Oyanagi さんのコメント
(2004/04/18 03:28:17)
※サーバーの不具合により2月以降の投稿ログが消失してしいました。投稿してくださった方には本当に申し訳なく思っております。
※親記事とレス記事は消失しましたが、Oyanagiの投稿はパソコン内にバックアップがありましたので、それだけをここに投稿します。
以下は「らくらくさん」からの投稿に対するOyanagiのレス記事です。
(管理人より)
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らくらくさん、こんにちは。Oyanagiです。
ある文が「仮定条件」か「確定条件」なのか判断に迷うものがあるということですね。いつくか例文があげられていましたが、それについて考える前にそもそも「仮定条件」と「確定条件」はどう違うのかとうことをはっきりさせておかなければならないでしょう。
投稿文の説明を読むと、
>年をとることは確定、絶対なことですよね。
>それに<もし 年をとったら>は、変は気がします。
>同様に<もし 18歳になったら>も 変ですよね。
とありますが、実はこのへんに落とし穴があるように思います。「確定」なことだから「確定条件」だと言えるのでしょうか?
第二に、用語の定義がどうであれ、二つの用法について判別しにくいものがあるとしたら、それは「グレーゾーン」があるということです。どちらともとれるような「グレーゾーン」がある場合には、両端をはっきりさせることが必要です。
ということで、まず「仮定」「確定」の区別について紹介して、最後にグレーゾーンの話をして、疑問に思われたことについて私の考えを書いておきます。
■「仮定」「確定」の区別(1)
まず、「条件文」の種類(区別)については、日本語教育で統一されたものはないと思います。用語の使い方においても、注意が払われていない場合があり、参考書を読んでも混乱する場合があります。ですから、まず自分で用語を整理する必要があります。
条件というのを、広くとらえて、
★前件と後件の二つの事柄のうち、その前提になるもの(「日本語教育事典」より)と考えた場合、
★「仮定条件」とは、『〜たら』『〜ば』『〜と』/『〜なら』の形式で示されるもの
★「確定条件」とは、『〜ので』『〜から』などの形式で示されるもの
となります。
つまり、因果関係を「確定」したものとして述べる(いわゆる)理由の「ので」「から」が「確定条件」を示す形式だというわけです。
これは、古典文法でもいわれていることで、概略次のようになります。
★「未然形」に続く「〜ば(行かば)」は仮定条件で、口語文法では、「行けば」の意味。
★「已然形」に続く「〜ば(行けば)」は確定条件で、口語文法では、「行くので」の意味。
このような観点からすると、らくらくさんが悩んでいることは、実は「確定条件」か「仮定条件」かという問題ではなくなってしまいます。
■「仮定」「確定(<既定)」の区別(2)
次の「〜たら」の用法の一つとしてあげられる、「〜たら〜た」という文型を考えます。
「図書館に行ったら、閉まっていた」といった文ですね。
これは、前件も後件も過去のことで、「既に定まった事態を述べています」
そして、閉まっていたことは、図書館に行ったことでわかったわけですから、前件が後件に対して契機のような役割を果たしています。このようなものも条件の一つとして含めます。
★このような条件は「既定条件」と言われます。
そして、ややこしいことに、
★この「既定条件」のことを「確定条件」と言うこともあるのです。
※私の立場は、「既定条件」の中に「確定条件」が含まれるというものですが、それについて書くと説明が複雑になるのでここでは省略します。
※『日本語文型辞典』(くろしお出版)では、既定条件という用語が使われておらず、「〜たら〜た」は「確定条件」に分類されています。そして、「仮定条件」として分類されているものの中で「ここまで来たら、一人でも帰れます」のような文は、『基礎日本語辞典』では「既定」を表す用法として分類されています。(とだけ書いても何のことかさっぱりかもしれませんが、分類、用語が統一されているわけではないということの例として書いておきます)
例:『日本語文型辞典』(くろしお出版)の「たら」の項では、大きな分類として
1 .....たら<仮定条件>
2 .....たら<反事実>
3 .....たら......た<確定条件>
のように、「仮定」と「確定」を分類しています。
※ちなみに
「薬を飲んだので直った」と「薬を飲んだら直った」では、因果関係を示すという点では、意味が接近していることがわかります。ただし、因果関係を明示する「確定条件」の「ので」と違って、個別的、一回的な用法が特徴である既定条件の「たら」は、やはり「契機」「継起」の意味が強くなります。
■これまでのまとめ
以上の二つの区別からわかったことは、次のとおりです。
★「〜たら・・・た」という過去の事実を表す文型は、「既定条件」あるいは「確定条件」と呼ばれ、
そうではない文型(=仮定条件)と区別される。
★いわゆる因果関係を示す「ので」「から」も、条件を広くとらえれば、
(伝統的に)「確定条件」と呼ばれる。
そうすると、やはり、らくらくさんが悩んでいる「仮定」と「確定」の区別はいったいなんなのか? ということになります。
■「仮定条件」の中のスケール
さて、いよいよ本題です。
(えっ、やっと本題!)いつもながら、前置きが長くてすみません(^^;
ここでご質問の例文を引用しておきます。
(イ)年をとったら、田舎にすみたいです。
(ロ)会社をやめたら、本を書きたいです。
上に書いたように、「〜たら・・・た」以外の文型(厳密に言えば違うのですが、ほかの細々したものは省略します)を仮定条件だと考えると、(イ)も(ロ)も仮定条件の文ということになります。
なぜかというと、【年をとる】ことも、【会社をやめる】ことも、発話時点では<未現実/未了>だからです。
それでは、らくらくさんが「確定条件」だと思っていたものは何だったのかと言うと、それは
★「仮定条件」の前件に来る内容のうち、確定のスケールが高いもの(=(ほぼ)確実に成立する)場合のことだ
と考えるのがいいと思います。
「仮定条件」の前件には、<未現実/未了>か<現実>かを問わず、いろいろな段階のものが来ます。<未現実>のスケールを考えると、次のようなものになります。(『基礎日本語辞典』(角川書店)の「たら」の項の解説を参考にしました)
このスケールで、ーーーーーより上の部分が、「(ほぼ)確定した未来」を表す条件です。
これを「確定条件」と呼ぶことが適切かどうかは意見が分かれるところですが、私の立場は、先に書いたように、これはあくまでも仮定条件の前件のスケールの一つだと考えます。
1)100%成立する未来・・・・(ハ)【明日になったら】状況は変わるよ。
【明日になること】
(ニ)【お湯がわいたら】これを入れてください。
【お湯がわくこと】
2)ほぼ確定した未来・・・・・・(ホ)それじゃ、【駅に着いたら】電話しますね。
【駅に着くこと】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3)たぶん起こるだろう未来・・・(ヘ)今度【(もし)うそをついたら】ただじゃすまさないぞ。
【うそをつくこと】
4)起こりうる未来・・・・・・・(ト)【(万一)(もし)飛行機が墜落したら】どうしよう。
【飛行機が墜落すること】
■「仮定」と「確定(=確定のレベルが高い)」の区別(3)
上のスケールをみてわかるとおり、3と4が「もし〜」をつけることができますが、1と2は「もし〜」をつけると変です。
そして、ある事態【 】が1か1でないかは、人間(=普通の人)なら直感で判断できます。2は【 】だけではわかりませんが、場面が与えられればそれとわかります。
ということで、1と4を両極にして、その中間に位置するもの、“文脈が与えられないと判別ができない”ということで2と3の間がグレーゾーンだと言えます。
※4だってテロリストの立場だったら2(または1)になるのだろうけど、常識で考えればやはり4でしょう。
以上のことをふまえて、ご質問の例文を検討します。
(イ)年をとったら、田舎にすみたいです。
【年をとること】については、「もし」ということはないので、1と考えられます。
(ロ)会社をやめたら、本を書きたいです。
【会社をやめること】は、二つの場合が考えられます。
*一つは、定年でやめること。
この場合は、2と1の中間(:定年がない会社もあるので)ですね。
*もう一つは、何か理由があって、定年前にやめること。
そうする人しない人がいるので、この場合は3でしょう。
ただ、後件をみると、【本を書く】ですから、ここから推測される事態は、定年でやめることでしょう。
微妙ではありますが、その解釈のほうが優勢だと思いますが、いかがでしょう。
ですから、この文全体としては2と1の中間になると思います。
ということで、(イ)は1のレベルの仮定条件で、(ロ)は前件だけでは3のレベルの仮定条件の解釈もできますが、全体をみれば1〜2のレベルの仮定条件の解釈が普通だと言えます。
そうすると、
“仮にレベル1と2の条件を「確定条件」と呼ぶならば”、らくらくさんがご覧になったテキストで、(ロ)が確定条件の練習問題として掲載されていたのは妥当だと言えます。
ただ(くどいようですが)それは「確定した未来を表す」前件であって、「確定条件」と呼ぶものであるかは疑問です。
まあ言葉の定義にこだわらなければ、このようにスケールを考えて例文を検討して、「仮定」か「確定」かは判断できると思います。ポイントは、グレーゾーンがあることを認め、文脈なしに、前件だけを取り出してどっちなんだと考えることはよくないということです。
以上、長くなりましたが、不明な点があったらまたご投稿ください。
できれば、後学のためにお使いのテキストが何なのか紹介してもらえるとありがたいです。
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Oyanagiの投稿2
らくらくさん、こんにちは。
先の投稿では「仮定条件」と「確定条件」に区別について長々と書きましたが、(ポイントは「〜たら」の導入ということのようですから)、とりあえず、「そうする」「そうなる」ことが確定していることを述べる場合には、「確定条件」ということにして話を進めましょう。
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どなたかの授業を見学したとのこと。上に書いた導入例をみると、らくらくさんが指摘されたように、ちょっと問題ありですね。
「仮定条件」の練習として「年をとったら〜」を一緒にしたのはまずいでしょう。
それから、「家へ帰ったら、何をしたいですか」というのも、ちょっと不自然な質問ですね。まあ、文だけ書いてあっても、どのような導入だったのかはわかりませんが、「授業がおわったら、家へ帰ります」のつながりでそうなっているんでしょうか?
それなら、「家へ帰ったら、何をしますか」くらいでいいんじゃないでしょうか。「家へ帰る」ことは、「何をしたいですか」と聞くほどの状況ではないような気が・・・。久しぶりに家に帰るなら別ですけど(^^;
それから教科書の例文を確認しましたけど、「仮定条件」と「確定条件」でちゃんと区別して練習できるようになっていますね。ただ、ちょっと気になった点はあります。そこで、私なりに注意したほうがいい点を書いてみます。
■導入文として「ピンとくる」ものにするために
まず「たら」は個別、一回性の強い条件表現で、かつ後件で話者の意思表現が自由に来ることが特徴ですから、練習するにしても、そのような状況がよくわかるものがいいですね。
ですから、教科書の例文は、ほとんどが「〜ます(意思)」「〜ません(意思)」「〜たいです」「〜てください」「〜ましょう」「〜ませんか」「どうしますか」という後件になっていますね。
ところが、よくみると、そうじゃないものもあります。
例えば、(「たら」を使って文を作る練習として)
●練習B-1
1)駅まで歩きます・30分・かかります
2)この薬を飲みます・元気になります
●練習B-2
1)駅が近い・便利です
2)速達です・あした 着きます
これらの文は、文脈なしには、それほど個別的、一回性の強く感じるものではありません。
ですから、「〜ば」「〜と」でも言えるし、そのほうが自然に感じる場合もあります。
それでは、なぜこのような文が同じ練習に入っているのでしょう。
■第一には、「一般的、真理」を表す条件の特徴をもちながらも、やはり「個別的」な事例(=この場合、これについて、などなど)について述べているということでしょう。
■第二には、(動詞の場合)「たら」の特徴である「完了性」を強く出す状況だったら不自然ではないからでしょう。
そこで、らくらくさんの紹介してくださった導入例をみると、「もしたくさん食べたらおなかがいっぱいになります」がこの事例に含まれると思います。
これは「(だれでも)たくさん食べればおなかがいっぱになる」という「一般条件」とつながりがあります」それを「たら」の仮定条件の導入例として使う場合には、注意が必要でしょう。少なくも一番最初の導入例にはしないほうがいいと思いますが。
■まとめ
ということで、一番大切なことは、「確定条件」と「仮定条件」を区別して、それがさほど文脈がなくてもわかる文で導入して、練習するようにして、その際に、「一般条件」としても使えるようなものには十分注意することが必要なのではないでしょうか。