「つまらない」と「くだらない」 [コメントする]

「つまらない」と「くだらない」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/13 23:00:54)

※これは過去ログを整理したものです(管理人)

[145] 類似語 投稿者:ゴン蔵 投稿日:01/06/05(Tue) 18:22

初めまして。養成学校で勉強中です。普段良く使う言葉で、だけどよく考えると違いがいまいち分からないってことありますよね。そのなかで、「感動する・感激する」「つまらない・くだらない」をもし生徒に分かりやすく説明するとしたら、どのように言えばいいのでしょうか。教えてください。よろしくお願いします。
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[150] 「つまらない」と「くだらない」(上) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/06(Wed) 00:38 <URL>

ゴン蔵さん、<勉強部屋>へようこそ。\(^o^)/
類義語の違いについての説明は日本語教師にとって頭の痛いことですが、避けては通れません。
<勉強部屋>ということで、私も勉強させてもらいました。
今回ご質問のあった「つまらない」と「くだらない」について、実際に私が類義語を考える際によく使うアプローチを紹介しながら個人的なコメントをちょっとだけつけさせていただきます。ゴン蔵さんは養成中ということなのでアプローチも参考になるかなと思います。
最後に「感激する」と「感動する」についてもちょっと触れておきました。私自身答えがあるわけではないので、これを参考にご自身でも考えてみてください。
この掲示板をご覧に方で、いいアイディアがある方はアドバイスお願いします。
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☆大きな流れ
(1)国語辞典で調べる
(2)どの部分で意味が類似しているのかを確認する
(3)類似している部分について考える
(4)さらに類義語辞典を参照する
(5)さらに専門的な辞典を参照する
(6)学習者への説明の仕方をまとめる
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☆具体的に
(1)について
理想的には中辞典を2種類と大辞典を1種類手元に置くのがいいと思います。
大辞典では『大辞林』がインターネットの「Goo」のサイトで利用ができますよ。
中辞典では意味の説明に定評がある『新明解国語辞典』(三省堂)とそれとは対照的な用例中心の辞書が一冊あるといいと思います。ちなみに、私は『現代国語例解辞典』(小学館)を使っていますが、類義語についての対照表があってちょっとしたことならこれがけっこう役に立ちます。ご質問の2組の単語も対照表があります。
(2)について
「つまらない」と「くだらない」について、今回は『大辞林』のものを引用します。
+++++++<引用開始>+++++++++
【つまらない】
1)満足感がなくてさびしい。心が楽しくない。
  「話し相手がなくて―ない」
2)興味がもてない。おもしろくない。
  「―ない小説」
3)とりあげるだけの価値がない。取るに足りない。下らない。
  「―ないものですが、召し上がって下さい」「―ないうわさ」
4)ばかばかしい。不利益だ。
  「盗まれては―ないから、金庫に保管する」
5)得るところが少ない。するかいがない。
  「彼も―ないやせ我慢をしたものだ」
【くだらない】
問題にするだけの内容や価値がない。とるに足りない。つまらない。
「―ない本」「―ない洒落」「―ない人間」
+++++++<引用終了>+++++++++
※(下)に続きます
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[151] 「つまらない」と「くだらない」(下) 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/06(Wed) 00:41 <URL>

※(上)の続きです
(3)について
この意味の説明から「つまらない」が「くだらない」と意味上類似しているのは3)であることがわかります。
★この時点で「つまらない」の1、2、4、5)の意味の場合は「くだらない」は使わないと説明することが可能です。(※ただし辞書の分類は完全なものではないので、場合によっては類似する意味があります)
そこで、問題は意味が類似している3の場合をどうするかということになります。
ここで2つのアプローチがあります。
A:どちらも使える用例についてその違いを考える
B:どちらか一方のみが使える用例があるかどうか考える
 (一緒に使われる単語、それが使われる構文、そして慣用句/表現があるかどうか調べる)
どちらにしても重要なのは『例文を観察すること』『例文を作ってみること』です。その作業の中から何か違いが見えてくるはずです。もちろんAとBは別々にあるのではなくお互いに関係していることが多いです。
★大辞林の「つまらない」の3)を見ると、「つまらないものですが、どうぞ召し上がってくだささい」とは言いますが、「くだらないものですが〜」とは言わないことがわかります。これはBのアプローチです。
さらに大辞林の「くだらない」の用例と「つまらない」の3)の用例を見ると、どちらも言えるものがあることがわかります。これはAのアプローチです。Aのアプローチでは2つに視点が必要になります。
A−1 意味の重なりを考える
    :XとYとがどんな関係でつながっているのかを考える
     (ア)XがYの上位語(YがXに含まれる場合)
     (イ)XとYが類義語(XとYの意味の円が重なっている)
        →XとYが同じ例文でも意味に差が出る
A−2 スタイルを考える
    :話し言葉なのか書き言葉なのか、日常語なのか専門用語なのか等
★「つまらない」と「くだらない」はA−1−(イ)の場合だと考えられます。
A−1−(イ)のアプローチは日本語教師にとっては”試練”です。つまり、自分の語感を頼りに内省しながら両者の意味のニュアンスの違いを探るわけです。
もしいい成果が上がらなかった場合には(4)類義語辞典を参照したり(5)専門的な辞典を参照したりすることになります。Aのアプローチでどのような結果が得られるかは個人個人異なるので、より客観的なものを目指すなら他の方の意見も聞くことが必要になるでしょう。
また、辞書には”現代語”としてほとんど使われなくなった意味や用例も挙がっているので、そのようなものは日本語学習者にとっては有益な情報ではないと言えますから、混乱を避けるためにもあるところで線を引かなければならないでしょう。
★私の語感では、「くだらない」のほうが『低い価値判断』を下す専門の単語なので、その分意味が強いように感じます。一方「つまらない」は「面白さを感じない」という意味を持つので、「つまらない本」と「くだらない本」とではその本がどんな本であるかかなり意味の違いがあるように思います。「つまらない人間」と「くだらない人間」もどんな人間を差しているか意味の違いがあるように思います。いかがでしょうか?
(4)(5)について
類義語辞典はいろいろ出ていますが、用例が豊富なものが1冊あればいいでしょう。
専門的な辞書では、日本語教師になったらぜひ手元に置いておきたい『基礎日本語辞典』(角川書店)。
※ただし情報による出版元では再版をしないので、在庫のみとのこと。
基本的な語彙について非常に丁寧に分析したものでは『ことばの意味1〜3』(平凡社選書)があります。
副題にあるとおり「辞書に書いてないこと」がわかってとって重宝しています。
あと、辞書ではありませんが、『言葉に関する問答集』(文化庁)も言葉の使われ方を客観的に知るにはなかなか役に立つ本です。過去の冊子をまとめた「総集編」が出ていて、私はこれを使っています。
※裏技としては英和辞典などで調べるというのも意外な発見があります。
『会話作文 英語表現辞典』(朝日出版社)などはけっこう重宝しています
(6)について
(3)〜(5)で違いについてある程度理解できたら、それをどのように学習者に説明するかということになります。意味の違いそのものは(ネイティブにとってはそれが感じ取れても)学習者に説明してもピンと来ないことが多いので、用例を出しながら説明するのが効果的です。
その際には、辞書にあった用例だけでなく、よりその違いが理解できる例文を出すことも必要です。
★例えば、「この映画はつまらない」→「ストーリーが単調だ」(面白さがない)
     「この映画はくだらない」→「下品だ」(見る価値がない)
以上、「つまらない」「くだらない」について、私のコメント(★)を交えながら類義語を考えるときのアプローチを書いてみました。
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[152] 「感動する」と「感激する」 投稿者:Oyanagi 投稿日:01/06/06(Wed) 00:44 <URL>

ところで、「感動する」と「感激する」についてですが、大辞林の説明では意味で違いが今一つはっきりしません。でも、先に紹介したアプローチでなんとか説明できるような気がします。
+++++++<引用開始>+++++++++
【感動】
(名)スル  ある事に強く感じて大きく心の動くこと。
      「深い―を受ける」「名画に―する」
【感激】
(名)スル  ある事に感じて感情が高まること。はげしく心をうたれること。
      「―のあまりに泣き出す」「名演奏に―する」
+++++++<引用終了>+++++++++
(3)Bにあたるものとしては、「◯◯に感動を受ける(与える)」とは言いますが、「感激を受ける(与える)」とはいいませんね。それから『現代例解国語辞典』にある対照表によると、「褒められて感激する」とは言いますが、「〜て感動する」とは言わないとあります。
「映画俳優にサインしてもらって感激した/?感動した」もその例になるでしょうか。
(3)Aにあたるのは、「◯◯に感動する/感激する」の例文ですね。ただ、◯◯に入る単語に何か特徴があるのか、もっと例文を観察しないと何とも言えませんね。「感動」する対象と「感激」する対象は共通したものがあるようですが、違いもあるような気がします。
同じ単語が入ってもやはりニュアンスの差を感じますよね。私は「感激」というと、どしても『秀樹、感激!』というフレーズが思い浮かんでしまって・・・。(^_^;(ちなみに「秀樹」とは西条秀樹のことです)
「感激する」はどちらかというと感情が表に出た様子をイメージして、「感動する」は心にじーんと来る様子をイメージしますが、いかがでしょうか?
もちろん「感激に浸る/を覚える」という言い方がありますから、「感激」が必ずしも外に現れた感情というわけではないと思いますが。
このへんからさらにもう一歩踏み込むと何か見えてくるような気がします。
これについてはさらに考えてみたいと思います。
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