過去ログ(管理人) さんのコメント
(2003/10/16 14:26:06)
※これは過去ログを整理したものです。(管理人)
No.809
投稿時間:03/07/27(Sun) 09:49
投稿者名:みさん
Eメール:
URL :
タイトル:「おちついた」雰囲気、なぜ過去形?
リラックスした雰囲気で話すことが出来た、
落ち着いた雰囲気の喫茶店、などというとき、
なぜ「落ち着いた」と、過去形を使うのかと
生徒に聞かれて、いい答えが見つからずにいます。
説明をご存知の方、教えてください。
No.810
投稿時間:03/07/27(Sun) 14:39
投稿者名:Oyanagi
Eメール:oyanagi@tky2.3web.ne.jp
URL :
タイトル:「〜た」が形容詞のように働く場合
みさん、こんにちは。日本語オンラインの掲示板ではきんちょさんがレスをつけていますので、私のほうは、過去ログに役に立ちそうなものがあったので、引用しておきます。
※古いものは、「過去ログ3」におさめられていますが、ツリー状にならず、レスもつけれても引き上げられないので、引用して、このスレッドにつけておきます。
みさんは、「リラックスした(雰囲気)」「落ち着いた(雰囲気)」を挙げていますが、このように「〜た」の形で、“形容詞”のように働く表現は多く存在します。
「あの人ちょっと変わった人だね」という時の「変わった」もそうですね。これは、5年前と比べて変わったという意味ではなくて、他の人と比べて「変わっている」という意味ですね。形容詞のように働きますから「とても」「少し」のような程度を表す副詞をつけることもできますよ。
「とてもリラックスした雰囲気で話ができた」など
それでは、下に引用しておいきましたので、不明な点があったらまた投稿してください。
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[377] 「〜ている」がどうして「〜た」になるか 投稿者:イラヒ 投稿日:02/05/18(Sat) 00:49
ここ数年来の疑問です。
状態を表す「〜ている」が連体修飾になると、「〜た」にしかならないものと、「〜た」「〜ている」両方使えるものがありますね。
「あの人はいつも落ち着いている」
「このはさみの先端は尖っている」
「あのおじいさんは腰が曲がっている」
「その子はいつも赤い靴を履いている」
「あの人は肥っている」
これらは連体修飾にしたら、両方使えますよね。(「落ち着いている人」より「落ち着いた人」の方がしっくりくると思いますが)
「彼の作品は誰よりも優れている」
これは、「優れた作品」にしかならないですね。
まあ、ここまではいいのです。
「眼鏡をかけた人」は、
ほらほら、黒縁のごつい眼鏡をかけたひとがいるでしょ。あの人が田中さ んよ。
のように、ある人の恒常的な状態を表すときに使う
「眼鏡をかけている人」は
ほら、あそこに黒縁のごつい眼鏡をかけて立っている人、あの人が田中さんよ。
のように、今目の前で見ている時にぴったりする表現
というのも納得できます。
で、私の疑問は、何故、状態を表す「〜ている」が連体修飾となったときに「〜た」となるか、その理屈なんです。いろいろ調べても出て来ないのですよ。私自身が思うには、
状態(結果の存続)は結局英語でいうところの現在完了である。
現在完了は過去から現在までをふくんだものである。
He came here yesterday.
は昨日という過去の一点のことを言っているが、
Spring has come.
は時間を過去から現在まで続いているものと見ている。
「眼鏡をかけている」は今よりも過去の時点で「眼鏡をかけた」、その状態が現在まで続いている。これは、英語の現在完了と同じである。現代日本語では「過去」を表すのも「完了」を表すのもテンスとしては「た」一つである。したがって、連体修飾になると状態を表す「〜ている」は「〜た」になり得る。
ということなんですが・・・・調べた限り誰もそんなことを言っていないようで、もしかしたら私はとんでもない思い違いをしているのかも知れません。
皆様のご教示をお願いしたく、投稿いたしました。
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[378] 補足 投稿者:イラヒ 投稿日:02/05/18(Sat) 03:09
私は英語の文法に関しては、中学・高校で習った以上の知識はありません。
英語では現在完了も「テンス」ですよね。たしかpresent perfecto tens と習いました。英語の時間に「アスペクト」という言葉を聞いたことはないので、英語にアスペクトというものがあるのかどうかさえ知りません。でももしかしたら、英語の世界でもいろいろな文法があって、「現在完了はテンスではなく、アスペクトだ」なんていう話もあるのでしょうか。進行形は progressive form ですから、テンスともアスペクトとも違うものと意識されているのでしょうか。結果の存続の「〜ている」は英語の現在完了と同じだと言いながら、英文法を知らなくて、誠にお恥ずかしい限りです。
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[379] 私の補足と整理 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/05/19(Sun) 04:37 <URL>
イラヒさん、こんにちは。
> ここ数年来の疑問です。
これは放っておけないですね。なんとか解決したいですね。
> で、私の疑問は、何故、状態を表す「〜ている」が連体修飾となったときに「〜た」となるか、その理屈なんです。いろいろ調べても出て来ないのですよ。私自身が思うには、
>
> 状態(結果の存続)は結局英語でいうところの現在完了である。
> 現在完了は過去から現在までをふくんだものである。
> He came here yesterday.
> は昨日という過去の一点のことを言っているが、
> Spring has come.
> は時間を過去から現在まで続いているものと見ている。
> 「眼鏡をかけている」は今よりも過去の時点で「眼鏡をかけた」、その状態が現在まで続いている。これは、英語の現在完了と同じである。現代日本語では「過去」を表すのも「完了」を表すのもテンスとしては「た」一つである。したがって、連体修飾になると状態を表す「〜ている」は「〜た」になり得る。
「〜た+名詞」が「〜ている+名詞」を表わす理由はイヒラさんがお考えのように「〜た」にはテンスだけでなくアスペクトを担っているからだと思います。
■ちょっと補足
英語との比較では、英語では過去分詞が形容詞として使われることと共通点があるでしょう。
・腐ったりんご = rotten apple
このように「変化」を表わす動詞は日本語では「〜た」が結果状態を表わしますよね。
これはたくさんあります。(錆びる→錆びたパイプ、とか)
この種類の動詞の『〜た』をみると、完了の「た」と繋がっていることはもっとはっきりしますね。
■「〜ている+名詞」と「〜た名詞」
この二つの違いはイラヒさんも書かれているとおりだと思いますが、ちょっと整理しておきます。
「〜ている」には次の2つの場合があります。
基本はAです
(A)<時間軸上>のアスペクトの概念で捉えられる場合
→つまり、過去との比較で現在の状態を描写する
例:「形が(きのうと比べて)変った」<完了:アスペクト>
→「(今)形が変っている」<状態:アスペクト>
例:「(去年と比べて)太った」 <完了:アスペクト>
→「(今)太っている」<状態:アスペクト>
次にAの<時間軸上>の概念から焦点がはずれるとBが生まれます。
(B)<他者との比較>において現在の状態を描写する
例:「形が(他のものと比べて)変っている」<状態:形容詞的>
例:「(他の人と比べて)太っている」 <状態:形容詞的>
そこで、『連体修飾』を考えると、(1)と(2)の二つの場合がありあます。
(1)Aの概念が残っている場合(=アスペクト的な場合)は
「〜ている+名詞」も「〜た+名詞」も使えます
でも、
(2)Aの概念が残っていない/意識されない場合(=形容詞的な場合)には
「〜た+名詞」が自然になります
例:(1)◯眼鏡をかけている人、◯眼鏡をかけた人
◯太っている人 、◯太った人
↓述部に「〜ている」はOK
(2)?変っている人、 ◯変った人 (比較:◯あの人は変っている)
×堂々としている体格、◯堂々とした体格 (比較:◯体格が堂々としている)
?優れている作品、 ◯優れた作品 (比較:◯この作品は優れている)
注:「(性格が)変った」→「変っている」という意味ではないので
「変っている人」は?となる
重要なことは、これははっきり区別できるわけでなく、”連続”していることです。
だからやや不自然という場合もあります。
ただ、はっきりしていることは、(B)の概念は<形容詞>と同じだということです。
ですから、意識の中で形容詞のように使われていると感じれば、「〜た+名詞」が自然になるのではないかと思います。
例:?晴れている空、◯晴れた空
↑「青い空」
注:文法上は「晴れた」→「晴れている」で「晴れている空」と言えるはずですが、
実際は<形容詞>のように使う意識が働いて、「晴れた空」が優勢になると思われます。
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[380] まとめ(とりあえず結論) 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/05/19(Sun) 04:39 <URL>
■なぜ連体修飾で「〜ている」が「〜た」になるか?
さて、イラヒさんの疑問に対する私の考えですが、以上のことをまとめると、
連体修飾で「〜ている」の意味で「〜た」が使われるのは
★第一に、「〜た」がアスペクト(完了)を担っていること。
→これは「〜た」を「〜ている」の代わりに使うことができる理由になる
(※<完了>アスペクトの形式が<状態>アスペクトに拡張されうるということ)
・シャツがかわいた → シャツがかわいている
→ かわいたシャツ (「乾いている」という意味)
★第二に、「〜ている」には2つの用法があること。
「〜ている」は<アスペクト>として状態を表わすだけでなく、
”形容詞”のように<他者との比較>で描写する場合にも使われる。
その場合に、<アスペクト的>な用法の場合、つまり描写される事態が、
時間軸上で<過去との比較>が想定できるものは「〜ている+名詞」が使えるが、
それが想定できない、または焦点がはずれる場合は「〜ている+名詞」が使えない。
そこで、「〜た+名詞」を使うと考えられる。
→これはなぜ「〜ている」ではなく「〜た」が自然になるかの理由になる
→これは形容詞の中で、その反対語に相当する形容詞がない場合に、
動詞の「〜た」の形が使われる理由になる
*時間軸上の概念があるかどうかで「〜た+名詞」が◯か?に分かれる例
・(先が尖った) → 先が尖っている
◯先が尖っている鉛筆 ◯先が尖った鉛筆
?(先が)尖っている鼻 ◯(先が)尖った鼻
↑ ↑
<アスペクト的> <形容詞的>
*反対語としての形容詞が欠けて、動詞の「〜ている」を使う例
(時間軸上の概念があるかどうかで「〜た+名詞」が◯か?に分かれる)
・その答えは『間違っている』 <=> その答えは『正しい』
→◯間違っている答え(にバツをつける)
(<アスペクト的>:「答えが間違った」→「答えが間違っている」)
◯間違った答え(にバツをつける)
(<形容詞的>:正しくない答え)
・その考えは『間違っている』 <=> その考えは『正しい』
→?間違っている考え(を正す)
(<アスペクト的>:?「考えが間違った」→「考えが間違っている」)
→◯間違った考え(を正す)
(<形容詞的>:正しくない考え)
*そもそも時間軸上の概念がない例
(「〜た+名詞」しか使われない)
・×「(去年と比べて)堂々とした」 (<アスペクト(完了)>としての用法がない)
◯「(他の人と比べて)堂々としてる」<形容詞的>
→◯「堂々とした態度」 <形容詞的>
→×「堂々としている態度」 <×アスペクト的>
こんなふうにまとめてみましたが、いかがでしょうか。
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[382] 参考文献(二冊) 投稿者:Oyanagi 投稿日:02/05/19(Sun) 04:44 <URL>
最後に参考文献を挙げておきます。もし入手できるようでしたら、ご覧ください。
■参考図書
*アスペクトの「ている」と「た」について日本語教師には超オススメの本
『日本語のシンタクスと意味II』寺村秀夫(くろしお出版)
私流に言えば
「文法というのはかくのごとき連続している」ということをわかりやすく説明しています。
日本語教師が文法の知識を深めるには非常にいい参考書です。
特にp.137-143が今回の問題と関係しています。
<過去との比較><他者との比較>という考え方はこの本によっています。
*英語との比較について、本格的な勉強をしたい方にオススメの本
『日英語対照研究シリーズ5 動詞意味論』影山太郎(くろしお出版)
専門書ですが、英語と日本語の「スル言語」「ナル言語」を
別な観点から論じた(私にとっては)名著です。
ここで、今回の問題と関係することとして「完了形容詞」の項があります。
そこで「〜た」も論じられています。特にp.130-134
(ただし、最初から読まないと、論点が理解できないかもしれません)
No.816
投稿時間:03/07/28(Mon) 12:53
投稿者名:みさん
Eメール:
URL :
タイトル:Re: 「〜た」が形容詞のように働く場合
Oyanagiさん、くわしいご説明ありがとうございます。
リラックスした雰囲気で話すことが出来た、
は現在完了で説明できるものの、
落ち着いた雰囲気の喫茶店、は説明できず困っていました。
こちらは形容詞的といえますね。
おすすめの本、ぜひ購入してみます。
ありがとうございます。
No.817
投稿時間:03/07/29(Tue) 10:54
投稿者名:きんちょ
Eメール:ak@chuwol.com
URL :http://www.chuwol.com/
タイトル:Re^2: 「〜た」が形容詞のように働く場合
こんにちは。
> リラックスした雰囲気で話すことが出来た、
> は現在完了で説明できるものの、
> 落ち着いた雰囲気の喫茶店、は説明できず困っていました。
日本語オンラインの掲示板のほうにレスをつけましたが、最初に「なぜ過去形なのか」という質問が かかれていたので、かならずしも「過去形」という いいかたをする必要がないということをぐだぐだと説明してしまいました。
要するに みさんさんは そんなことは わかっていて、「現在完了」というだけでは説明が つかないという点で なやんでいたのですね。
余計な説明をしてしまい、もうしわけありませんでした。
> こちらは形容詞的といえますね。
それで かたづいてしまうのなら、「なぜ過去形?」と なやむ必要も なかったようにも おもいますが、たぶん類例をいくつか だして いけば、「タ」には形容詞をつくる用法も あるのだ(無理にテンスやアスペクトと むすびつける必要はない)というふうに納得してもらえるかもしれませんね。
日本語は語彙としての形容詞が 不足ぎみだと いわれることが あります。きっと、それをおぎなうために いろいろな方法をつかって形容詞のように機能する ことばの かたちをつくりだしているのではないでしょうか。
No.818
投稿時間:03/07/29(Tue) 13:54
投稿者名:みさん
Eメール:
URL :
タイトル:Re^3: 「〜た」が形容詞のように働く場合
日本語オンラインの方では、詳しいレスありがとございます。
お返事かいていなくてごめんなさい。
あちらの方では、修飾関係にも話がおよんでいたので、
そちらを自分なりに解釈してから書き込もうと思っていたので
遅くなってしまいました。
「落ち着いた雰囲気の喫茶店」
必ずしも形容詞的ともいいきれないかもしれませんが、
生徒を混乱させないように、今回は
「形容詞的」と説明することにします。
どうもありがとうございました。
> 日本語は語彙としての形容詞が 不足ぎみだと いわれることが あります。きっと、それをおぎなうために いろいろな方法をつかって形容詞のように機能する ことばの かたちをつくりだしているのではないでしょうか。
なるほど。わたしは英語圏で教えているのですが、
たしかに英語には形容詞が豊富ですね。
とくにほめ言葉とか。
歯が浮くような表現がすらすらと出てきますよね。