「〜にしろ、〜にしろ」と「〜につけ、〜につけ」 [コメントする]

「〜にしろ、〜にしろ」と「〜につけ、〜につけ」


菊 さんのコメント
 (2003/10/18 16:05:57)

新しい掲示版になり、わからない項目が探しやすくなり
助かります。過去ログの内容も少しずつ勉強させていただこうと思っていたのでありがたいです。

さて、きょうの質問なんですが、わたしの生徒からのもので、「〜につけ、〜につけ」と「〜にしろ、〜にしろ」の
違いがわからない、というのです。「〜につけ、、」は、「〜の場合は、〜の時は」で、例えば、
*雨につけ、雪につけ、工事の遅れが心配された。
「〜にしろ、、」は、例をあげて、どれをとっても、ということですから、*ビールにしろ、日本酒にしろ飲んだら運転できない。と「完全マスター2級日本語能力試験文法問題対策、スリーエーネットワーク」を使って練習したのですが、
次の例文
*煮るにつけ焼くにつけ、日本料理にしょうゆは欠かせない。(日本語能力試験に出る文法2級、国書刊行会)の場合、どちらでもいいように思えてきました。どうやって説明
すればいいのかわかりません。よろしくお願いします。


慣用的であることの意味

Oyanagi さんのコメント
 (2003/11/01 05:11:39)

菊さん、勉強部屋へようこそ。

大変レスが遅くなり、申し訳ありません。

さて、ご質問の件ですが、能力試験対策の練習問題をお使いのようですね。
私もその昔、能力試験対策の本の執筆に関わったことがありますが、その経験からして、2級もそうですが、特に1級の文法は、「慣用句」というものの取り扱いがポイントだと思います。

つまり、例文が豊富で比較的自由に文が作れるものと、反対に、使用が固定化していて、慣用句として使われることが多いもの、また一緒に使われる語彙がある程度限られているものは、それでないものと同列に扱わないほうがいいと思います。

今回取り上げた「〜につけ〜につけ」はペアとして使われるものは慣用的に決まっているものの例だと思います。
下に挙げた(1)〜(3)の参考書のいずれもそのように説明されています。

(1)『日本語表現文型』(森田良行 松木正恵)アルク
 ア)雨につけ風につけいつも心細い思いをした。
 イ)良きにつけ悪しきにつけもうその話はどんどん進行しているのだから、成り行きを見守りましょう。
 ウ)母親の辛苦辛労を見るに付け聞くに付け、子供心にも心細くもまた悲しく・・・・

(2)『日本語文型辞典』くろしお出版
 ア)いいにつけ悪いにつけ、あの人たちの協力を仰ぐしかない。
 イ)話しがまとまるにつけ、まとまらないにつけ、仲介の労を取ってくれた方にはお礼をしなければなりません。

(3)『どんな時どう使う日本語表現文型500』(アルク)
 ・あの人は体の調子がいいにつけ悪いにつけ、神社に行って手を合わせている。

(4)日本語教材図書館の「問題検索」より
   →参考リンク参照
 ア)煮るにつけ焼くにつけ日本料理にしょうゆは欠かせない。
 イ)暑いにつけ寒いにつけ、娘は親の健康を気づかった。
 ウ)学生時代、二人はうれしいにつけ悲しいにつけいつも一緒だった。
 エ)社長には、いいにつけ悪いにつけ、現状を報告させる必要がある。
 オ)彼はほんとうに酒が好きだ。うれしいにつけ悲しいにつけ、だれかを誘って飲みに行く。

そうすると、学習者への指導ということで考えると、上の例にあげたものだけを「慣用的」だとして教えるのが手っ取り早いと思います。

■意味・用法の違いを考えてみる

まあ、そうするにするニシロ、しないニシロ、用法の違いを考えてみることは意味があると思います。

※もともと例文が慣用的に固定しているのですから、そのような限られた文だけで比較することにどれだけの意味があるのかという気もします。つまり、慣用化されてしまうと、“公平”に比較することが難しいからです。そのへんの部分を割り引いて、あくまでも考える上ので参考程度にしてください。

菊さんが指摘した「煮る〜」の文もそうですが、自然に言い換えができるものは、文末に話者の<主張>が来る文ではないかなと思います。
「煮る〜」の文では、「〜は欠かせない」が文末に来ていますね。
「いい〜」の文では、
(「それがいいにしろ、悪いにしろ」で言い換えられるかどうかみると、)
文末が「仰ぐしかない」とか「〜必要がある」などは、自然に言い換えができますが、「神社に行って手を合わせている」はちょっと不自然でしょうか。
単に出来事やその時の状態を述べる文、特に過去形になっている文は、「〜にしろ〜にしろ」が座りが悪くなりますね。

不自然でないにしても、ニュアンスが変わりますね。

一方「〜にしろ〜にしろ」の例文を観察すると、文末は話者の<主張(:話者の意志も含み、そうであることが真であると主張するということ)>が来るのが普通だと思います。つまり、「〜としても〜としても、どちらの場合であっても、この自分が主張していることには変わりがない(=真であると主張する)」ということですね。

このような点から再度見直すと、言い換えが自然にできるのは、文末が話者の<主張>になっている場合ではないかと推察できます。そして、<主張>になっていない表現でも、話し手の“心的態度”が表れて、ニュアンスの差が生じるのではないでしょうか。

・○煮るにつけ焼くにつけ、日本料理にしょうゆは欠かせない。
  →ニュアンス:どんな場合だって日本料理にしょうゆは欠かせない。

・○煮るにしろ焼くにしろ、日本料理にしょうゆは欠かせない。
  →ニュアンス:結論にあたる部分の主張が強い
         「日本料理にしょうゆが欠かせない」という事実は、
          それがたとえ煮たとしても、焼いたとしても変わるものではない。

・?煮るにつけ焼くにつけ、日本料理にしょうゆは欠かせないだろう!
  ※文末の<主張>表現が強くなると、「〜につけ〜につけ」はやや不自然
   注:不自然に感じるのは、単に慣用表現からはずれるからかもしれません

・△/○煮るにしろ焼くにしろ、私は日本料理にはいつもしょうゆを使った。
  ※不自然まではいかないが、過去の事実を述べる文としては△くらいでしょうか。
  ※しかし「自分はしょうゆが好きだ」という<主張>が読みとれるなら○でもいいかも。

以上です。今回はgoogleで例文を検索しなかったので、慣用句で固定していると書きましたが、実際はもっと使われている例があるかもしれませんが、とりあえず、こんな視点で考えてみてはどうでしょうか。

日本語教材図書館


菊 さんのコメント
 (2003/11/08 23:47:21)

Oyanagiさん、わかりやすい説明をしていただき
ありがとうございました。生徒に「煮るにつけ、、、」と
「煮るにしろ、、、、」の文の説明をしたところ、
二つの表現、「〜につけ、〜につけ」と「〜にしろ、〜にしろ」が同じ文の中に使えることを知り、そのことで、疑問に
思っていた点が納得できたようです。能力試験1級や2級になると、例文自体も(生徒にとって)むずかしい表現が
多く、どうすればわかりやすく教えられるかな、と、生徒と
一緒に「う〜ん」と考えるときもあります。かっこよく的確に、たくさん知識がある先生として指導していくのが「夢」ですが、少しずつがんばろうと思います。またよろしくお願いします。


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