oyanagiの勉強部屋 掲示板


(since 2006.10.20) (今日) (昨日)

閲覧は自由にできますが、投稿するにはユーザー登録が必要です。(だれでも自由にできます)
 【こちら】の利用規程に同意の上、登録手続きにお進みください。

スレッド作成 || スレッド一覧 || ウォッチリスト || 終了

このスレッドをウォッチリストに追加 (ウォッチリストから削除)
否定の「不」と「無」 スレッド削除
No.42-1 - 2013/10/08 (火) 14:17:45 - MOMOI
相撲解説の北の富士さんが
「不元気」という言葉を用いました。
不自然を感じません。自然で無いとも感じません。
氣力が無い、「無気力」も普通に聞こえます。
元気が無いも、不自然ではないようです。「不気力」とは言わないようです。
さて、私たちは「不」と「無」をどのように使い分けているのでしょうか?
お教えください。
以上
 
このスレッドにメッセージを投稿


4件 ( 1 〜 4 )  新 | 古  1/ 1. /1 [ ▼降順 | ▲昇順 ]

否定の「不」と「無」 削除/引用
No.42-1 - 2013/10/08 (火) 14:17:45 - MOMOI
相撲解説の北の富士さんが
「不元気」という言葉を用いました。
不自然を感じません。自然で無いとも感じません。
氣力が無い、「無気力」も普通に聞こえます。
元気が無いも、不自然ではないようです。「不気力」とは言わないようです。
さて、私たちは「不」と「無」をどのように使い分けているのでしょうか?
お教えください。
以上

母語話者の悩み・・・ 削除/引用
No.42-2 - 2013/10/08 (火) 20:25:39 - oyanagi◆t0YRevJB
MOMOIさん、こんにちは。当サイトの管理人のoyanagiです。このサイトもだいぶ暇になってしまいましたが、まだまだご訪問くださる人がいるとは嬉しい限りです。

さて、ご質問の件ですが、母語話者なら自然に使い分けしていることでも、あまりなじみのない言葉に出会うと、「さて、これはどうなのかな…」と首を傾げることがあります。自然に使い分けているということは、おそらく使分けに「傾向」みたいなものがあるのでしょうし、迷うということはおそらく「重なり」のようなものがあるからでしょう。

そこで、手始めに国語辞典(ここではネットで調べられる大辞林)の「不」と「無」をひくと、次のように書かれています。
===大辞林より抜粋===
「不」
[接頭]名詞または形容動詞の語幹に付いて、それを打ち消し、否定する意を表す。
1 …でない、…しない、などの意を添える。
   「―必要」「―一致」「―確か」「―行き届き」
2 …がない、…がわるい、…がよくない、などの意を添える。
   「―人情」「―景気」「―出来」「―手際」
「無」
[接頭]名詞に付いて、そのものが存在しないこと、その状態がないことの意を表す。
    「―感覚」「―資格」「―届け」「―免許」
======抜粋終わり=====

この説明を見てわかることは、形容詞(形容動詞)や動詞の意味があるものを否定する場合は「不」が使われる傾向があって、「無」は現れにくいだろうと予測できます。そして、「重なり」を見ると、名詞と一緒に使う場合で、「〜がない」という意味になる場合だとわかります。

たしかに、いくつか用例を調べてみると、
「人情」がないのは、「不人情」で、「慈悲」がないのは、「無慈悲」のように、「〜がない」という意味ではどちらもありそうですが、手がかりとなるのは、「不」のほうは上の辞典の説明のように、「〜がない」ことが「〜がわるい」とか「〜がよくない」のような意味につながっている点です。です。
「無」のほうはそれが「存在しない=ゼロ」というような意味が強く出て、「不」のほうは「〜がない/足りなくてよくない」というような意味が強くでるのかもしれません。「人情」がゼロの人はいないけれど、それが足りないのが「不人情」で、まさに冷酷=慈悲ゼロと見られるのが無慈悲といったところでしょうか。まあ、あまり言いすぎるとこじつけになりますが、そのような「傾向」ということで。

次に「重なり」について考えると、同じ語に付いていても、上のような傾向によって意味が分かれていることが予測されます。少し例を見てみましょう。

1) 不法(法に適合しない)
   無法(法がない)

2) 不能(可能ではない)
   無能(能力がない)

上の二つでは、だいたい上の傾向に従っているのではないでしょうか。
つまり、「不」のほうは、動詞の意味が入ってきて「〜しない」とか「〜できない」のような意味で対立していることがわかります。ところが「無」のほうはそれがゼロということで存在しないことを表しています。

しかし、中には説明がつかないものもあります。こういうのはかなり慣習に縛られていて、慣用表現として母語話者に記憶されているのだろうと思います。
※慣用で決まっている:不要、不用、無用

(続く)

「不元気」って? 削除/引用
No.42-3 - 2013/10/08 (火) 20:45:19 - oyanagi◆t0YRevJB
さて、前置きが長くなりましたが、お尋ねの「不元気」についてです。

たしかに、あまり馴染のある言葉ではありません。
ためしに国立国語研究所が公開している現代書き言葉均衡コーパスで
検索すると一件もヒットしません。
「少納言」http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/

しかし、ネット検索するとある程度ヒットします。最近では「不元気症候群」という名称の病名を紹介する記事がヒットするようです。この名称自体は最近のことのようですが、例えば、googleの書籍検索をすると少し古い用法もヒットすることがわかります。

googleの書籍検索 http://books.google.co.jp/bkshp?hl=ja&tab=wp
 ※検索の場合は、コーテーションを入れて検索 "不元気"

ということで、以前から使われていたようだけど、まだ一般に定着した表現ではないようです。

それでは、「元気だ」の反対の意味を表す言葉が必要なときに「不」を付けようか、それとも「無」を付けようか、という選択に迫れれて、どちらを選ぶかですね。先の投稿に書いた「傾向」に従えば、「元気な」という形容詞の意味を意識すれば「不」が使われることになるでしょう。確かに、「元気」を名詞と考えて、「元気がない」という意味で考えれば「無元気」もあり得たわけですが、「不人情」と「無慈悲」で示したように、「元気が不足して良くない状態」という意識が働いて「不」のほうがいいと判断されたのかもしれません。

参考までに、「神経がない」つまり「他人のことを考える神経がない」という意味で使うのは「無神経」です。ここでは「無慈悲」と「無」と同じような心理が働いているように思います。

「元気だ」の反対は「元気ではない」「元気がない」と言えばいいわけですが、上に示しように何か名称を作る場合には、漢語表現が必要になり、「不元気●●●」のような語が生まれるのだろうと思います。その場合も一応「無」「不」のような選択があるのですが、辞書に書かれているような<傾向>に従って、どれが適当か判断されるのではないでしょうか。

ただし、傾向はあくまで傾向で、いろいろな(成立)要因が重なっていて、一筋縄ではいかないのも事実です。いろいろな例を集めて観察してみると面白いと思います。

最後に参考になる論文(ウェブ上で見られてダウンロード可能なもの)を挙げておきます。
■「接辞「不」「無」をめぐって」
  http://glim-re.glim.gakushuin.ac.jp/bitstream/10959/2123/1/kokugokokubungaku_17_19_28.pdf
 ※中ほどにリストがあって、どのような意味のときにどんな語があるか分類されていて参考になりますよ。

お礼 削除/引用
No.42-4 - 2013/10/28 (月) 13:59:40 - MOMOI
『接辞「不」「無」をめぐって』須山名保子
大変参考になりました。

いつも有益、適切な説明、深謝申し上げます。
お礼の返事が遅くなり、恥ずかしいです。

MOMOI
4件 ( 1 〜 4 )  新 | 古  1/ 1. /1 [ ▼降順 | ▲昇順 ]



暗証キー
名前
メール
タイトル
本文 通常モード 図表モード HTMLモード 本文中のアドレスを自動リンク
    
暗証キー フォーム情報を保存  スレッド位置保持  解決


★ワンポイント
 ※ "#{xx}" で当該スレッドへリンクを設定できます。(例: #{10})
 ※ ">>xx" で同一スレッド内の当該メッセージへのリンクを設定できます。(例: >>26 >>1-100)
 ※ 同一人物からの投稿かどうか判断できるように、パスコードのご利用をお勧めします。(詳細は「使い方」をご覧ください。)
 ※ メールアドレスを公開しないでメールを受け取るには[アドレス非公開]をチェックします。

キーワード  曖昧検索