すと言う意味ではなく、(場合によっては、こちらをくださいませんかと訳出したほうが自然ですね)
 明治時代の初期に、外国文化の流入に伴って、多くの漢字借用語が誕生していったように、戦後、欧米文化の流入とともに、欧米人とのコミュニケーションとの中で、従来の日本語では表現しきれなかったことを新たな表現形式として取り入れていったという可能性もあるのではないかと思ったのです。
 
 これは、前回のアンケートの番外編として、英国人女性と韓国人の男性(いずれも日本語能力試験1級保持者)に同じ質問「お煙草はご遠慮戴きますよう、お願い申しあげます」と「〜くださいますようお願い申しあげますよう」を提示して、違和感を感じるかどうかということと、母国語に訳して欲しいと依頼したところ、
 Would you please refrain from smoking?(〜くださいますよう)
could I ask you you to refrain from smoking?(いただきますよう)
さらに、
 Would you mind if I ask you to stop smoking?(どちらにもとれる?)
となったのに対し、韓国語の方では、(男性と言うこともあるのでしょうか)韓国語には依頼の時に、イタダクを使う表現はないので、〜クダサイますようにの方しか、表現できないと言われました。(ごめんなさい、韓国語の知識がないので、それが本当なのか、また実際なんというのかは分かりませんでした。この点については、きんちょさんのお知恵を拝借したいと存じます。)
------------------------------------------------------------------------
[26] 英語と日本語の対比(1) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/21(Sun) 20:16 <URL>

> 英語の依頼表現の中には、
> 話者が恩恵を受けることを相手に働きかける表現と、
> 相手の直接の行為に働きかける場合とが存在するという概念が、
> 間接的に日本語にも影響を与えた可能性を探ってみたかったのです。
この二つの場合に英語ではどちらを使うのでしょうか?
そしてどちらの表現が日本語のどの表現に影響を与えたのでしょうか?
この点が文脈からはちょっとはっきりしないので、これからの議論のためにも確認しておきたいのですが。
それはとりあえず保留しておいて、もし英語の依頼表現の特徴が日本語にもみらえるとしたら、次のようになるはずだと思います。
1)行為者が主語の場合
  英:Would you....? / Could you.....?
  日:(あなたは)(私に)〜てくださいませんか
2)受益者が主語の場合
  英:Could I have...?/ Could I get...?/ Could I ask you to...?
  日:(私は)(あなたに)〜ていただけませんか
繰り返しになりますが、英語の依頼表現はwouldもcouldもあるので、couldが「いただける」に繋がっているとは言えないと先の投稿に書いたのですが、ちょっと視点を変えるとそう言えないこともないということに気がつきました。
→(2)へつづく
------------------------------------------------------------------------
[27] 英語と日本語の対比(2) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/21(Sun) 20:16 <URL>

英語の場合に1)と2)の丁寧さをみてみると次のように言えると思います。
2)の表現は英語は<許可>を求める文型になっていて、通常依頼表現と言われるものは1)の場合です。英語は日本語と違って事実指向の言語ですから、依頼表現は基本的に行為者を主語にして文を作るのだと思います。そして、丁寧さをwill->wouldへ、can->couldへすることで表現しています。ただ、両者には丁寧さに違いがあるという指摘があり、当然してくれるはずのものには前者を、そうでないものには後者をということがあるようです。そして、1)に比べれば<許可>の表現になっている2)の依頼のほうが、また一層丁寧になると言えます。
つまり、1)would /<1)could <2)couldの順番に丁寧さが増すことになります。
ここからは私の推測ですが、先の<勉強部屋>の考察でも触れたように日本人は「くださいます」より「いただきます」のほうがより丁寧に感じるようなので、
日本語の場合は1)〜てくださる /<2)〜ていただく の順になります。
こうして比較すると、英語のcouldの日本語訳がちょうど「〜ていただく」に対応すると見えなくもありません。(/)で切れるというわけです。
このようなことがあって、ASUNAROさんのアンケートの英国の女性の英語訳になったのではないかと推測します。
>「お煙草はご遠慮戴きますよう、お願い申しあげます」と
>「〜くださいますようお願い申しあげますよう」を提示して、
> 違和感を感じるかどうかということと、母国語に訳して欲しいと依頼したところ、
>  Would you please refrain from smoking?(〜くださいますよう)
> could I ask you to refrain from smoking?(いただきますよう)
(英国の女性が日本語の意図するところを理解していたとしたらと仮定がつきますが)
英語が日本語に与えた影響については(1)の質問のお答えを待って、改めてまた考えたいと思います。とりあえず、ASUNAROさんのレスを拝見して思いついたことを書き出してみました。
(英語の流入が日本語に何らかの影響を与えたことは確かだと思うので、もう少しASUNAROさんのお考えを聞きたいです。レスをお待ちしています。なかなか面白くなってきましたね!)
------------------------------------------------------------------------
[28] このスレッドの『前』のこと(予備知識) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/21(Sun) 20:18 <URL>

以前の事情を知らない方は、このスレッドを見ても何を議論しているのかさっぱり分からないと思ったので、少し前のことを書いておきます。
元々はアルクの掲示板に投稿された#4918が出発点で、「〜ていただきますよう、お願い申し上げます」は不自然か?という疑問です。「〜てくださいますよう」が正しいのではないか?
これにはたくさんのレスが付きました。その中で私(oyanagi)が<勉強部屋>で考察した結果を公開しました。(記事#16)
その後、しばらくして、拙掲示板(=旧版のほう)にASUNAROさんから投稿がありました。ここではきんちょさんとのやりとりやASUNAROさんのその後調べた結果の報告がありました。
そして、今年のこの新しい投稿のスレッドへと繋がっていくというわけです。
アルクさんの記事は拙HPの<文法情報リンク集>敬語の項目からリンクが張ってあります。関心があればご覧になってください。
------------------------------------------------------------------------
[29] Re: 英語と日本語の対比(2)その1 投稿者:ASUNARO 投稿日:01/01/25(Thu) 00:25

> 2)の表現は英語は<許可>を求める文型になっていて、通常依頼表現と言われるものは1)の場合です。英語は日本語と違って事実指向の言語ですから、依頼表現は基本的に行為者を主語にして文を作るのだと思います。そして、丁寧さをwill->wouldへ、can->couldへすることで表現しています。ただ、両者には丁寧さに違いがあるという指摘があり、当然してくれるはずのものには前者を、そうでないものには後者をということがあるようです。そして、1)に比べれば<許可>の表現になっている2)の依頼のほうが、また一層丁寧になると言えます。

ご指摘ありがとうございます。上記の件につきましては、ご指摘の通りで、1)と2)を依頼文と一くくりにしてしまったのは、早計でした。
 まとまったお答えをするには、今少し時間が必要なのですが、ご質問にお答えしなければ先に進めないので、とりあえずお返事させていただきます。
 先のご質問のお答えですが、当初は、
1)Would you〜?(〜してくださいませんか?)
2)Could I 〜?(〜していただけませんか?)と直訳的に訳しわけることから生じた影響だと、漠然と考えていました。
 が、oyanagiさんのご質問から改めて考えてみると、そういった単純な仕訳では済まないと思い至りました。
 まず《いわゆる英語の法助動詞の用法は大別して2種類になります。
?<可能>;可能性・蓋然性・必然性・確実性・仮定を表すもの
?<義務>;許可・能力・義務・意志・強制・自発を表すもの
但し、日/英語の包括範囲が異なることと、どの助動詞がどの群に属するかと言うことになると、日本語よりも英語の方が段階によるグラデーションが豊富な上、互いにオーバーラップする領域があって、一概には言えない−例えば、Can I〜?と May I〜?、 Could you〜? とWould you〜?などのように(バベルプレス:翻訳の技法)》とあります。
 次に、大修館のジーニアス英和辞典によると、
<Could you〜?は相手の能力に対する質問から転じて、「もし、〜できるのであれば」〜していただけますか?という依頼を表す。
  例:Could you help me? /お手伝い願えますか?>
<Would you〜?は、依頼・勧誘を表して、「〜してくださいますか」という依頼を表す。
  例:Would you help me?/ちょっと、手伝っていただけませんか。
とあり、必ずしも,Could you/をいただけますか、Would you/をくださいますか、と訳出しているわけでもないようです。
------------------------------------------------------------------------
[30] Re: 英語と日本語の対比(2)その2 投稿者:ASUNARO 投稿日:01/01/25(Thu) 00:49

 さらに、どのように訳しわけられているかという観点から、いくつかの辞書や、参考書を調べてみました。とりあえずは例文だけですが。
Could I see the timetable?/時刻表を見せていただけませんか。
Could I use your phone? /お電話をお借りしてよろしいでしょうか。
Could you give me a call?/お電話いただけますか。
Could you please repeat that again?/もう一度くり返していただけませんか。
Would you please call me this evening?/今晩電話してくださいませんか。
さらには、Would(Do) you mind〜?という表現も有るので、訳の方はもっとバリエーションがあるだろうと思いますし、Could/Would、you/Iという対立の枠組みだけでは考えられないような気がしてきました。
 翻訳文が一定しないのも、文中で使われる動詞や、コンテクスト、pleaseの有無によっても、その丁寧度やニュアンスも異なる原文の差異を、なんとか日本語で表そうとしているのかもしれません。
 もし、翻訳語による影響の可能性が考えられるとしたら、単に単語や文のレベルではなく、思考や思想に関わるところに深く浸透して、従来の日本語が持ち得なかった表現形式を持つようになったとしたら、いいしれぬ脅威すら感じます。
 韓国語に「くれる系」の依頼表現しかなく、本来日本語もそうであったなら、英語の影響(侵略?)で、許可を求める「依頼」表現という思考形式がいつのまにか当然のこととして受け入れられるようになり、依頼よりも許可を求める方により丁寧さを感じる世代が増えたというのは、これまた早計でしょうか。
 どうもまとまらなくてすみません。また、おかしな所があればご指摘ください。
------------------------------------------------------------------------
[31] Re^2: 英語と日本語の対比(2)その2 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/26(Fri) 08:54 <URL>

ASUNAROさん、レスが遅くなってすみません。まずはコメントから。
>  翻訳文が一定しないのも、文中で使われる動詞や、コンテクスト、pleaseの有無によっても、その丁寧度やニュアンスも異なる原文の差異を、なんとか日本語で表そうとしているのかもしれません。
>  もし、翻訳語による影響の可能性が考えられるとしたら、単に単語や文のレベルではなく、思考や思想に関わるところに深く浸透して、従来の日本語が持ち得なかった表現形式を持つようになったとしたら、いいしれぬ脅威すら感じます。
☆私はそこまで影響されたとは考えていません。(影響がないとは断言できませんが。)
なんとか表現しようとして日本語を作り出したというより、もともと日本語にあった思考(表現方法)を英語を訳すために当てはめたというほうがいいのではないかと思います。
ちょっと話題は変わりますが、「もらう」がもともと持っていた特徴が「いただく」を丁寧に感じる意識につながり、それが「いただく」の多用につながり、さらには「させていただく」の多用につながったのではないかと思っています。
>  韓国語に「くれる系」の依頼表現しかなく、本来日本語もそうであったなら、英語の影響(侵略?)で、許可を求める「依頼」表現という思考形式がいつのまにか当然のこととして受け入れられるようになり、依頼よりも許可を求める方により丁寧さを感じる世代が増えたというのは、これまた早計でしょうか。
☆依頼表現と言われるもののなかで「相手の意志を問う」ものより「相手または自分がすることの可能性を問う(=許可)」のほうが丁寧になるというのは一般的なことで、必ずしも丁寧さを感じる表現に変化が起こったのではないと思います。(侵略説にはどうも抵抗を感じてしまうのですが、韓国語との対比はまた新たな視点を提供するかもしれませんね。私の力では無理ですが。)
とりあえず、これまでのやりとりを踏まえて私なりにまとめたものを別スレッドに書いてみました。おそらくASUNAROさんが納得できないところもあると思いますので、そこは遠慮なくご指摘ください。
英語の影響というよりも英語と日本語の対応という視点でまとめてみました。
------------------------------------------------------------------------
[32] 依頼表現における日英の対比(1) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/26(Fri) 08:56 <URL>

>  さらに、どのように訳しわけられているかという観点から、いくつかの辞書や、参考書を調べてみました。とりあえずは例文だけですが。
> Could I see the timetable?/時刻表を見せていただけませんか。
> Could I use your phone? /お電話をお借りしてよろしいでしょうか。
>
> Could you give me a call?/お電話いただけますか。
> Could you please repeat that again?/もう一度くり返していただけませんか。
>
> Would you please call me this evening?/今晩電話してくださいませんか。
実は私も訳し分けが気になって、手元にある二冊の本をめくってみましたが、その結果が先の投稿に書いた<丁寧さの段階性>です。
※参考図書
(ア)『英語表現のトレーニング』脇山 怜(講談社現代新書)
(イ)『英語表現をみがく』豊田 昌倫(講談社現代新書)
英語話者が丁寧さをどのように表現するかという段階性については(ア)を参考にしました。
特に(ア)のp,44-47の会話例では、上司から部下への依頼という場面で二つの会話例が載っていて、まさに丁寧さという点でみごとに「くれる系」と「もらう」系が訳で使い分けられています。
(著者がこれを意識してしたのかどうかは不明ですが、今回の私のまとめでは重要な資料となっています)
確かに『その1』の最後にあるとおり、必ずしも対応していない訳があるとは思いますが、上の例文のように、相手の意志を尋ねているWould you...?のほうが「〜てくださいませんか」となっていて、Couldのほうが「〜ていただけませんか」となっている点が非常に興味深いです。ASUNAROさんは英語の表現のバリエーションの多さから、日本語と英語は対応しないのでないかという考えに傾いているようですが、<丁寧さ>という視点で考えれば、I wonder if you/I could...? や Would you mind...?などは「〜ていただけませんか/いただけないでしょうか」と訳されているのが多いのではないでしょうか。
始めは主語が「あなた」か「私」かだけに注意して(Would youもCould youもあるので)英語と日本語は対応していないと思ったのですが、主語ではなく、純粋に助動詞を比べれば、最初にASUNAROさんが指摘されたように Would youは「〜てくださいませんか」Could you/Iは「〜ていたでませんか」に対応するのではないかと今は考えています。
しかし、これはあくまで<丁寧さのスケール>を英語と日本語で比較してみてのことです。
☆Will/Would you....?よりもCould you/I...?のほうが丁寧になるという英語話者の判断
☆「いただく」のほうが「くださる」より丁寧になるという日本語話者の判断
この二つが正しいと仮定すれば、そのような話者の判断が訳に現れているのではないかというのが私の考えです。(以上は先の投稿のまとめです)
ただ、ASUNAROさんの投稿にあるように対応しない場合のことを考えてみて基本の用法に戻って考えるのがいいのではないかと思います。
日本語の「もらう系」と「くれる系」はもともと<丁寧さのスケール>ではなく、<主観性>の違いが基本であることが、英語の日本語訳が必ずしもきれいに対応しない原因ではないかと思います。
→(2)へ続く
------------------------------------------------------------------------
[33] 依頼表現における日英の対比(2) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/26(Fri) 08:58 <URL>

そこで日本語の「くれる系」が持つ<主観性>について考えてみたいと思います。
まず、(1)で紹介した上司と部下の会話を例にとると、上司(男)が部下に依頼(命令)する時には「この書類を1部ずつコピーしてくれないか/もらえないか」の二つが考えられますが、この違いは、同じ依頼表現とされていても「くれる」は指示に近く、「もらう」はお願いになっている点ではないでしょうか。つまり、日本語では「くれる」は常に自分に対してなされることを指定するので非常に主観性の強い動詞です。それに対して「もらう」は<受け身的>な発想です。このような違いが一般に依頼表現と言われる文で<丁寧さ>の違いになって現れてくるのだと思います。
それが、ちょうど、英語のWill/Would you...?が「当然相手がするべきことを依頼する」気持ちの依頼表現であるという発想と日本語の「くれる系」の発想がかなり一致するために、(1)に書いたように<丁寧さのスケール>という点で訳文に反映されるのだと思います。
(※これが英語の影響を受けたためなのかは分かりません)
そこで、will/would(→くれる系)、can/could(→もらう系)のように対応しない例として私が注目したのは参考図書の(ア)のp.186にある男女の会話で自分が立ち去る前にぜひ一度会いたいということを男が女に頼む場面で、始めは
Can I see you before I go?
となっていて、いろいろ話したあとに、最後に
Please. Could I see you? Could I just see you?
となっています。そしてこの日本語訳は
「会えるかい? 僕がたつ前に。」
「頼むよ。会ってくれないかい? ただ、会うだけでいいんだ。」
となっています。
これはASUNAROさんが投稿で指摘したコンテキストによって対応しないこともあるという例だろうと思います。
つまり、英語ではあくまでも<お願い>の気持ちを表現するためにCouldが使われれいますが、日本語では情況からかなり主観性を強く出すために「くれる」が使われているのだと解釈したいのですが。
この<主観性>の強さというのが日本語では形は依頼でも意味は指示(命令)につながるのだと思います。
「くれる」が命令形となった場合。
「おい、頼むから話してくれよ!」
「もううるさいな。やめてくれよ!」などは「もらう」では表現できません。
------------------------------------------------------------------------
[34] 依頼表現における日英の対比(まとめ) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/01/26(Fri) 09:06 <URL>

ということで、ここまでのまとめですが、
1)依頼表現では「もらう」「くれる」の使い分けは主観性の強さが基本的に影響している。
2)丁寧な依頼表現ではその主観性の違いが丁寧さの程度に影響する。
3)そのために英語のWould系とCould系に「くださる」と「いただく」がそれぞれ対応することが多い。
4)しかし、「くれる」「もらう」の形では場面によって英語と日本語では対応しないことがある。
5)それは、英語は英語なりの理論で法助動詞が使われるが、日本語は受益表現という理論がそこに介在するためである。
はたして、このようなことが言えるのかどうかは、広く翻訳にあたってみないといけないわけですが、英語に詳しい人で、「そんな対応はない!」というご指摘があればそれはそれでうれしいのですが。
それから以前からASUNAROさんが指摘されていることですが、日本語の場合は男女にる差もありますから、いろいろな面を考えるともっと事情は複雑なような気がします。
最初はASUNAROさんの英語と日本語の対応という指摘に対して「そんなことはないでしょう」と言っていた私ですが、今では「いや、やっぱりあるんじゃないかな」と変わってきました。影響を受けたのかどうかという議論にはまだ踏み込めません。ASUNAROさんをはじめ、この記事をご覧の方で、「こんな点で影響をうけたと言えるのではないのか」という指摘があると有難いのですが。
------------------------------------------------------------------------


コメントする


なまえメール
WWW
タイトル
コメント
参考
リンク
ページ名
URL


[HOME] [TOP] [HELP] [FIND]

Mie-BBS v2.13 by Saiey