「〜に弱い」と「〜が弱い」 [コメントする]

「〜に弱い」と「〜が弱い」


過去ログ(管理人) さんのコメント
 (2003/10/14 15:00:57)

※これは過去ログを整理したものです。(管理人)

[520] 〜に弱い?〜が弱い? 投稿者:AM 投稿日:02/12/04(Wed) 23:41

「〜に弱い」と助詞の「に」をつけると思いますが、「数学に弱い」といいますか?「数学が弱い」と言わないでしょうか?どういう意味の違いがあって使い分けをするのでしょうか?
教えていただけるとありがたいのですが。よろしくお願いいたします。
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[536] 「が」と「に」のイメージ 投稿者:oyanagi 投稿日:02/12/18(Wed) 22:56

AMさん、こんにちは。管理人のOyanagiです。実は一度投稿の原稿を書いたんですが、ちょっと考え直すところがあって、のびのびになってしまいました。その間、だれかからレスがあればいいなと期待していたのですが、だれもないようなので、あまりまとまっていませんが、考えたことを書いておきます。
> 「〜に弱い」と助詞の「に」をつけると思いますが、「数学に弱い」といいますか?「数学が弱い」と言わないでしょうか?どういう意味の違いがあって使い分けをするのでしょうか?
> 教えていただけるとありがたいのですが。よろしくお願いいたします。
「弱い」「強い」という形容詞は人について述べる場合に、Mさんが書かれたように「〜に」で対象を示すことができますが、「〜が」で対象をしますこともできますよね。googleなどで検索してみると、「数学に弱い」という使用例も「数学が弱い」もほぼ同じ程度にヒットします。ですから、「数学が弱い」とも言うのだと思いますし、自分もそう使うときがあります。そこで、その使い分けがどうなっているのかということですね。
一般的に、本来は○○なんだけど、××も使うという場合には、使われ方に段階があって、典型的な使われ方とそうではない使われ方があると考えると納得が行くことが多いです。そこで、「〜は〜が形容詞」の典型的なものと、「〜は〜に形容詞」の典型的なものを考えて、なぜ「弱い」(や「強い」)がどちにも使えるのかを考えてみました。
※これは答えではなく「考え方」なので、これを参考にご自身でも考えてみて下さい。
■今回参考にした図書とその説明
格助詞の用法がまとめてあるものとしては、(もしAMさんが日本語教師であるなら)『日本語文法セルフマスターシリーズ3 格助詞』(くろしお出版)がお勧めです。用例が豊富で、資料としてまとめられているページも役に立ちます。
その参考書では、
能力、所有、必要、感情の意味を表す形容詞は、対象をガで表す、として、「上手だ」「下手だ」「苦手だ」「うまい」などが挙げられています。→p.12
それを踏まえて、対象をニで表す形容詞も多い、として、その一つの用法として、能力を表すもの(例えば、「強い」「詳しい」「うとい」)が挙げられています。→p.16
そして、そのような用法の形容詞として、資料(p.24)では次の形容詞が挙げられています。
「強い」「弱い」「もろい」「巧みだ」「堪能だ」「不案内だ」「明るい」「暗い」「詳しい」「うとい」
これを見る限りでは「弱い」は「〜に弱い」と使うのだということになりますね。ところが「数学が弱い」という表現も実際には使われています。
■使われ方の段階を調べてみる
上の参考書で挙げられている形容詞を分類してみましょう。(「/」は反対語の区切り線です)
(1)「〜は〜が形容詞」:対象に「が」しか取らない形容詞
   上手だ、(得意だ、)うまい/下手だ、苦手だ
(2)「〜は〜が/に形容詞」:対象に「が」も「に」も取る形容詞
   強い、巧みだ、堪能だ/弱い
(3)「〜は〜に形容詞」:通常は対象に「に」を取る形容詞
   (ア)明るい、詳しい/くらい、うとい、不案内だ
   (イ)*強い/*弱い、もろい
さて、このように(1)〜(3)に分けてみると、あることに気がつきます。
(1)は「できる」という動詞と関係が深い形容詞ですね。そして、「できる」という動詞も対象は「が」で表します。
(3)の(ア)はある対象について知識がどの程度あるかという点について説明する形容詞です。
(3)の(イ)は外から自身に向かってくるものに対してどうなのかを説明する形容詞です。*「強い」*「弱い」は(2)とは違う意味で使われます。
そうすると、次のように考えることができます。
★対象を「が」で表すものの典型は「能力」である(それは「〜ができる」の延長です。)
つまり、その『能力がその人のウチにある」という捉え方です。
(※視点がその人のみに当てられているということです)
イメージ図を書くと下のように、全体として「〜は」で取り立てて、
その部分を「〜が」で焦点あてて叙述するというわけですね。
  
|ーー【〜は】ー|
|       |
| ●ができる |
|       |
|ーーーーーーー|
★対象を「に」で表すものの典型は、
(ア)あるもの<に>対する知識であり、
(イ)あるもの<に>対抗する力です。
つまり、その(能力自体はウチにあるとしても)
『対象がソトにある』という捉え方です。
  【〜は】
   ○
   |→→に●形容詞
   |
■(2)の位置づけ
そうすると、「弱い」や「強い」は「できる」の延長として能力で捉えると、その対象を「〜が」で示し、ソトの対象に対して発揮する力と捉えると、その対象を「〜に」で示すということになります。
「弱い」を例にとって(2)の位置づけを考えてみましょう。
(3)の「*弱い」からはじめたほうが分かりやすいです。
・「山田さんは酒に弱い」という文章は二つの意味があります。
一つは(3)の意味で「酒の誘惑に弱い」です。この意味で使う場合には「〜が」とは言えません。
もう一つは「酒があまり飲めない」という意味です。
この意味で「〜に」と使うのは、おそらく私たちの捉え方が先のイメージ図の「→→に●」のように、酒が(ソトにある)飲み物という対象になっていて、それが自身に向かってくる(=飲む)ときに対抗する力というイメージでなのだと思います。
しかし、同じ意味で「酒が弱い人」(酒の弱い人)という言い方があります。このように「〜が弱い」と使うときの捉え方はイメージ図のように、その人にウチにある能力とみていると思うのですが、いかがでしょう。
■「数学が/に弱い」の場合は
最後に問題となった表現ですが、「数学」という対象が来た場合に、私たちは上のような捉え方の違いがあるのかないのか。私はあると思うのですが、具体的に事例をあげて説明することはできません。これは課題ですね。(^^;
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[542] Re: 「が」と「に」のイメージ 投稿者:AM 投稿日:02/12/21(Sat) 00:51

詳しく調べていただきありがとうございます。
> 「弱い」「強い」という形容詞は人について述べる場合に、Mさんが書かれたように「〜に」で対象を示すことができますが、「〜が」で対象をしますこともできますよね。googleなどで検索してみると、「数学に弱い」という使用例も「数学が弱い」もほぼ同じ程度にヒットします。ですから、「数学が弱い」とも言うのだと思いますし、自分もそう使うときがあります。
そうですか。私は個人的に「数学に弱い」とは使わないので、使われていないかと思っていました。ある日本語検定3級のテキストに「数学に弱い」という文があり、学生に「数学が弱い」じゃないかと聞かれたので私は「が」を使うと説明してしまったんですが、そのテキストは間違いではないと訂正しなければいけませんね。
> (3)の(ア)はある対象について知識がどの程度あるかという点について説明する形容詞です。
> (3)の(イ)は外から自身に向かってくるものに対してどうなのかを説明する形容詞です。*「強い」*「弱い」は(2)とは違う意味で使われます。
「に」を使うと確かに外からこちらに向かってくるという感じがあったんです。例えば、「私は女性に弱い」といいますよね。女性がこちらに向かってくる感じで。しかし、「私は女性が弱い」とはいいませんよね?しかし、「私は数学が弱い」としか思わなかった私ですが、「私は理数系に/が弱い」とは言うように感じたのでその説明は学生にはしなかったんです・・・。
> 最後に問題となった表現ですが、「数学」という対象が来た場合に、私たちは上のような捉え方の違いがあるのかないのか。私はあると思うのですが、具体的に事例をあげて説明することはできません。これは課題ですね。(^^;
「理数系」のことがあるので私もその対象については少し考えないといけないと思っています。難しいですね・・・。
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[548] 「数学」と「理数系」 投稿者:oyanagi 投稿日:02/12/26(Thu) 22:01

AMさんが出された「理数系」という単語と「数学」という単語を比べると、「に」を取りやすいかどうか、その程度の違いを感じますね。
他の例だと、「数字」と「数学」がありますね。
「私は数字が弱い」というよりも「数字に弱い」というほうが自然でしょう。
ここから考えると、「数字に弱い」は「数字を使って計算すること」が弱い、という意味ですから、やはり『その人の<うち>の能力』という見方より、『何か<そと>の課題』に対して力を発揮するという見方が優先されるのではないでしょうか。
それは見方を変えれば、『学問』として抽象化された言葉(数学、英語など)は『その人の<うち>の能力』という見方がされやすく、「○○は数学が強い」使うことができるけれども、『具体的な対象』として把握されるものは<そと>に向けられる対象という見方になりやすく、「○○は数字に弱い」となるのではないかと思います。
これを「理数系」と「数学」に当てはめてみると、「理数系」というのはどちらかというと『分野』をあらわすために、<そと>の対象という見方ができるために、「〜に弱い」もごく自然に言えるし、もちろん、『学問』というしての体系としてみれば、「数学」と同じように「〜が弱い」とも言えると考えてみました。いかがでしょうか。
もっと、似ている単語同士で、「〜に」が自然、「〜が」が自然になるようなものを集めると見えてくるかもしれませんね。
まだまだ、課題の解決には遠そうです。
また何か気が付いたことがあったら、投稿してください。
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