※この内容は、日本語オンラインの掲示板【20 言葉の教え方の勉強部屋】の質問と連動しています。まず下のアドレスより元記事をご参照ください。
→http://nihongo-online.jp/bbs/discuss.cgi?id=20&mode=part&page=0&num=1445&sort=1&back=tree
-----
さて、質問の後半部分ですが、参考書などがその用法としてあげている典型的なものを考えると、「否定文」がよく使われることは確かですが、必ずしも「否定文」でなければならないというわけではありません。【否定的な内容】と【否定文】を分けて考えるのがいいと思います。
第一に
★「高くない」を「安い」と言い換えができるように
「〜ものの Aない」を「〜ものの B」と【肯定文】で言うこともあると思います。
例)値段は高いものの、質は悪い(=良くない)
第二に
★元々続く否定文が省略されて、それを受けて別の表現で【肯定文】が来ることもあります。
「〜ものの Aない」を「〜ものの(Aない。)C」
例)大学に入ったものの、毎日(勉強しないで)ぶらぶらしている。
第三に
★典型的な用法からはずれると、肯定的な内容が続くこともあるので、当然肯定文が来ることがあります。
この例を考える前に、典型的な用法とそうでない用法を簡単にまとめておきます。
※手元にある参考書を三つ比べてみましたが、3)が一番丁寧に書かれていて、用例も豊富で、今回の疑問を解消するにはいいかと思います。注)だから1)2)はだめというわけではありません。どちらもとても役に立つ参考書です。
1)『日本語文型辞典』くろしお出版 :典型的な用法のみ
2)『どんな時どう使う日本語表現文型500』アルク :典型的な用法のみ
3)『くらべてわかる 日本語表現文型ノート』大阪YMCA日本語教師会
3)では用法を三つに分けて解説し、用例を載せていますが、一部引用しながら、違いとつながりがわかるようにoyanagiの解釈を交えてまとめてみます。(※できるだけ原典をご覧下さい。)
「AもののB」
■用法1(=典型的な用法)
Aには肯定的な(プラス思考の)内容が来て、そのような事態が成立しているにもかかわらずそれにつながる(=予想される、期待される)事態(B)が来ない。
解説:この場合は上の意味からわかるように、Bには【否定的】な内容が来ます。
否定的な内容が来るので、たいていはそれが【否定形】で表されます。
■用法2
Aには否定的な(マイナス思考の)内容が来て、それにもかかわらず、それに反する事態(B)が一部に認められる。
解説:この場合は、用法1とAの内容が反対で、当然結果のBも肯定的な内容が来ます。
例は同書から引用しておきます。例文番号は実際は丸数字です。4〜6は省略
-----(引用開始)-----
1 雪男の存在は確認されなかったものの、足跡らしきものは発見できた。
2 彼は留学こそしていないものの、外国語を流暢に操る。
3 バブル時代に立てられたあのビルは、依然買い手はつかないものの、2、3件の引き合いはあるらしい。
------(引用終了)----
■用法3
<Aから予想される/期待される結果としてのB>という関係が希薄になって、単に良い点と悪い点を対比させる。
解説:この場合は、AとBには否定的、肯定的な内容、どちらも来ます。
※この用法3の解説については、同書では非常に的確な説明が書かれているので、引用しておきます。
-----(引用開始)-----
AとBを入れ替えても文意は同じであるが、話し手の移意向はB部分にある
------(引用終了)----
例も同書から引用しておきます。例文番号は実際は丸数字です。4、5は省略
-----(引用開始)-----
1 この部屋は日当たりはいいものの、駅からは遠い。
2 彼女は子供の頃、数学の成績は悪かったものの、国語はよかった。
3 申し込み者の内訳は、男性は昨年に比べて多かったものの、女性は少なかった。
------(引用終了)----
この用法の分類を見てわかるように、典型的な用法では、否定的な内容が来るので、否定文が多いと言えますが、その場合でも、第1、第2にあげたように、否定形でなければならないというわけではありません。
そして、それ以外の用法では、その用法からして、Bには肯定的な内容が来ることは全く不自然なことではないと言えます。 |
|