般若心経 漢字発音について
般若心経末部:掲諦(又は羯帝)の「掲(羯)」は「ギャー」 という音です。日本漢字音には「ギャー」は見当たりません。私の知っている範囲で、辞書で音索引で「ギャ」があるのは『字通』『学研漢和大字典』。『字統』にはない。また『精選版 日本国語大辞典』にもない。
どうして「ギャー」という発音に変化したのか、それは何時頃からか、興味が湧きます。
玄奘が漢訳したとされる原文はサンスクリットです。
その箇所を岩波文庫『般若心経 金剛般若経』173頁を引用しますと
羯諦羯諦波羅羯諦 gate, gate, pāragate です。
「gate, gate」をサンスクリットで「ギャーテー」とは私が調べた範囲では発音されません。
漢字「掲」の日本漢字発音は「ケイ」「ケツ」、現代中国語発音は(jie 1声)
漢字「羯」の日本漢字発音は「ケツ」、現代中国語発音は(jie 2声)
です。
CD,DVD、カセット・テープでは
現代中国の「般若心経」ではjieと発音しています。韓国の「般若心経」も「ギャー」とは発音していません。タイの般若心経はサンスクリットでギャーではありません。{このCD解説には、サンスクリットにルビがついており、タイ文字でなく漢字で書かれている。振り仮名でなく振り漢字です。}
水田紀久 論文『宋音般若心経』
http://db3.ninjal.ac.jp/SJL/getpdf.php?number=0480931010
では
漢字「掲」の日本漢字発音は「ケツ」としています。
般若心経の中の次の諸文字について
今回考えません。
薩サツ →ソ。婆バ→ワ。僧ソウ→ソ 。莎サ →ワ
については今回取り上げず、掲又は羯「ギャー」のみにしておきます。
この問題について
大本山東福寺、妙心寺、建仁寺、曹洞宗宗務庁と禅文化研究所にメイルしました。
回答待ちは曹洞宗宗務庁と禅文化研究所でひと月待っています。
その中の一つを引用します。
★桃井 祐一 様
メール拝見させて頂きました。
お問い合わせの件でございますが、
桃井様のおっしゃる通り、「羯」の読みだと「けつ」という読みになります。
ただ、正しくは「羯」は本来の文字ではなく、この漢字の右下の部分が「ヒ」となる漢字です。
この字が日本では対応するものがなく、経本等でもこの字に近い「羯」の字で表記されているようです。
何卒宜しくお願いを致します
建仁寺
【以下桃井のコメント。 建仁寺へメイルは出さず。
「羯」は誤りで、正しい文字は「羊編に“掲”の旁を宛てた文字」である。その文字は日本で、“ギャ”と発音する。この文字は原文にあるが、日本にはなく(中国にはあるということですね?)、本来の文字でない「羯」を代わりに表記している。
お尋ねいたします。
★この正しい文字は中国の漢字辞典にあるのでしょうか?その発音はどのようなものでしょうか?
★中国にある漢字で日本にない漢字があるのでしょうか?
{揭と掲は同字で、「揭」は旧字(『新潮日本語漢字辞典』934頁)}と説明しています。}】
以上です。
MOMOI
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