「〜つつある」 [コメントする]

「〜つつある」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/13 23:09:16)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[154] 〜つつある 投稿者:REDS 投稿日:01/06/09(Sat) 13:32

こんにちは、4月から教師になったばかりの新米教師です。「〜つつある」について教えて頂きたいのですが、くろしお出版の日本語文型辞典を見ると、 完成の意味を持たない動詞には 「つつある」 は用いにくく 「彼女は泣きつつある」 とは言えない。 とあります。ここにある「完成」とは「変化の完成」のことだと思いますし、確かに「彼女は泣きつつある」は不自然に感じます。しかし、さっきまで笑顔だった彼女が何らかの原因(例えば、イジメなど)で、笑顔から泣くという表情の変化あるのなら「彼女は泣きつつある」は絶対間違いとは言えない気がするんですがいかがでしょうか?
あるいは、「彼は今ご飯を食べつつある」はどうでしょうか?この文だけだと不自然に聞こえると思うのですが、少し文を足してあげて、「重病だった彼は体調も徐々に回復し、少しづつご飯を食べつつある」にしたら多少は自然に聞こえるかなと思うのですが(全然思わない人いるかもしれませんが)
このあたりをどう生徒に説明したらいいか教えて下さい。
ちなみに教科書は中級から学ぶ日本語を使っています。「〜つつある」は25課にでてきます。
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[155] Re: 〜つつある 投稿者:きんちょ 投稿日:01/06/09(Sat) 17:06 <URL>

 たぶん、
  完成の意味を持たない動詞には「つつある」は用いにくい
ということよりも、
  「つつある」は おもに「〜テいる」が進行継続を あらわ
  さない動詞の進行継続をあらわす
ということに意味が あるんじゃないでしょうか。そういうふうに いえば、「〜テいる」で すむところに わざわざ「つつある」をつかわないでも いいということが理解できるし、「〜テいる」が進行継続を あらわさない動詞というのが、主体変化をともなう動詞なのだということの復習もできますよね。
 で、もちろん、主体の「変化」ではなくて「動作」をあらわす動詞(いわゆる「継続動詞」)にも「つつある」が つくことは あるのですが、その ばあいには、おっしゃるとおり、なにか特殊な意味をもっているときか、「〜つつも〜」「〜つつ、〜スル」のような変種といっしょに つかわれるときが おおいのではないかと おもいます。
  笑顔から泣くという表情の変化をとらえて「彼女は泣きつつある」と いうのなら、これは「なく」という動詞の意味を変化動詞にかえて つかったことに なりますね。「重病だった彼は体調も徐々に回復し、少しづつご飯を食べつつある」も同様だと おもいます。これは むしろ、「つつ」の用法を拡大させているのではなく、「つつ」に あわせて動詞の意味を変化動詞としての解釈に拡大していることになりますから、それに対する許容度というのは、どのくらい あるか わかりませんが(わたしは、多少、無理な表現だと おもいますが、いわれれば なにをいいたいかは わかります)、「つつ」に対する説明をかえなければいけないような用例でも ないと いえそうです。
(かえって、このような用例があると、「変化動詞につく」という説の説得力が ますと おもいます。)
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[156] (1)一般的なこと 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/09(Sat) 22:09 <URL>

REDSさん、<勉強部屋>へようこそ。\(^o^)/
『日本語文型辞典』(くろしお出版)の「つつある」の解説を読みました。
手元にない方もいると思うので、その部分を正確に引用しておきます。(p.231)
+++++++
完成の意味を持たない動詞には、「つつある」は用いにくく、「彼女は泣きつつある」とは言えない。
+++++++
きんちょさんが的確なレスを付けられているので、私からそのフォローということで「ている」と「つつある」をまとめたものを書きます。
4月から教え始めたということで、いろいろ大変なことと思います。「つつある」はいわゆるアスペクトに関わる表現ですが、アスペクトというとどうしても金田一氏の「動詞の4分類」というのを”じっくり”考え直さなければならない時が来ると思います。(注:現場での問題に対処するためにという意味です)
これまで、アルクの掲示板を始め「〜ている」の意味・用法について数々の投稿とそのレスがありますが、今回「つつある」についてご質問があったので、この機会に私がこれまで勉強してきた『「動詞の基本的な意味特徴」と「文法」とのかかわり』について書こうと思います。それによって、REDSさんが疑問に思われた点が解消されることを期待しております。
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以下3つのツリーに分けて書きます。
★一般的なこと
まず、学習者への指導という視点から一般的なことを書きます。
中・上級で文法(文型)を教える時には初級で学んだ文法(文型)を使って意味を説明することがよくあります。しかし、ここで注意しなければいけないことは、初級の文法(X)と中・上級の文法(Y)は、<Y→X>のように言い換えて説明できても、必ずしも<X→Y>のように言い換えられるわけではないということです。
これはより基本的な文法はより難しい文法を含むことはあってもその反対はないとう考え方です。
それを考えると以下の3点に注意して指導する必要があります。
1)用法が重なっている場合→Yのようが用法がより限定されている
2)用法に違いがある場合
3)文体的特徴がある場合
例えば、(Y)「〜せざるを得ない」と(X)「〜なければならない」であれば、
1)Yには『その人に意志とは反対に』『やむをえない』という意味が付加されます
3)Yは改まった表現で、書き言葉的
となるでしょう。
ご質問の(Y)「〜つつある」を(X)「〜ている」と比較したときには1)〜3)の全てが関わってきます。
1)Yは『進行中』(※)の意味にしか使えない(→※は次のツリーを参照)
  :「結果状態」や「経験」「習慣」などの用法はない
2)瞬間動詞についた場合には意味が異なる
  例:「死につつある」と「死んでいる」(注:これは『日本語文法辞典』にも解説あり)
3)Yは日常的な出来事の描写の場合には重々しい印象を与える。
  普通は社会的な出来事にふさわしい。
  「私の生活はだんだん変わりつつある」
  「日本の政治はだんだん変わりつつある」
このようなことから、中級での指導は、テキスト『中級から学ぶ日本語』の25課の本文と練習問題にあるように、まず内容として3)を踏まえて社会的なこと、そして文法としては1、2)を踏まえて『進行中』の意味になるものとして指導することになります。
しかし、この『進行中』というのが曲者です。
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[157] (2)「ている」と「つつある」のつながり 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/09(Sat) 22:11 <URL>

★「〜つつある」と「〜ている」の『進行中』は同じか?
さて、問題の「〜つつある」ですが、上では『進行中』(※)と書きましたが、「〜ている」の『進行中』とは同じなのかということを考えてみます。これは先のまとめの1)と2)に関係してきます。
下の図【「ている」の通常の解釈】が示すように「ている」は継続動詞に付けば『動作進行中』の意味(A)になり、変化動詞(瞬間動詞)に付けば『結果状態』の意味(B)になります。
ここで重要なことは、「食べる」という動詞から私たちは『食べるという<継続する>動作』を、「変わる」という動詞からは『変わるという<変化が成立する>事態』を第一にイメージすることです。これが動詞に内在する基本的な意味特徴です。
つまり、「食べる」という動詞から『食べたあとの状態』とか「変わる」という動詞から『変わる過程』をイメージすることは通常なく、それは<文脈>の助けを借りて顕在化する動詞の意味特徴だということです。
だから、下の図【「ている」のもう一つの解釈】が示すように、そのような<文脈>があれば同じ動詞でも別の<局面>(C、D)を取り上げることができます。
初級でAとBを教えるということは見方を変えれば、それが動詞の基本的な意味特徴を捉えているということです。通常「瞬間動詞」と呼ばれる動詞もBのように『事態が成立』する時点を意識するからそう命名されました。しかし、その後「ている」がついて『結果状態』になるのは「瞬間」がポイントではなく「変化」がポイントであることが分かって、動詞の意味特徴をとらえて、「変化動詞/結果動詞」と呼ぶようになりました。
【「ている」の通常の解釈】
(==は動作の継続)(++は結果状態の継続)
A ●:『食べている』 
     <動作の過程>
 −−−−|==●==|−−−−→ (時間の流れ)
     ↑     ↑  
    開始「食べる」終了
B ◯:『変わっている』
 −−−−|++◯++(−−−−−→)(時間の流れ)
     ↑  
    事態の成立「変わる」
【「ている」のもう一つの解釈】
C ◯:『食べている』(例:(解剖した結果)「肉を食べていますね」)
   <動作の過程>
 −−|==●==|++◯++−−−→ (時間の流れ)
   ↑     ↑  
  開始「食べる」終了=事態の成立
D ●:『変わっている』(例:「よく見るとちょっとずつ変わっているね」
   <変化の過程>
 −−|==●==|++◯++(−−→)(時間の流れ)
   ↑     ↑  
  変化の    変化の
  開始「変わる」終了=事態の成立
そこで、これらを踏まえて「〜つつある」の用法を検討してみると、
☆『進行中』を表すといってもAとは異なることがわかります。
 「山田さんは今ご飯を食べている」
×「山田さんは今ご飯を食べつつある」
☆そして「ている」とは違って、B(C)のような『結果状態』は表せないこともわかります。
 「信号が赤に変わっている」
 「信号が赤に変わりつつある」(注:上の「変わっている」とは別の意味になる)
☆そして「〜つつある」が意味的に重なるのはDの場合であることがわかります。
 「社会が少しずつ変わっている」
 「社会が少しずつ変わりつつある」
ここから一つの結論として、「〜つつある」は『変化の過程』(=『変化の進行中』)を表すと言うことができるでしょう。つまり、『変化を表す』事態であり、かつ『継続する』事態の場合に「〜つつある」でその過程にあることを示すと言えます。
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[158] (3)動詞の分類 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/09(Sat) 22:13 <URL>

★金田一氏の4分類では見えてこないこと
このような動詞の振る舞いは金田一氏の動詞の4分類では見えてこないことで、その後、藤井正という人によって提唱された「結果動詞」という概念とそれを使った4分類ではそれがかなりはっきりみてとれます。
藤井氏による動詞の4分類では<継続vs瞬間(=非継続)><結果vs非結果>という対立によって(1)〜(4)に動詞を分類しています。(『日本語教育辞典』(大修館書店)p.125より抜粋)
++++++++++++++++
(1)継続動詞で結果動詞 :散る、落ちる、着る、乗る、行く、など
(2)継続動詞で非結果動詞:読む、書く、働く、歌う、聞く、など
(3)瞬間動詞で結果動詞 :結婚する、終わる、見つかる、始まる、出発する、到着する、治る
(4)瞬間動詞で非結果動詞:一瞥する、遭遇する、知り合う、目撃する、(事件が)起こる、など
++++++++++++++++
この分類によると、(1)のものが上のまとめのDの解釈を”比較的”受けやすい動詞群で、(4)がDの解釈をまったく受け付けない動詞群です。
「〜つつある」が使えるかどうかとう視点で言えば、(1)がもっとも使われやすく、(4)が全く使えない動詞群ということになります。しかし、(3)の動詞群でも、Dの解釈をされ得る動詞もあります。それはその事態を”そうように認識する”という人間の認知の問題です。つまり、客観的には「終わる」という事態はある一点においてのみ成立することですが、「終わる」という事態に”過程”を”意識する”ことは可能だということです。そうすれば「終わりつつある」という言い方が可能になるわけです。
もちろん、藤井氏の分類は「つつある」のためにされたものではないので、その分類が必ずしも「つつある」が使えるわけではありませんが、かなりの部分重なります。
この分類は非常に意義のあるものですが、分類である以上、それはある基準によって分けられたもので、絶対的なものではないということです。より重要なことは動詞の特徴というのは1つなり2つの視点で”きれいに”分類しきれるものではなく、程度がゼロのものから、程度が大のものまでそれぞれの特徴を程度の差こそあれ、持ち合わせているということです。
注:動詞に限らず、品詞を分類するときにはこの視点は常に重要だと思います。「名詞−形容動詞−形容詞」の連続性などもその一つです。
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[159] (4)「つつある」と動詞のつながり 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/09(Sat) 22:15 <URL>

★「つつある」と動詞の基本的な意味特徴とのつながりをを考える
再度まとめると、「〜つつある」の『進行中』というのは『変化を表す』事態であり、かつ『継続する』事態の場合だということですから、その両方の特徴を基本とする(1)が一番使われやすく、そのどちらも持ち合わせていない(4)は不可能であることと言えます。
それでは、どちらか一方の場合はどうなるかというと、(3)の動詞群でもDのような『継続』の局面を認識できるものが使えることになります。(「終わりつつある」「治りつつある」など)
最後に残った(2)の動詞群はどうなるでしょうか? これまでの考え方からすれば、(2)の動詞群でも『変化』の局面を認識できれば使うことができるということになります。
それを図式化すると下のようになると思います。
【「ている」では表せないが、「つつなる」では表せること】
(比較のためにAを再掲しておく)
A ●:『食べている』 
     <動作の過程>
 −−−−|==●==|−−−−→ (時間の流れ)
     ↑     ↑  
    開始「食べる」終了
E ◎:『食べつつある』
     <変化の過程>
 −−−−|==◎==|−−−−→(時間の流れ)
     ↑     ↑  
    変化の    変化の
    開始「食べる」終了=事態の成立
           ↑
           ※通常の「食べる」という事態の成立
ここでポイントとなるのは、「食べる」という通常は『変化』を表さない動詞でさえも、「つつある」というアスペクト形式を付けることによって、<※通常の「食べる」という事態が成立する>に至る『変化』の過程にあるという認識を表すことができるということです。つまり、「食べる」という動作の捉え方がAとEでは異なるということです。
ですから、ご質問の投稿にあった、「少しずつ食べる」という動作も「ている」と「つつある」では捉え方が異なるために、A「(今)(嫌いなものだけれど)少しずつ食べている」というのは『動作の過程』として捉えているもので、E「(手術後)(ご飯を)少しずつ食べつつある」というのは『変化の過程』として捉えているものだと言えます。全然食べられなかった状態から通常の状態への変化の過程として「食べる」を捉えているということです。
「泣きつつある」といのも全く同じように捉えることができます。動詞の基本的な意味特徴としては『変化』の意味はないけれども、「全く泣くという状況でない」段階から「だれが見てもて泣くと言える状況」までの『変化の過程』を認識することで、「つつある」というアスペクトが使用できるということでしょう。くどいようですが、それは「(今)泣いている」という事態の捉え方とは全く異なります。
★「完成の意味を持たない動詞には用いにくい」の意味を考える
以上のことを踏まえて『日本語文法辞典』の解説を考えると、Dの局面が容易に想定できる動詞(藤井氏の分類では1にあたるもの)というのは『変化の過程』を想定できる動詞ということです。変化という事態が成立するということを「完成」と言い表すことができますから、「完成の意味を持たない動詞」というのは『変化の過程』を想定できない動詞ということになります。
そこで、最終的にまとめるてみると、
(ア)『変化の過程』とは『変化を表す』事態で、かつ『継続する』事態を表すものと定義する。
(イ)この二つの要素を基本的な意味特徴としてもつ動詞は「つつある」が使われやすい。(「散りつつある」「変わりつつある」「増えつつある」など)
(ウ)どちらか一方の要素しかもたない動詞は、<話者がそのような過程を認識する>ことで、<文脈の助け>を借りて、「つつある」を使うことが可能だ。
(エ)ただし、この二つの要素のうち、主に『変化を表す』事態を表す動詞の場合にはそこに『過程』を意識することは容易だが(「死につつある」「終わりつつある」「治りつつある」など)、主に『継続する』事態を表す動詞の場合はそこに『変化』を意識することはかなり文脈に依存するので使われにくいと言える。(「食べつつある」や「飲につつある」や「泣きつつある」など)
(オ)そして、この二つの要素を全くもたない動詞は「つつある」は使えない。(×「一瞥しつつある」×「知り合いつつある」など)
「完成の意味を持たない動詞には用いにくい」というのは上の(エ)のことを言っているということになります。
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以上ですが、不明な点やご意見があればご遠慮なくご投稿ください。
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